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アルゼンチン人コーチが語る「トップJリーガーの切れ目なき移籍を検証したい」

林壮一ノンフィクションライター
ベルギー1部リーグ、ベールスホットVAへ移籍した鈴木武蔵(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、Jリーガーの相次ぐ移籍について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 ここ数週間で、日本代表の橋本拳人、室屋成、鈴木武蔵が海外に移籍しましたね。柏レイソルのオルンガもスペインのクラブからオファーが届いていると報じられましたし、浦和レッズのファブリシオとマウリシオにはポルトガルのチームから、横浜Fマリノスのエリキにもオファーがあるという噂です。

 今シーズンは新型コロナウイルスの影響で、チケット収入が見込めません。Jリーグの各クラブはスタジアムを満員にすることがかなわないんですね。そんな状況下で、チームに移籍金が入れば利益を得られます。

 Jリーグで活躍すれば、ヨーロッパのマーケットから声が掛かるというのは、大変喜ばしい事です。でも、一方で、「こんな大切な時期にチームを離れてしまうの? クラブは主力がいなくなってもいいんですか?」と感じるサポーターもいることでしょう。

 年間シートを持っている熱狂的ファンのなかに、「あの選手を見たいから応援していたのに!」という気持ちになる方が出るのは当然です。

 Jリーガーがヨーロッパで認められることについては、心から拍手を送ります。でも、果たしてこの時期でいいのかな、という思いがいつもあるんですね。このままトップ選手が次から次へとJリーグからいなくなってしまえば、シーズン途中でのレベルダウンは避けられません。

 たとえばアルゼンチンリーグで活躍する選手にオファーが届いた場合、クラブは「ヨーロッパへの移籍は大賛成。でも、シーズン終了してからにして下さい」という考え方が一般的です。スター選手がシーズン途中でヨーロッパに移籍するなんてことになったら、サポーター200~300人がクラブの会長の家を訪ねて、抗議しますよ。

 そういう問題を起こさないように、100年の歴史を誇るアルゼンチンの国内リーグも、ヨーロッパと同じ時期に開催するように7月にスタートし、5月下旬に終わるような日程にしました。

 

 僕に言わせれば、日本のサポーターの方々は、とても優しいです。僕には、サポーターや日本に残る選手が可哀想だなという気持ちがあります。敢えて苦言を呈しますが、Jリーグのシーズンもヨーロッパに合わせた方がいいように感じます。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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