Yahoo!ニュース

サッカー五輪代表、キーマンは植田直通か

林壮一ノンフィクションライター
被災地熊本の思いを背負って戦う植田直通(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

明日、第一戦を迎えるサッカー日本代表。先日のブラジルとの親善試合では、なす術もなく完敗した。しかし、サッカー解説者の川添孝一氏は、「彼らはの開き直りに期待したい」と語った。

==============================================================

とにかく初戦がカギですね。死の組と呼ばれていますが、アジア予選だって誰もイケるとは思っておらず、周囲に諦められていたチームです。なのに、凄く開き直って結果を出した。本戦ももっと開き直って、それがいい方向にいくんじゃないかと思っています。結構、あの組み合わせって、選手本人たちは「やってやろうじゃないか」と思っているんじゃないですかね。僕は、期待していますね。弱いグループで予選負けするよりも、ラッキーだと感じます。戦う意気込みになっていますからね。マイナスをプラスにしてきたメンバーですから、結構、いいサッカーしてくれるんじゃないかな。厳しいゲームにはなるでしょうが。

初戦で勝ち点3を得られれば、凄く希望が持てますね。引き分けだとかなり苦しくなります。8月5日に対戦するナイジェリアは、チェルシーの中盤、ジョン・オビ・ミケルをオーバーエイジで招集しましたが、プレミアリーグでコンスタントに力を出しているし、もう一花咲かせようという気持ちを強く持っているでしょう。危険な選手です。

ただ、ボランチのミケルだけじゃなく、スピードと身体能力が日本より数段上の相手ですから、それをどうやって封じるかがカギとなるでしょうね。スピードで日本がやられてファールをした後のセットプレーが怖い。北京五輪で3戦全敗した時と、同じような状況ですね。それ以上に苦しいかもしれない。

とはいえ、ロンドン五輪もスペインが日本を舐めてくれたお陰で波に乗れた。そこに勝機は十分あると僕は思うんです。初戦が全てですが、相性とすれば、メキシコ五輪の時もナイジェリアを相手に釜本さんがハットトリックして勝って、銅メダルに結びつきましたから。ノーマークなだけに逆にいい風が吹いているんじゃないかなと思います。ナイジェリアは日本には絶対勝てるって舐めてくれているから、やり易いんじゃないでしょうか。どのチームも日本が最下位だと思っているでしょうからね。楽勝だっていう油断に左右されるんじゃないかと僕は思っているんですけどね。

少ないチャンスで前の人間がどれだけ確実な仕事をするかでしょうね。興梠慎三がオーバーエイジで選ばれたのは、非常にいい選択だったと思います。興梠もビッグトーナメントには縁がなかった選手なんで、その辺は若い子たちと感覚は同じだと思うから、プラスに左右すると思いますよ。浅野の使い方や南野との融合もいいんじゃないかと。

個人的に、浅野はジョーカー的な役割でスタメンではないと予想しますね。プレミアにわたって心身ともに絶好調なので、90分やってくれた方が日本のためにはなるでしょうが。興梠はスタメンで、ポストプレーをしたり、上手くゲームを作れると思います。興梠は前線のキープレーヤーになるんじゃないかな。

しっかり守って守っての展開になるでしょう。で、毎試合ラッキーボーイが生まれるようなローテーションになっていくんじゃないですかね。予選もそうでしたしね。あんまり攻撃で崩し切るのは期待できないですよ。

オーバーエイジ、塩谷、藤春の加入も心強いです。彼らが、うまくセンターバックの植田直通の良さを引き出すと思います。植田のセットプレーからの得点に期待したいですね。植田の守備での粘り強さ、力強さはキーポイントになって来ると思います。植田はJリーグ、ファーストステージの優勝にも大きく貢献しましたし、地元熊本の震災で非常に苦しい思いをしている。日本を代表して戦っているけれど、熊本を元気にしようっていうのは周囲に伝わっていると思います。

Jリーガーである植田がヨーロッパの強豪クラブに在籍している選手を抑えるシーンは痛快ですよね。植田は今回のキーマンと言っていいでしょう。非常に期待しています。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事