Yahoo!ニュース

元世界ヘビー級チャンピオンが予想する「タイソンvs.ホリフィールドIII」

林壮一ノンフィクションライター
「俺は今、63歳だけど、エキシビションに出ようと思う」と話すティム  撮影:著者

 昨年11月28日に催された54歳の元統一ヘビー級王者、マイク・タイソンと、51歳の元パウンド・フォー・パウンド、ロイ・ジョーンズ・ジュニアのエキシビションマッチは注目を集めた。

 160万人以上が49.49ドルのPPVを購入し、その売り上げだけで8000万ドルを突破。タイソンは最低1000万ドル、ジョーンズは300万ドルを稼いだと報じられている。

提供:Joe Scarnici/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ジョージ・フォアマンは「二人とも真剣だったね。でも、タイソンは力を込めてパンチを放たなかった」と述べた。あくまでも、エキシビションであることをタイソンは理解していたのだ。

 しかし、ジョーンズ戦の前から、タイソンにラブコールを送るイベンダー・ホリフィールドは本気で戦うつもりのようだ。「タイソンvs.ホリフィールドIII」となれば、倍以上の人がPPVを購入するであろう。

 元WBC/WBAヘビー級チャンピオンのティム・ウィザスプーンも、11月末のエキシビションを目にした。

 「タイソンはパンチを本気で打っていなかった。ジョーンズにダメージを与えないように8ラウンドもたせたんだよ。ノックアウトしようと思ったら、出来た筈だ。

 ロイは最盛期に素晴らしいスピードとディフェンスを持っていたが、タイソンの重圧と一発の重さにクリンチを繰り返すしかなかった。お互いにボクシングを知り尽くした男だからね」

2020年11月28日、エキシビション後のタイソンとジョーンズ
2020年11月28日、エキシビション後のタイソンとジョーンズ提供:Joe Scarnici/USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 タイソンvs.ホリフィールドIIIについて、ティムは言った。

 「ホリフィールドは、クルーザー級から躰を造り上げて増量した選手。ヘビー級としては小さい。そんな彼が勝ち上がる策として頻繁に用いるのが、ヘッドバットや肘打ちだ。タイソンとの第2戦も、ホリフィールドのスタイルに激怒したタイソンが己を失って噛み付いてしまったね。

 ホリフィールドのスタイルが変わるとは思えない。ホリフィールドが真剣に向かっていったらタイソンにもスイッチが入って、激しい戦いとなる可能性が高い。エキシビションじゃなく、リアル・ファイトになってしまうだろう」

ーーーーそうなった場合の予想は?

 「タイソンはジョーンズ戦に向けて、かなりトレーニングを積んだ。連打が出来る。一方で最近の映像を見る限り、58歳のホリフィールドの動きはスローだ。タイソンが有利だと俺は見る。エキシビションならドロー。本気で戦ったら、タイソンのKO勝ちじゃないか」

1997年6月28日、タイソンは失格負けでホリフィールドに連敗した
1997年6月28日、タイソンは失格負けでホリフィールドに連敗した写真:ロイター/アフロ

 タイソンvs.ホリフィールドIIIは、今後実現に向けて話題となっていくだろう。そんななか、他のファイターによるエキシビションマッチも企画されている。

 ティムの下にもオファーが届いた。

 「まだ契約書にサインした訳じゃなく、口約束の段階だが、マイケル・スピンクスとやらないかって。金額は表示されていないけれど、せっかくの仕事だし、やろうと思っている」

スピンクスは、5日に永眠した兄、レオンも世界ヘビー級チャンピオン。レオンの息子であるコーリーも、ウエルター級、スーパーウエルター級で世界王者となったボクシング一家だ。
スピンクスは、5日に永眠した兄、レオンも世界ヘビー級チャンピオン。レオンの息子であるコーリーも、ウエルター級、スーパーウエルター級で世界王者となったボクシング一家だ。写真:Shutterstock/アフロ

 マイケル・スピンクスは、1976年モントリオール五輪の金メダリストとしてプロ入りし、WBA/WBC/IBF統一ライトヘビー級チャンピオンとなった後、ヘビー級に転向。IBFタイトルを獲得するが、1988年6月27日にWBA/WBC王者だったタイソンとの統一戦に敗れ、引退した。

 「エキシビションだし、俺は63歳。スピンクスは一つ上の64歳。彼はいい友人だし、マジで戦いはしないよ」

 ヘビー級がお寒い昨今、オールドタイマーのエキシビションをきっかけに、彼らの現役時代の映像を見るのはいい時間の使い方だ。YouTubeの普及はありがたい。かつての熱闘を味わえるのと同時に、ボクシングの歴史も学べる。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事