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アルゼンチン人コーチが語る「メキシコとの大きな差」

林壮一ノンフィクションライター
日本代表の前半の戦いぶりは良かった。しかし、後半メキシコが底力を見せた(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、0-2でメキシコに敗れたサムライブルーについて語った。

撮影:著者
撮影:著者

 メキシコ戦の前半は非常に良かったですね。原口元気のミドルシュート、鎌田大地が左サイドを突破したシーン、伊東純也も右サイドからグラウンダーのクロスと、ペースを握っていましたよ。両サイドからの攻撃は見応え十分でした。

 僕が一番注目していたのは原口です。よく走っていましたし、いいパスを出していました。体を張ったディフェンスも見せてくれました。

 遠藤航と柴崎岳のダブルボランチも、バランスを取っていましたね。

 でも、フィニッシュが雑でした。CFの鈴木武蔵に決定力があれば、ゴールを奪えていたでしょう。大迫勇也なら決めているんじゃないか、という局面が何度かありました。

 CFが大迫で、他の10名がそのままなら、今日の日本のベストイレブンと言っていいんじゃないかな。

 僕はこの試合を、メキシコのTV放送で目にしたのですが、「前半は日本にやられた。4~5点取られていてもおかしくない内容だった」とコメンテイターが話していました。そのくらい、日本代表は評価されたんです。

 でも、メキシコはきっちり後半に立て直しました。日本は前半のサッカーを続けたいのに、やらせてもらえなくなりました。

 言うまでもありませんが、最も大きな違いは決定力です。物凄く大きな差がありますよ。1点目の得点者であるラウール・ヒメネスは今回、出来が悪かった。その証拠に交代を告げられましたよね。そんななかでも、ワンチャンスをモノにします。それがFWなんですよ。

 2点目のゴールを挙げたイルビング・ロサーノは、現メキシコ代表のエースです。彼も僅かな隙を逃さない。やっぱり総合力で、日本はどうしてもメキシコに追いつけないんです。

 霧が濃くなって、やり難かったのは確かでしょう。ピッチもところどころで芝が剥げていて、予測のつかないボールの弾み方があったようです。日本の選手は、そういうのに慣れていませんよね。

 逆に中南米の選手は、悪条件の中でキャリアを重ねていますから、逆境に強いんです。加えて「日本ごときに負けられるか!」というプライドがありました。スイッチが入ったメキシコを凌駕するものが、日本代表には無いんですね。

 アジアでは勝てても、世界の強豪を相手にすると、やっぱりこういう結果になってしまいます。

 それから、忘れてはいけないのがメキシコ代表のヘラルド・ダニエル・マルティーノ監督です。

 彼はパラグアイ代表、FCバルセロナ、アルゼンチン代表と輝かしいキャリアを持ち、その実力は折り紙付きです。メキシコ人の監督も悪くはないけれど、上を目指すため、細かいパスを繋ぐサッカーの完成度を高める為に白羽の矢が立ったんです。

 アルゼンチン代表監督もギャラで揉めなければ、もっと長くやっていた人です。交代のカード、流れの変え方がやっぱり巧いな、と感じました。

 吉田麻也が「多くのことをメキシコから学べる」と発言しましたが、僕はマルティーノの指導法を、是非日本に真似てもらいたいと思いますね。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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