Yahoo!ニュース

「ワクチンを打たねば試合に出さない」NBAルール

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 何名かのNBA選手たちは、ワクチン接種を頑なに拒んでいる。しかし、打たねばコート、ロッカールーム、練習場、筋トレルーム等、チームのあらゆる施設に入れない。当然ながら、遠征先でも同じである。公式戦にももちろん出場できない。

 NBAが定めたルールなのだから、世界最高峰のリーグでプレーしたいのであれば、従うのは当然だ。

 メディアもワクチンを打ったかどうかの証明を提出しなければ、現場に出られない。

 拒否し続ける選手は、今シーズンどうするのだろう? と思って見詰めていたが、まずはゴールデンステイト・ウォリアーズのアンドリュー・ウィギンズがNBAの決定を受け入れた。 

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2014年にドラフト全体1位でNBA入りしたウィギンズは、カナダ人として2人目の"ドライチ"である。クリーブランド・キャバリアーズに入団するも、シーズン開幕前にミネソタ・ティンバーウルブズにトレードされ、デビュー。1年目から82試合に出場して、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ティンバーウルブズでの6シーズン目の2020年1月18日に18得点、11アシスト、10リバウンドで、キャリア初となるトリプル・ダブルを達成。その数週間後にトレードされ、ウォリアーズの一員となった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 年俸3157万9390ドルと、ウォリアーズ内でステフィン・カリー、クレイ・トンプソンに次ぐ評価を受ける26歳は、苦笑いを浮かべながら語った。

 「ワクチンを打つか、NBAでプレーしないか、選択肢は2つしか無かった。自分の体を自分で気遣えないんだな。今日、この社会で働きたいのなら、他者が築いたルールに従わねばならない。そういう仕組みになっている。俺が信念に基づいて戦うよりも、ずっと大きな権力を持つ人が沢山いるよ」

 ウィギンズはジョンソン&ジョンソンのワクチンを接種し、10月4日に催されたプレ・シーズンマッチのポートランド・トレイルブレイザーズ戦で16分プレー。13得点2アシストをマーク。試合も121-107でウォリアーズが勝利した。6日のデンバー・ナゲッツ戦でも16分間コートに立ち、4得点2アシスト3リバウンドを記録。118-116で白星を飾った。9日のロスアンジェルス・レイカーズ戦は、左膝に違和感を覚えて欠場したが、今季の開幕に向けコンディションを整えている。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 「ワクチンを接種した後に体調を崩した人々の話を聞いていたし、自分はアレルギー持ちだから嫌だったんだ。10年後、20年後の体への影響だって分からないじゃないか。最悪だと思っていたし、マジで怖かったよ。

 でも、俺自身も家族にも問題は無い。そう信じる。俺がこうしなきゃ、稼げないんだから。俺には2人の子がいるし、もっと子供がほしい。子供たちの未来の為にも仕事をしなくては。リスクのある賭けだった。まぁ、大丈夫なことを祈るしかないな」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 プレ・シーズンマッチを5試合こなし、ウォリアーズは21日にホームでロスアンジェルス・クリッパーズ戦を迎える。

 NBAは、ワクチン接種を拒んだことによる欠場選手への給与は払わないと通告している。拒否を続ける選手たちは、どう動くのか。そして今季のウィギンズ、ウォリアーズは何を見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事