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サガン鳥栖よ、フェルナンド・トーレスを生かせ!

林壮一ノンフィクションライター
スペイン代表110キャップを誇るトーレス(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 8月19日、鳥栖は名古屋に0-3で敗れた。現在の順位は18チーム中16位。降格の可能性大である。

 日本における7試合目のピッチに立ったフェルナンド・トーレスからは、まだゴールが生まれていない…。

 神戸のイニエスタが2試合連続のゴールを決め、Jが沸いた8月15日、かつて共にスペイン代表としてワールドチャンピオンとなった鳥栖のフェルナンド・トーレスは、来日後、初となるフル出場を果たした。対戦相手は昨年の王者、川崎フロンターレ。AWAYでのゲームだった。

 

 イニエスタにポドルスキというパートナーがいるのに対し、残念ながら鳥栖にはトーレスを生かせる存在が見られない。日本での6試合目となった川崎戦で、トーレスはシュート無しに終わった。結果は0-0のドロー。

 この日の鳥栖は、福田晃斗、小野裕二をサイドに張らせたが、クロスボールを上げられず、トーレスに通ったまともなパスはゼロ。右サイドからセンターリングを試みたDFの小林祐三も不発であった。この日の鳥栖には、クロスをマイナスに上げられる選手が一人として見られなかった。

 「全盛期を過ぎたとはいえ、せっかくあれだけの選手がJに来たというのに、孤立してしまっているね。勿体ない」

 「あれじゃトーレスが可哀想ですよ」

 記者席ではそんな溜息が漏れていた。

 鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ監督は、「この3試合、我々はしっかりと結果を出せています。川崎にAWAYで勝ち点1を得られて良かった。この順位(試合前の段階で3位)の相手からホームに勝ち点を持って帰れるのはいいシグナルです」と話した。

 フィッカデンティ監督が語った“3試合”とは、8月5日のC大阪戦での1-0、11日の浦和戦の1-0、そして川崎との0-0を指す。

フィッカデンティ監督はトーレスについても言及した。

「トーレスは今、難しい時間を過ごしています。チームメイトとの距離感や日本のサッカーに慣れるのには、まだまだ時間が掛かるでしょう。でも、少しずつ馴染んでいる段階です」

 試合後、トーレス自身は

「これまで日本で戦ったなかで、川崎はベストのチームだったと思います。でも、我々は良く守って戦い、ドローにできて良かった。川崎は上位にいますし、いいドローです。カウンターアタックしたかったし、あまりチャンスを作れなかったけれど、とりあえず良く守って貴重な勝ち点を挙げたと思います」

 と言った。

 私はトーレスに訊ねた。

――あなたに、いいパスが入らなかった。特にクロスボールが来なかったですね。そのあたりは、いかがですか?

 

 トーレスの回答は以下である。

 「今日、私たちのチームは難しかった。川崎は攻撃力のあるチームなので、守った方がいいと思いました。自分にボールが来なかったことは、それほど大事では無いと思います。最も大事なことは、勝ち点を挙げることで、敗北しないことです。とりあえずは、ドローが大事でした。戦い方はコンパクトになって来ていますから、チームもより良くなって行くでしょう」

 彼は母国語のスペイン語ではなく、英語で取材に応じている。メディアへの応対からは、非常に真面目な印象を受けた。やはり、ワールドクラスの選手である。

 3試合で結果を出したものの、グランパスに0-3では、やはり今後の道は険しいと言わざるを得ない。ピーク時のパフォーマンスを期待するのは酷だが、トーレスが日本で爆発力する姿を見たい。また、彼と同じ空間にいる他の選手が、成長する様も目にしたい。

 鳥栖よ、どうかトーレスを、C大阪が”飼い殺し”にしたディエゴ・フォルランのようにはしないでくれ!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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