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世界ヘビー級チャンピオンも唸った井上尚弥の実力

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗 ドネア戦に続き世界のボクシング界に己を示した井上尚弥  

 1984年3月9日にWBCヘビー級タイトル、1986年1月17日に同級WBAタイトルを獲得したティム・ウィザスプーン(62)。

 彼は当時のボクシング界で傑出した存在だったが、ファイトマネーのピンハネに泣かされた。その後、プロモーターだったドン・キングと法廷で闘い、自身の奴隷契約を社会に訴えた男として知られる。※ご興味のある方は拙著『マイノリティーの拳』(光文社電子書籍)をご覧ください。

 そのウィザスプーンも、自宅で井上尚弥vs.ジェイソン・マロニー戦をTV観戦した。試合終了後、感想を聞いてみた。 

撮影:著者
撮影:著者

 ノニト・ドネア戦も見たけれど、ナオヤ・イノウエは素晴らしい選手だね! ジャブもストレートもフックもアッパーも申し分ないし、ディフェンスもいい。スピードもある。ガードも高くて固い。完成された選手だ。

 俺が注目したのは、カウンターの巧さ。誘っておいて打ってるでしょ。肩のフェイントも上手い。今日はジャーボンテイ・デービスvs.レオ・サンタ・クルス戦がPPVであったけど、勝者のデービスと戦えばいい! なんて一瞬思った。けど、ちょっと体重が違うな(笑)。でも、そのくらいインパクトのある選手だよ。

 アジア人の実力者というと、やっぱりマニー・パッキャオが挙がるね。お世辞抜きに、ナオヤ・イノウエはパッキャオを超えるポテンシャルを持っている。

 と言うのはさ、パッキャオの武器は、あのステップインとストレートだよね。連打も非の打ち所が無いけれど、爆発的なのはワンツーだろう。イノウエは、左右のパンチで相手を倒せる。攻撃に幅があるよ。そこに魅力を感じるな。

 アメリカに進出したからには、今後ビッグマッチが続く。もし、イノウエに俺がアドバイスするとすれば、2つだな。まずは、ジャブによりバリエーションを持つ点。左フックから入るのもいいんだが、彼ならジャブだけで相手を倒せるように思う。だから、もっともっとジャブに強弱、角度をつけていくこと。

 2つ目は相手のジャブを躱す際、パリングだけじゃないディフェンスも覚えもらいたい。ブロックして間髪を入れずに打つ。グローブでストップして打つとかね。

 世界のトップまで行くと、いかにジャブが大事かを実感するもんだ。

 まぁ、俺がどうこう言わなくてもイノウエはどんどん上に行く選手だ。アメリカで彼の試合が見られるのは楽しみだぜ。

 マジでパッキャオを超える存在になってほしい。期待しているよ!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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