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衝撃的な1ラウンドKOを飾った22歳のライト級世界ランカー

林壮一ノンフィクションライター
Photo: Esther Lin/SHOWTIME

 圧巻のKO劇だった。

 ゴングと同時にメキシコシティー出身のイサック・クルス(22)がディエゴ・マグダレノに襲い掛かる。

 ジャブを外すとマグダレノをコーナーに追い込み、ボディーに的を絞った。一発一発のパンチが重い。強弱はつけず、全てがフルスイングだ。IBFライト級6位。<メキシコが生んだミニタイソン>なるキャッチコピーで呼ばれていたが、それも頷ける。

Photo: Esther Lin/SHOWTIME
Photo: Esther Lin/SHOWTIME

 まるで「お前ごときを料理するのに余分な時間は費やしていられない」とでも言いたげな戦いぶりで、20秒足らずで右フックを顔面にヒットしダウンを奪う。

 カウントエイト後に試合が再開されると、クルスは更にボディーブローでマグダレノの動きを止め、最後はアッパーを顎に2発叩き込んで試合を終わらせた。

 この間、僅か53秒。

Photo: Esther Lin/SHOWTIME
Photo: Esther Lin/SHOWTIME

 Compubox社のデータによれば、この日、クルスが放ったパンチは31。そのうちの20が強打である。そして、21発をヒットしていた。

 試合後、クルスは言った。

 「今夜、新しいタイソンがメキシコから生まれました。初回からKOを狙っていたんです。自分の本能として常に早目に試合を終わらせたいと思っています。

 今、直ぐにでも世界タイトルを獲る自信があります。この勝利は自分のPRになったでしょう。きっと自分の名を覚えてもらえた筈です。是非とも、テオフィモ・ロペス・ジュニアとやりたいですね」

 マグダレノはしばらく、起き上がれなかった。

 この選手、非常に面白い存在だ。目下、20(15KO)勝1敗1分け。ここ3試合をアメリカ合衆国のリングで戦っている。本格的に米国進出を果たすであろう。

 どのプロモーターが、いかに彼を売り出すのかに注目したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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