Yahoo!ニュース

明日ゴング! フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.ローガン・ポール

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 かつてのパウンド・フォー・パウンド、フロイド・メイウェザー・ジュニア(44)と、人気YouTuber、ローガン・ポール(26)のエキシビションマッチが現地時間6日に行われる。

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions

 同イベントの3日前、両者はフロリダ州マイアミのサウスビーチに設けられた記者会見場に姿を現した。関係者は誰一人としてマスクをせず、人と人との距離も6フィート(180センチ)を保たず、ごった返す記者会見場となった。

  現在のNBAの現場や日本では考えられない、新型コロナウィルスが地球上を覆い尽くす前と変わらない光景であった。

Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions
Photo:Sean Michael Ham/Mayweather Promotions

 PPVでこのエキシビションを放送するSHOWTIMEのマイクを向けられたメイウェザーは話した。

 「エリートファイターとYouTubeファイターが戦うなんて、楽しみだね。不安要素は何も無い。俺は25年プロとしてリングに上がり、トップにいた男なんだから。

 ヤツが己を信じ、自信満々であることが喜ばしい。俺は過去の対戦相手50人を研究したが、ヤツの戦いぶりについては知らない。向こうの方がデカいが、問題じゃないよ。スキルがモノを言うからね。

 俺は既にファイターとしては引退した。でも、エンターテイメントとしてリングに上がり、カネを稼ぎ続けるつもりだ。今回も、いいショーになるだろう。このエキシビションを成立させた関係者も俺も、それを望んでいる」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 一方、ローガン・ポールもこの一戦に向けて言った。

 「フロイド・メイウェザー・ジュニアとリングで戦えるなんて、夢のようだ。当初はジョークだったんだよ。まさか実現するなんて思ってもみなかった。でも、本当に試合が行われるんだ。フロイドはもう昔の彼じゃない。年を取っているし、体も痛めてるんじゃないか。

 今、俺はエネルギーに満ち溢れているし、自分が強い、速い、シャープな動きが出来るって自負がある。何の不満も無いよ。コンディションは最高。8ラウンドの戦いは未経験だが、それに対応すべくトレーニングして来た。

 俺がボクシングを選んだんじゃない。ボクシングが俺を選択したんだ。だから、挑戦するんだよ。自分にとってボクシングは、MMAより簡単だね。MMAは難しい。俺は膝に痛みがある。ちょっと年も食ってきた。でも、俺のボディアッパーの破壊力は抜群だぜ。武器になっているよ。

 メイウェザーをKOしなければならないと思っている。誰かが彼を倒し、引導を渡すべきなんだ。俺にとっては人生最大の戦いって訳じゃない。ヤツにとってはそうだろうがな」

前日計量では、メイウェザーが155パウンド、ポールが189.5パウンド
前日計量では、メイウェザーが155パウンド、ポールが189.5パウンド写真:REX/アフロ

 ポールがリングで倒されるのは目に見えているが、彼の狙いは自身のYouTubeサイトの視聴者、及び登録者を増やすことである。問題なく達成しそうだ。メイウェザーも、日本のリングに上がった時のように、相手のダメージを最小限にして早目にイベントを終わらせるであろう。

密閉、密集、密接ばかりか、マスクをしている者もいない記者会見場
密閉、密集、密接ばかりか、マスクをしている者もいない記者会見場写真:REX/アフロ

 東京五輪を控えた日本が新型コロナウィルスの感染者数に神経を尖らせるなか、メイウェザーとポールの記者会見場にマスク姿の人間がいないことが私には驚きだった。

 『ニューヨークタイムズ』紙が6月4日に発表した数字では、フロリダ州で新型コロナウィルスに感染した人の数は、この2週間で43パーセント減。ワクチンを接種した人は同州民の39パーセントとなっている。だからこそ、こうしたイベントが打てるのだ。

 ワクチンの予約がとれないことが深刻な問題となっている昨今、メイウェザーのエキシビションは、日本政府にも何かを突き付けたかのように見える。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事