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リターンマッチで勝利したWBAヘビー級3位と失格負けの同10位

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Frank Micelotta / FOX Sports

 WBCヘビー級タイトルマッチの前座に組まれた、WBA3位ロバート・ヘレニウスvs.同10位のアダム・カナッキのリターンマッチは、6ラウンド2分38秒で上位ランカーが勝者となった。

Photo:Frank Micelotta / FOX Sports
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 両者は2020年3月7日に「WBAヘビー級タイトル挑戦者決定戦」として対峙しており、ヘレニウス(37)はカナッキ(32)を4ラウンド1分8秒でKOした。ヘレニウスのプロモーターやマネージャーに力があれば、WBA最重量級タイトルを保持していたアンソニー・ジョシュアへの挑戦が実現していた可能性もある。

 が、フィンランドで生活するヘレニウスは、ポーランドの人気選手、カナッキとのリターンマッチを戦わねばならなかった。

Photo:Frank Micelotta / FOX Sports
Photo:Frank Micelotta / FOX Sports

 プヨプヨとした贅肉を揺らしながらも、愛嬌のある童顔で人気を博するカナッキは、20戦全勝15KOで1年7ヵ月前にヘレニウスと対戦。この時は、カナッキがWBA4位、ヘレニウスは同7位であった。

 負け知らずだったカナッキは、下位ランカーに対し、自信を持っていたようだが、いいところなく敗れた。

Photo:Frank Micelotta / FOX Sports
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 今回は更に差が開いたように見えた。身長で9センチ、リーチで8センチのアドバンテージがあるヘレニウスは、オープニングから自身の距離を保つ。そして得意の右ストレートを何発もヒットし、明確にペースを握る。

 劣勢に立たされたカナッキはローブローでしか反撃の糸口を見出せず、再三急所をヒットして、第6ラウンドに失格負けを告げられる。

Photo:Frank Micelotta / FOX Sports
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 31勝(20KO)3敗となったヘレニウスは、試合後に言った。

 「俺が勝つことは分かっていた。ヤツが何か持っているか? 喧嘩屋なんだろうが、俺だって20年も喧嘩ファイトをやってきた。ローブローやラビットパンチを繰り返したが、俺にダメージを負わせることはできないよ。

 まぁ、いいんじゃないの。前回と同じような感じの終わり方だよな。俺はいいパンチを沢山浴びせたけれど、ヤツは何もできなかった。

 とりあえず4週間離れていた家族の元に帰りたい。で、次を考える」

Photo:Frank Micelotta / FOX Sports
Photo:Frank Micelotta / FOX Sports

 20勝(15KO)2敗となったカナッキの姿を見ながら思い起こすのは、同じポーランド人ヘビー級世界ランカーだったアンドリュー・ゴロタだ。

 1996年7月11日、ゴロタは28戦全勝25KOと上り調子だった折に、元統一ヘビー級チャンピオンのリディック・ボウと対戦し、ローブローによる失格負けを喰らった。ゴロタの愚行に怒り狂ったボウのセコンドやファンが暴徒と化し、マジソン・スクエア・ガーデンは悪夢の夜となる。

 懲りないゴロタは5カ月後の再戦でも、アトランティックシティー・ボードウォーク・コンベンションセンターで同じように敗者となった。

ボウの急所を狙って失格負けしたゴロタ
ボウの急所を狙って失格負けしたゴロタ写真:ロイター/アフロ

 若きカナッキのアイドルは、ゴロタだったそうだ。そこまで真似なくてもいいのに……。前回より多少腹が締まっていたカナッキだが、世界戦線から大きく脱落した。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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