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アルゼンチン人コーチが語る「コートジボワール戦の勝利に喜び過ぎず、課題を検証すべき」

林壮一ノンフィクションライター
試合終了間際に植田直通がヘディングでネットを揺らし、勝利した日本代表(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、1-0でコートジボワールに勝利した日本代表について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 植田直通は鹿島アントラーズでいい仕事をして代表にも選ばれていたものの、なかなか試合に出場する機会が無く、ずっと我慢していましたね。自分の力を証明したいと考えていた筈ですよ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20160804-00060626/

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180710-00088348/

 コートジボワール戦でも、ピッチに立ったのは後半の44分からで、悔しい思いをしていたでしょう。そんな植田の忍耐が、得点に結び付いた。ずっと押されていたゲームで、耐えて、粘って、最後に得点して勝利をもぎ取った点は良かったと思います。

 とは言え、日本代表の戦い方は悪かったですね。シュミット・ダニエル、吉田麻也、冨安健洋、室屋成、そしてボランチの遠藤航、柴崎岳ら守備はいいんです。コートジボワールの背番号10、 ジェルヴィーニョに得点させなかった。彼はドログバほどではないけれど、速いし、ドリブルも出来ます。そんな ジェルヴィーニョに遠藤が1対1で見せたディフェンスは素晴らしかった。

 アーセナルの ニコラ・ぺぺにも上手く対応していました。カメルーン戦に続いて、GK、DF、ボランチ等、守備の選手は間違いなく合格点です。

 しかしながら、日本代表は前の選手がチャンスを作れない。攻撃のアイデアがありませんね。

 期待の久保建英もドリブルしてシュートまで行きましたが、パスミスが目立ちました。決定的な仕事が出来ない。

 「日本のメッシ」なんて、メディアが騒ぎ過ぎです。世界一のサッカー選手であるメッシと、どうやって彼を比較するんですか? そんなレベルの選手ではないので、余計なプレッシャーをかけたら久保が可哀想です。今回の2試合を見れば、どう考えても世界レベルとは言えないでしょう。

 キックオフ前、カメラは久保ばかりを追っていましたが、普通にサッカーをさせてあげたらいいのに……。僕の国、アルゼンチンなら、並以下のプロ選手です。

 

 伊東純也が何度か右サイドを突破しましたね。日本にとって大変貴重な選手です。でも、もっとセンタリングの精度を上げないと。マンUで活躍するセンターバックのエリック・バイリーがドンと構えていたのですから、崩すのはまだまだ厳しいです。

 コロナでチーム練習が出来なかったなかで、コートジボワールに勝利したことは、自信に繋がるでしょう。だからこそ、”勝った””勝った”と喜ぶのではなく、この2試合をしっかり見直して、どうしたら得点に結び付くか。相手から怖がられる攻撃ができるか、きちんと検証してチーム作りに役立ててほしいです。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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