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米国3大ネットワークの一つであるCBSが選んだ「2020年Knockout of the Year」

林壮一ノンフィクションライター
ポベトキン(右)とホワイトの記者会見(写真:ロイター/アフロ)

 米国3大ネットワークの一つであり、伝統と実績を評価されているCBS。同局が昨年の「Knockout of the Year」を発表した。

 8月22日にWBC暫定ヘビー級タイトル戦として行われ、アレクサンデル・ポベトキンがディリアン・ホワイトを5回30秒で沈めた一戦が選ばれた。

 ポベトキンはアテネ五輪、スーパーヘビー級の金メダリストとしてプロに転向し、ドイツを舞台にキャリアを積んだ。

写真:Action Images/アフロ

 2011年8月27日、WBA正規タイトルを獲得。そして、26戦全勝のレコ―ドでWBAスーパー/IBF/WBO統一王者、ウラジミール・クリチコとの統一戦を行ったのが、2013年10月5日。

 ポベトキンは2ラウンドに1度、7ラウンドに3度のダウンを喫し、大差の判定負けを食らった。

写真:ロイター/アフロ

 2018年9月22日には、WBA/IBF/WBOタイトルを保持していたアンソニー・ジョシュアに挑戦するも7回KOに散る。

写真:ロイター/アフロ

 一方のホワイト(32)も、2015年12月12日にジョシュアに7ラウンドKOで敗れたが、復活し、2年もの間WBC指名挑戦者の座にいた。ポベトキンを踏み台とし、王座挑戦に弾みをつけたかった。

写真:ロイター/アフロ

 40歳の元WBA王者、ポベトキンは終わった選手と見られていた。4回に右ストレートからの左フック、そして顎への左アッパーを食らい、2度ダウンを喫した。

 が、続く第5ラウンド、ホワイトの右をダッキングで躱し、次の瞬間に強烈な左アッパーを顎にぶち込んでホワイトを失神させ、逆転KO勝ちを収めた。

 上り調子の若きチャンピオンの勝利を称えるのも、もちろんありだ。とはいえ、苦労人である大ベテランの逆転劇を、もう一度クローズアップしようというCBSのスタッフからは、確かなボクシング愛を感じる。

写真:ロイター/アフロ

 次点は、10月31日にWBAライト級正規&WBAスーパーフェザー級タイトルマッチでジャーボンテイ・デービスが、レオ・サンタ・クルスを第6ラウンドで下したファイトだった。

 賛否両論があるのは当然だが、私はポベトキンに光を当てたCBSに拍手をおくりたい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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