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狙え! 日本代表の正GKを!!

林壮一ノンフィクションライター
現在、プロ5年目のシュミット・ダニエル(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 9月3日に始動した森保ジャパン。A代表初選出となったベガルタ仙台のGK、シュミット・ダニエルに期待したい。

 身長197センチと恵まれた体躯に加え、そのポテンシャルは学生時代から高評価を得ていた。プロ生活5年目のダニエルは、満を持して日の丸を付けることとなった。

 監督として中央大学時代のダニエルを指導し、現在は国学院大のヘッドコーチを務める白須真介氏は語る。

 「彼が日本代表に選ばれたことは、素直に嬉しいです。日本代表に選出されただけでなく、ピッチに立って、日本の勝利に貢献してほしいですね。本人の夢であるワールドカップの舞台で活躍してくれることを、祈っています。

 大卒後、ダニはベガルタで即戦力になれた訳ではなかった。試合出場の機会を求めて、まずはJ2の熊本に移籍し、降格を食い止め、その後J2の強豪だった松本でキャリアを積みました。昨シーズンから仙台に戻りましたが、ベンチを温めていた時期もあります。ここまで来るのに、時間が掛かったと言えるかもしれない。でも、苦しい思いを経験して、ベガルタで正GKの座を取り返し…と一つ一つステップアップして来たんですね」

 白須氏が指揮を執っていた中大時代も、ダニエルが正GKとなったのは、最上級生となってからである。

 「一学年上に、ヴァンフォーレ甲府の岡西宏祐がいて、なかなかレギュラーを奪えませんでした。潜在能力はピカイチなのですが、向上心がちょっと足りなかったんです。ダニは“俺が”“俺が”と前に出るタイプではないので、当初は、他人を蹴落としてでもプロの世界で生きていく! という感じでもなかった。

 1年生の途中から川崎フロンターレの特別指定選手になり、GKコーチだったイッカさんの指導を受けて、かなり変わりました。それでも大学時代は岡西の方がメンタルは強かった。ダニはユニバー代表の候補になってイタリアに遠征したり、総理大臣杯で岡西と交互に出場して準優勝したりして伸びていきましたが、プロの厳しい環境がダニを成長させたんだと思います。プレーの幅を広げるには、自信が不可欠ですから」

 大学卒業間近の頃だった。白須氏、ダニエル、現在ロアッソ熊本のFW、皆川佑介ら中大サッカー部のメンバーは、私が企画した障害児と触れ合うサッカーイベントに参加してくれた。

 様々なハンディを抱えた子供たちをボールひとつで笑顔にした彼らの振る舞いや眼差しは、今思い出しても胸が熱くなる。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20140115-00031621/

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20140118-00031622/

 「そうですよね。実に気持ちのいい、そして熱い男です。昨シーズン、彼の試合を観に行きましたが、プロの風格が備わって来たように感じました。ゴール前に立つダニが、身長以上に大きく見えたんです。色々な壁を乗り越えたんでしょう。プロ意識が彼を一回り大きくしたんじゃないかな。早熟な選手は消えていくのも早かったりしますから、ダニには時間が必要だったのでしょう。

 元々素材としては最高クラスのものを持っていますから、これからのダニに期待大です。選手をやっていれば、いい時だって悪い時だってあります。調子の悪い時ほど、人間性が出てしまうものです。でも、ダニはブレない。今後も、何に対しても動じずに、自分のスタイルを貫いてほしいですね」

 GKの息は長い。現在26歳のダニエルには、まだ先がある。

 「次のワールドカップの時、ダニは30歳ですか…4年後も8年後も狙えるんじゃないですか。僕も楽しみです」

 シュミット・ダニエルが飛躍することを切に願う。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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