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200年に一人の天才ボクサーが語る「2階級制覇チャンプが更に伸びるために」

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 現役時代、所属していた協栄ジム会長、故金平正紀に「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と絶賛された元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄。

 本シリーズでお馴染みの彼に、6月19日にタナワット・ナコーンを判定で下してWBAライトフライ級スーパータイトルの防衛に成功した京口紘人について訊ねた。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 京口は試合前に「4ラウンドまでに倒す」と語っていましたね。自らのKO宣言を意識し、倒そう、倒そうと1発1発力を込めたパンチを出し続けました。対するナコーンは、KOされないことだけを考え、前に出ませんでしたよね。後半、ポイントで圧倒的にリードされているのに、ラウンドを凌げたぞ! とガッツポーズでコーナーに戻って行ったでしょう。京口は下がってばかりの挑戦者を捕まえるのが難しい試合になりました。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 京口が綺麗にナコーンを料理するには、強弱を付けたコンビネーションを放つ必要がありましたね。手でも肩でも足でもいいのですが、もっとリズムをとって戦うことを覚えたらいいと思います。

 それにはシャドウボクシングの時から、強弱を付けて、リズム感を養うといいんです。僕の協栄ジム時代の後輩に喜友名朝博という日本ライトフライ級チャンピオンだった男がいます。彼が日本タイトルに挑戦する前、レパード玉熊との試合が決まりました。

 玉熊は後にWBAフライ級の王者になるくらいの選手ですから、前評判も高く、喜友名が不利とされていました。玉熊は171センチと軽量級にしては長身で、リーチもある。おまけにショートパンチも上手い。喜友名が自分の距離で戦うには、玉熊の懐に入らなければなりませんでした。

 そこで僕は喜友名に「玉熊をイメージして、手を出しながら頭を振って接近できるようにシャドウを繰り返せ」とアドバイスしたんです。喜友名は地道にシャドウを何百ラウンドも重ね、リズム感とヘッドスリップを身に付けていきました。それで、玉熊に10回KO勝ちを収めたのです。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 京口もシャドウから、そんな練習をしたらいいな、と僕は思うんですよ。京口はパンチが強く、相手に対してのプレッシャーのかけ方もいい。13戦全勝9KOと戦績もパーフェクト。これにリズム感と強弱のあるコンビネーションが加われば、もう一皮剥けますよ。まだまだ伸び代がありますから、是非、頑張ってほしいですね。

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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