Yahoo!ニュース

世界ヘビー級王者を目指すタイソン・フューリーの新たな参謀

林壮一ノンフィクションライター
ディフェンスが光る挑戦者タイソン・フューリー(写真:ロイター/アフロ)
Photo:Frank Micelotta/FOX Sports
Photo:Frank Micelotta/FOX Sports

 22日にWBCヘビー級王者、デオンテイ・ワイルダー(34)に挑戦するタイソン・フューリー(31)は、新たなトレーナーであるシュガーヒル・スチュワードを迎え入れた。

 スチュワードと聞いて、「おや?」と思う方もいらっしゃるだろう。

 

 トーマス・ハーンズやレノックス・ルイスを指導したエマニュエル・スチュワードの甥である。

レノックス・ルイスを指導中のエマニュエル・スチュワード 撮影:著者
レノックス・ルイスを指導中のエマニュエル・スチュワード 撮影:著者

 フューリーはワイルダー戦の10週間前に、シュガーヒル・スチュワードと契約を交わした。シュガーヒルは、2012年に亡くなったエマニュエルが、ウラジミール・クリチコのチーフセコンドを務めていた2009年から伯父の下でトレーナー修行を積んで来た。これまでに、WBCライトヘビー級タイトルを9度防衛したサウスポーのカナディアン、アドニス・スティーブンソン、元WBCスーパーミドル級王者のアンソニー・ディレル、元IBFヘビー級チャンピオンのチャールズ・マーティンらを手掛けている。

Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions

 シュガーヒルが、デトロイトのKRONKジムでエマニュエルからトレーナーとしてのイロハを学んだ点に注目したい。エマニュエル・スチュワードはトーマス・ハーンズを名王者に育て上げ、自身の功績としたが、アマチュア時代のハーンズは特に光るモノの無い、平凡な選手だったという。スパーリングパートナーのほとんどに打ちのめされていた。

 そのハーンズを<ヒットマン>に変えたのが、エマニュエル・スチュワードだったのだ。

Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions

 1994年9月24日にレノックス・ルイスがWBCヘビー級王座から陥落した折にも、敵陣であるオリバー・マコールのコーナーにエマニュエルの姿があった。ルイスは、この参謀を自身のコーナーに招き、引退まで共に歩んだ。

 ルイスに再起ロードを歩ませる際、エマニュエルは徹底してバランスを改善した。そして、ルイスに体重を増やすことも命じた。

Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions

 エマニュエルは、マコールのみならず、イベンダー・ホリフィールド、マイケル・モーラー、シャノン・ブリッグス、ヘンリー・アキワンデといったルイスのライバルを指導した時期もある。また、アーロン・プライア―、フリオ・セサール・チャベス、オスカー・デラホーヤら中量級のスターチャンプからも依頼を受けた。

Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham:TGB Promotions

 エマニュエルは几帳面な男であったから、甥っ子をきちんと育てたに違いない。シュガーヒルが、タイソン・フューリーにどんな策を練り、ワイルダー戦に向かうのか興味津々だ。

Photo:Frank Micelotta/FOX Sports
Photo:Frank Micelotta/FOX Sports

 両者共に、調整は上手く運んでいるようだ。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20200202-00160964/

 2月22日の一戦から、ますます目が離せなくなって来た。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事