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日本にNBAがやって来た!

林壮一ノンフィクションライター
129-134でロケッツは敗れたが、出場選手のなかで最も光っていたハーデン(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 16年ぶりに日本で催されたNBAのゲーム。プレシーズンマッチとはいえ、昨年の覇者トロント・ラプターズvs.西地区でウォーリアーズを追随する強豪、ヒューストン・ロケッツhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180401-00083404/という豪華カードに、埼玉スーパーアリーナのチケットは完売。2万413名が本場のバスケットボールに酔いしれた。

 開幕前の調整試合であるため、両チームとも、この時期にケガ人を出してはたまらない。よってラプターズはマーク・ガソル、ロケッツはタイソン・チャンドラーといった主軸のベテランを温存した。

 ウォーミングアップでコートに姿を表した時から、圧倒的な存在感を示していたのがジェームズ・ハーデンである。ヘッドフォンをしたままシュート練習を続ける様に、ファンは釘付けになった。

 ゲームが開始されてからも、巧みなステップでラプターズを翻弄し、ここぞ、という局面では必ず得点した。まさしく「役者の違い」を随所に見せた。

 この日、ハーデンは27分16秒プレーし、34得点。7本の3ポイントシュートを放ち、そのうち4本を決めた。ロケッツで2番目に出場時間の長かったのはエリック・ゴードンで、24分53秒。彼は5本の3ポイントを放ち、4本を成功させた。

 今シーズンからロケッツに加入したラッセル・ウェストブルックは20分41秒の出場で、13得点。動きは速く、確かに非凡なものを感じさせたが、新チームに馴染むのに、まだ時間がかかりそうだ。

 129-134でロケッツは敗れたが、私の目にはラプターズよりヒューストンの面々の方が印象的であった。

 ハーフタイムのダンスや、着ぐるみのパフォーマンス、コートの真上にあるスクリーンに会場のファンを映し出し「踊って!」なる演出は、本場とまったく同じ。埼玉スーパーアリーナそのものがNBA会場となった。

 試合開始の直前、記者席の私の耳には「楽天ありがとう!」という声が聞こえてきたが、ファンの気持ちをストレートに表していた。彼らにとっては、待ちに待ったNBA生観戦であっただろう。

 未就学と思しき我が子にサクラメント・キングスやLAレイカースのジャージを着せ、その子供たちの手を引いて会場を歩いていたお父さん。コービーの8番のユニフォームを身にまとった男性ファン、また、ビンス・カーターhttps://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180516-00085099/のラプターズ、15番のユニフォームを着た人などを目にすると、自然に心が温かくなった。

 NBAを日本に連れてきてくれた楽天・三木谷代表には頭が下がる。今後も是非、NBAの日本開催を続けてほしい。やはり、NBAを味わわなければ、本当のバスケは語れない。 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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