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NBAオールスター4日前に行われた西軍ポイントガード対決

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 試合終了14秒前、ポートランド・トレイルブレイザーズのポイントガード、デイミアン・リラード(30)が後方にジャンプしながら放った3ポイントシュートが、リングに吸い込まれていく。

 この1本が試合を決め、ブレイザーズは108-106でゴールデンステイト・ウォーリアーズを下した。

いつもの鋭さはなかったが、リラードは試合を決める働きを見せた
いつもの鋭さはなかったが、リラードは試合を決める働きを見せた写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 現地時間3月3日、19勝14敗で西地区6位のブレイザーズと、19勝16敗で8位のウォーリアーズが相まみえた。同地区のライバルは、今年の頭にゴールデンステイトのホームで2連戦して1勝1敗。

 2021年の元旦は、ブレイザーズが123-98で先手を取ったが、1月3日に行われたゲームではウォーリアーズのエース、ステフィン・カリーが自身のキャリアハイとなる62得点をマークし、137-122で快勝した。

2021年1月3日のゲームで62得点を挙げたカリー
2021年1月3日のゲームで62得点を挙げたカリー写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 今更述べるまでもないが、カリーは2015年、2017年、2018年とNBAチャンピオンの座に就き、2015年、2016年は連続でMVPを受賞している。

 昨シーズンの10月31日、カリーは左人差し指の第二中手骨を骨折。その後、コロナ禍に見舞われ、シーズンを棒に振ることとなってしまう。

 ケガが癒えた今季は新年早々にキャリアハイ得点を叩き出し、好調のようだが、チームはなかなかエンジンがかからない。3月3日のゲームは、ブレイザーズのホームで今季の3度目の対戦、そして共に20勝目をかけた一戦となった。

 7日のオールスターに西軍の先発として出場するカリーと、同チームで控えに回されたリラードによるポイントガード対決は、否が応でも注目を集めた。2020-2021レギュラーシーズンでの対戦は、この日が最後でもあった。

2021年元旦、マッチアップする両エース。この日は123-98でブレイザーズが勝利した
2021年元旦、マッチアップする両エース。この日は123-98でブレイザーズが勝利した写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 立ち上がりはウォーリアーズがペースを握った。TipOffから3分36秒、ブレイザーズは8本ものシュートを外し続ける。スコアは0-10。リラードもけっして本調子ではなかった。

 1Q終了時には28-29で1点差に追い上げるが、カリーの16得点に対し、リラードは7。9本のシュート中6本を決めたカリーと、4本中1本(3ポイント)ながら、フリースローを4分の4としたリラードの仕事ぶりは対照的だった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2Qの両エースは互いに5分19秒の出場。カリーは6本中3本のシュートを、リラードは2本中1を決める。スコアは55-56の1点差でウォーリアーズがリード。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 3Qは共にフルで出場し、それぞれが6本ずつシュートを放って得点は1回きり。3ポイントに関してはカリーが3本、リラードが4本外した。

 82-80とブレイザーズが逆転して迎えた最終Qも、二人のポイントガードは揃って6分58秒プレーし、7本のシュートを試みたカリーが2つの3ポイントを含む3本の得点。リラードは、5本のシュートうち2つの3ポイントを含む3本を成功させた。

 結局、両者はトータルの出場時間もまったく同じで36分17秒だった。カリーは、28本中13のシュートを決め、35得点。3ポイント成功は14分の5。アシスト5。リバウンド7。

 リラードは17本のシュートのうち6本を決め、22得点、6アシスト、5リバウンド。3ポイントは10分の3の成功であった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 チームとして比較すると、ウォーリアーズのフィールドゴール成功率は97分の41で42.3%。ブレイザーズは86分の36で41.9%。3ポイントは勝者が49分の14。惜敗したウォーリアーズが42分の15であった。

 数字が示すように、リラードは本来の彼とは程遠いパフォーマンスに終わった。それでも、重要な仕事をした。長いシーズンを戦うには、どうしても波があり、耐えるゲームがある。

 試合後、ブレイザーズのテリー・ストッツ監督は言った。

 「デイミアンは挫けない男です。今夜の彼は、なかなかシュートが決まらなかった。それは間違いありません。でも、とにかく闘志を忘れず、最後の最後までゲームの中心にいるのです」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 カリーとリラードの差は、NBAでのVか、あるいはMVPか、オールスターのスタメンか、ゴール総数か。今夜の勝利は、追う者の飢えを見た。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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