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メインイベンターへの階段途中で分かれた明暗

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 フィラデルフィア出身のウエルター級ファイター、ジェイムス・マーティン(23)が自身9戦目で8戦全勝(5KO)のヴィト・ミエルニキ(18)と対戦した。

 同ファイトを放送したFOX TVにしてみれば、どちらの若手を売り出していくか品定めといったところか。この試合までは、18歳にして負け知らずのミエルニキにスポットライトを当てていた。

 身長もリーチも10センチ以上マーティンを上回るミエルニキだが、序盤から己の距離を保てない。ジャブの刺し合いでもアドバンテージを許し、ペースを奪われてしまう。

 マーティンは巧みなヘッドスリップを見せながら、間断なくパンチを放ち、リズムに乗っていく。懐に潜ってもカウンターを狙った。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 第2ラウンド、ハイペースで動くマーティンの左フックを浴びたミエルニキは鼻血を出す。

 止まらない鼻血を拭いながら、ミエルニキも前進する。得意の左ボディをアクセントにコンビネーションを放ち、4回には左アッパーを見舞うが、マーティンに深刻なダメージを与えることはかなわない。

 ミエルニキは、マーティンがこれまでの対戦相手と格段に違うレベルであることを思い知らされていった。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 7回には連打され、敗戦の色が濃くなる。最終の8ラウンドも反撃の糸口を探しあぐねた。

 結果は、79-73、77-75、76-76のスコアでマーティンが勝者となった。

 この日の白星を加えてマーティンの戦績は、7勝2敗。KO勝ちがないところを見ても、当初FOXは、ミエルニキの連勝を伸ばすために選ばれた男であるようにも思えた。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 試合後、マーティンは笑顔を見せながら語った。

 「この試合の為に死ぬほど練習した。キャンプで自分を追い込んだし、手数で圧倒してやろうと思っていた。かなり身長差のある相手だった筈だが、向かい合ったら同じくらいの背なんじゃないかと感じた。

 何度もミエルニキの映像を見たので、リングで驚きを覚えることは無かった。自分のジャブが効果的だったよね。休みなく打ったから」と笑顔を見せたマーティン。

 初黒星を喫したミエルニキは、「必ずリングに戻って来る」と一言だけ述べ、ホームタウンのニュージャージー州に帰って行った。

 18歳という年齢は、無限の可能性を秘めている筈だ。ミエルニキは、敗北から何を学んだか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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