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伝説のファイターに突然訪れた逆縁

林壮一ノンフィクションライター
娘を失ったフォアマンの哀しみを思うと、言葉が無い 撮影:著者

 本コーナーで何度もご登場頂いている元世界ヘビー級チャンピオン、”BIG”ジョージ・フォアマン。

 https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180601-00085069/

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180606-00085071/

 彼の愛娘、フリーダが他界した。享年42。父が14歳年下の統一ヘビー級王者、イベンダー・ホリフィールドに挑み、全米中を熱狂させた年齢である。

 私がフォアマンをインタビューする際、場所は必ずテキサス州ヒューストンに建てられた彼の教会となる。礼拝に参加し、ジョージのプリーチングを聞いた後、向かい合うのだ。

 取材を重ねるなか、フリーダとも挨拶をしたことがある。父親譲りの180センチ近い身長とは裏腹に、控えめで静かな女性であった。そんな彼女も父と同じ道を選び、プロボクサーとしてリングに上がった。2000年6月にデビューし、5勝1敗の戦績を残して引退。2001年11月20日のファイトで判定負けを喫した折、父から「もう、お前が殴られる姿は見たくない」と告げられ、リングを離れた。

 ヒューストン近郊にあるフリーダの自宅で、彼女の遺体が家族によって発見されたのは先週金曜日の夜。『People』誌によれば、死因は自殺だという。

 私はこれまで何度もフォアマンに救われて来た。人生に行き詰まった時には、生きる希望を与えてもらった。彼の笑顔と包み込むような言葉に、どれだけ励まされたことか。

日本製の皿を手に笑顔を見せる
日本製の皿を手に笑顔を見せる"BIG"ジョージ 撮影:著者

 が、今、どんな言葉を送ればいいのか見当が付かない。いかに強い精神を持った英雄でも、娘をそんな形で失ってしまったら…。

 「I would like to give my pray and condolences to Big George and his Family for the lost of their daughter」と短いメールを送るのが精一杯だ。

 フリーダには夫と2人の娘、3人の孫がいる。この哀しみを、BIG GEORGEはいかに乗り越えるのかーーー。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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