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間近に迫ったNBAオールスターの陰で、注目すべき選手

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
ケガを乗り越え、新たな立ち位置を得たデリク・ローズ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今週末に催されるNBAオールスターゲーム。発表されたメンバーの中に、彼の名は無かった。今シーズンはキャリアハイとなる、ワンゲーム50得点を記録し<復活>を強烈に印象付けたのだが…。

 デリク・ローズ。

 ミネソタ・ティンバーウルブスのポイントガードである。1988年10月4日生まれの30歳。イリノイ州シカゴの南部、所謂、貧民エリアの出身だ。4人兄弟の一番下で、兄たちからバスケットボールの手解きを受けた。犯罪がはびこる危険地帯で腕を磨き、メンフィス大を中退して2008年にNBA入り。地元、シカゴ・ブルズのユニフォームを纏った。

 ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得し、3年目にはコービー・ブライアント、レブロン・ジェームスを抑えてリーグMVPを獲得。身長191センチと小柄ながら黒ヒョウのような動きと華麗なドリブルは、シカゴファンから「マイケル・ジョーダン以来の逸材」と讃えられた。ブルズ戦を実況していたアナウンサーが「Too Big!, Too Strong!, Too Fast!, Too GOOD!!」とローズのパフォーマンスに脱帽したことは、現在でも語り草となっている。

 それでいながら、シャイで口数が少なく、けっして鼻が高くならないのがローズであった。

 しかし、2012年のプレイオフで左膝の前十字靭帯を断裂し、その輝きを失ってしまう。2016年に慣れ親しんだブルズを去り、ニューヨーク・ニックス、クリーブランド・キャバリアーズ、そして現在在籍するミネソタ・ティンバーウルブスへと一年ごとに移籍した。

 

「ローズはもう、昔の彼ではない」

 そんな風に囁かれることも多かった。スタメンではなく、シックスマンの役割を担うことが多くなった。

 ブルズ時代、短髪だったローズは、今、ドレッド・ロックスにし、ベテランとなった。そんな彼が2018年10月31日のユタ・ジャズ戦で50得点したニュースに心が震えた。願わくば、今回のオールスターにも出てほしかった…。

 まぁいい。ローズが更に己を磨くのは、ひょっとしたらこれからという可能性もある。彼の諦めない姿勢からは、人生において何が重要なのかが伝わって来る。

 バスケファンの方々には、是非ミネソタ・ティンバーウルブスの背番号25に目を向けて頂きたい。

 

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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