トレーナーとしても光る、かつてのパウンド・フォー・パウンド
現地時間4月18日に行われた、前WBCスーパーウエルター級王者のトニー・ハリソンvs.ブライアント・ペレーラ戦はドローに終わった。
両者は12ラウンド、フルに打ち合い、一人のジャッジが116-112でハリソンを支持、別のジャッジは117-111でペレーラの勝利を唱え、残す一人は114-114と採点した。
結果は覆らないが、元王者は無名のサウスポーに手を焼き、世界タイトル獲得時とは比較にならないほどの衰えを見せた。その反面、ペレーラは自身の株を上げた。
WBCスーパーウエルター級タイトルを失ってから16ヵ月のブランクを作り、この日、自身の戦績を28勝(21KO)3敗1分けとしたハリソンは、第2ラウンドに右ストレートをぶち込んでペレーラの左目下を腫らした。
17勝(14KO)3敗1分けとなったペレーラは、翌3回に正確なコンビネーションを見舞ってハリソンの動きを止めた。
初めての大舞台となったペレーラは、千載一遇のチャンスに懸けた。5ラウンドまでは互角の展開であったが、中盤以降はペレーラが手数で上回り、戦うんだ!というハートを見せる。
12回を終え、ペレーラの放ったパンチは692、ハリソンが453。239の差をリングジェネラルシップとしたジャッジは、117-111と採点した。ペレーラは、4階級を制し、かつてパウンド・フォー・パウンドの名をほしいままにしたロイ・ジョーンズ・ジュニアの教えを守り、ジャブを間断なく繰り出し、ハリソンの一発を浴びないように、打ち終わった後のポジションを意識していた。
一方のハリソンはサウスポー対策が万全ではなく、得意とする右で、カウンターの一発を狙い過ぎた。とはいえ、パンチの命中率は30.5%と、21.7%のペレーラを上回った。その的確さを評価したジャッジは、116-112とつけた。
試合後、元王者は話した。
「リングに戻って来られて良かったよ。楽しかった。ペレーラは俺が思っていた以上に技巧派だった。彼は、キャリア最多と呼べる数のパンチを出したよね。何発か食らった。16ヵ月のブランクは問題ない。頭もしっかりしているし、足も動いた。まだまだ戦えるコンディションを作れるよ。
ジャッジは自分の仕事をしたんだ。俺が結果に失望することは無い。ただ、自分自身に何が足りなかったのか、どうすべきなのかを問い掛ける必要がある。ペレーラの方が優勢というラウンドがあったことは間違いないから、しっかりと反省しないとね」
ペレーラは言った。
「自分のスタミナは、全ての試合において武器となっています。ハリソンはいいジャブを持っていましたし、距離感も巧みでした。ああいう選手とやるときは、賢さが求められますね。増量し、スーパーウエルターで初の試合でしたが、このクラスにおいて、自分もトップファイターの仲間入りを果たせたでしょう。
僕は、今日の試合は勝ったと思います。特に前半はハリソンにダメージを与え、リードしたように感じています。彼もベテランらしいパフォーマンスを見せましたが……」
ペレーラの次の言葉が印象的だった。
「とは言え、ロイ・ジョーンズ・ジュニアと組んで初めての試合で、充分な手応えを感じました。彼は僕をもっともっと伸ばしてくれるトレーナーです」
無名の徒であったペレーラを変貌させたロイ・ジョーンズ・ジュニア。指導者としての手腕にも非凡なモノがあるようだ。ペレーラの次戦も、トレーナーであるジョーンズの働きぶりにも期待できそうだ。