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14戦全勝12KOのWBA暫定ライト級王者

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 荒々しいファイトだった。WBA暫定ライト級チャンピオンのロナルド・ロメロは、挑戦者でありながらリミットを5.2パウンドもオーバーしたスウェーデン人ファイター、アンソニー・イギットに対し、怒りを感じているかのようだった。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 序盤はサウスポーであるイギットのポジショニングを持て余しながらも、一発一発、力を込めたパンチを振るっていく。5パウンドといえば、1階級上のクラスであるが、体重差は感じさせず「ウエイトすら満足に作れないお前に、ボクシングの怖さを教えてやる」とでも言いたげなプレッシャーだ。 

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 サウスポーとの距離を徐々に掴んでいったロメロは、5回にホールディングしながらパンチを見舞ったことで減点を告げられる。その直後に左フックからの右フックでダウンを奪った。

 ロメロは言った。

 「ヤツは深刻なダメージを受けていたが、ゴングに救われたな。次のラウンドはクリンチで凌いでいたが、脅え切っていた。もっと痛めてやろうと思ったよ。フィニッシュは時間の問題だった」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 結局、第7ラウンドに2度倒し、ロメロは12度目のノックアウトを飾った。公式タイムは同ラウンド1分54秒。

 試合後、敗者も語った。

 「ロメロのようなタフな相手とやれて良かった。彼がKOを狙っていたのは最初から分かった。心から彼を尊敬する。かれもまた、自分に敬意を示してくれた。もう、戦うことは無いかな……」

 確かに契約したウエイトをオーバーしたうえで、この戦いぶりでは限界を感じるのも当然だ。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 ロメロは言葉を続けた。

 「ヤツのパンチは見えたね。ヨーロッパの選手って、動きがぎこちないよな。かなりダメージを植え付けてやったけれど、俺ももっとコンビネーションを打たないと。実はこの試合に向けたキャンプの序盤で、両足と右の拳を故障してしまったんだ。10日ほど前に交通事故に遭ってさ……。痛みを感じながらのファイトだったんだよ。

 もう4年もライト級で戦っているし、ナチュラルウエイトであるスーパーライトに転向しようと思う。その時が来たようだね」

 14戦全勝12KOであるロメロだが、上を狙うには更なる技術の向上が必要だ。WBAスーパーライト級王者、ジャーボンテイ・デービスとは、まだ大きな差がある。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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