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アルゼンチン人コーチが語る「露になったサムライブルーの実力」

林壮一ノンフィクションライター
ベネズエラの#23ロンドンはハットトリックを決めた(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、京都サンガ所属のエスクデロ競飛王。自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 最近、川越市のフットサル場で自身のスクールを始めた彼が、1-4で惨敗した日本代表vs.ベネズエラ戦について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 日本代表が6大会連続でワールドカップに出場しているのに対し、ベネズエラは、まだ一度も南米予選を突破したことがありません。最近、力を付けてきたのは事実ですが、やはりアルゼンチンやブラジル、ウルグアイ、チリ、コロンビアには勝てません。南米でベスト8のチームなんです。

 それでも、日本とはこれだけの差がある。1対1のボールの奪い合いも、クロスやシュートの質も、空中戦も、すべてにおいて日本は負けていました。日本代表はベストメンバーではなく、何名かをテストしていた状態でしたが、大人と子供の差ですよ。TV中継したスタッフが「後半は良くなった」と言っていましたが、勝利が動かなくなったから、ベネズエラがペースダウンしただけのことです。時間稼ぎのプレーも多かったですしね。

 強いチームと当たると、日本は何もできない。一体、何がしたいのかまるで分らないサッカーでした。ゴールのイメージが湧かない。

 浅野は中盤からいいボールが出てフリーで受けても、シュートの前にボールを収めきれない。左サイドバックの佐々木はオーバーラップが中途半端で、抉ってマイナスにセンタリングすることができない。右足で蹴って中に入れるだけ。あれでは怖くない。右サイドからのクロスもグランダーばかりでした。

 昨日のベネズエラ戦で示したのは「日本はアジアでは勝てても、世界レベルには程遠い」「アジア予選のレベルが低いから、ワールドカップに出られているのだ」ということだけです。ロシア大会を上回るベスト8を目指すなんて、このままでは夢物語ですね。ガッカリしました。

 前回のワールドカップで敗れたベルギーに、ルカクというセンターフォワードがいましたよね。昨日、ハットトリックをしたロンドンと体型がよく似ています。日本はロンドンを自由にさせ、ヘッドで競ることさえ出来なかった。本当に残念な内容でした。

 日本はヨーロッパの真似をしたいのか、南米から学びたいのか、小回りの効く機敏性を生かすのか? 目標設定が見えません。「サムライブルーのサッカーの特徴」を明確に打ち出して、若い年代から育成しなければ、世界には到底追いつけないと思いますね。

 これが今の実力ですから、考えねばならないことは山ほどありますよ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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