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ドローに終わったWBCスーパーミドル級挑戦者決定戦

林壮一ノンフィクションライター
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 「WBCスーパーミドル級タイトル挑戦者決定戦」として、元同タイトル保持者のアンソニー・ディレル(36)とカイローン・デイビス(26)が、現地時間2月27日にLAで対戦した。

 結果はドローに終わった。3名のジャッジは115-113でディレル、同じスコアでデイビスの勝ち、そして114-114と、それぞれが三様の意見を述べた。

ディレルは2度王座に就いたが、防衛は出来ていない Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
ディレルは2度王座に就いたが、防衛は出来ていない Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 デイビスは本来ミドル級の選手だが、今回のファイトのために増量。階級を上げて初のファイトとなった。

 ディレルは試合前、「お前は小さく弱い。俺のレベルじゃない」とさかんに扱き下ろしていたが、試合はまったくの五分。むしろ元王者に相応しい実力を見せられなかったのは、ディレルであった。

デイビスは本来のクラスであるミドル級でチャンスを掴むか Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
デイビスは本来のクラスであるミドル級でチャンスを掴むか Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 とはいえ、デイビスがディレルを圧倒的に凌駕していたか、といえばそうでもない。ドローという結果に納得である。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 試合後、自身の戦績を33勝(24 KO)2敗2分けとしたディレルは語った。

 「俺が勝ったよ。試合を作り、明確にパンチを当てていたのは俺だ。ヤツはグローブを殴っていただけだ。ジャッジを尊敬しているし、彼らの採点は変えられないが、ジャブも有効的に当たっていたと思うんだが…まぁ、色んな見方があるから、こういうことが起こるのだろう」

 この試合を目にしてハッキリと言えるのは、ディレルがWBC同級王者のサウル・"カネロ"・アルバレスからベルトを奪って王座に返り咲くのは難しいということだ。リンパ腺を蝕んだ癌を克服し、交通事故で左足の膝から下に重傷を負いながらも、リング復帰を果たした姿には拍手を送る。が、峠を越えた感は否めない。

 「タイトルマッチを希望する。それ以外の試合は眼中にない。それが俺のプランだ。ベルトを奪取する自信はある。カネロかカレブ・プラント(IBFスーパーミドル級王者)とやりたい」

 なるディレルの発言も空しく響いた。

Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo: Sean Michael Ham/TGB Promotions

 一方、15勝(6KO)2敗1分けになったデイビスはステップアップを感じたようだ。

 「12ラウンドを戦ったのも初めてですし、キャリア最大の試合でした。116-112で自分が勝ったと思いましたよ。敵陣営は、ディレルが僕をKOすると予想していたようですが、そうはならなかった。引き分けは負けと同じだから、残念ですがね」

 10歳の歳の差を考えれば、得た物はデイビスの方が大きい。両者はどんなリング生活を進むであろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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