アルゼンチン人コーチが語る「サムライブルー新監督について」
アルゼンチン出身。兄は1979年ワールドユース東京大会でマラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現京都サンガの背番号10、エスクデロ競飛王。
自身はアルゼンチン、スペインでプロとしてキャリアを積み、アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表に選出された。引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在は、埼玉県に発足したクラブチームFC Futureで指揮を執るセルヒオ・エスクデロ。
彼に日本代表新監督について訊いた。
4年後のカタールW杯を見込んで、日本代表の新監督が決まりそうですね。森保一さんが有力だと聞いています。
森保さんは、サンフレッチェ広島の監督時代に4シーズンで3度もリーグ優勝を果たした人ですから、面白い代表チームを作るでしょう。選手とのコミュニケーションの取り方、人間性も、高く評価されていますね。「選手の心を預かるのが監督だ」って言っているんですよね。彼の人柄を表す言葉です。
日本サッカー協会がハリル監督をああいう形で切りましたから、たとえオファーを受けたとしても、海外の監督たちは、「自分もハリルのようになる可能性があるんじゃないか」と二の足を踏むでしょう。その点、森保さんなら、日本の組織を理解しているし、日本人の良さを十分引き出せるんじゃないかな。
でも……以前にもこのコーナーで申し上げましたが、僕は日本人監督なら、長谷川健太さんを推します。直ぐに、というのは難しいのでしょうが。
今、FC東京は暫定2位と調子がいいですね。長谷川監督の采配がいいからです。また、彼はガンバ大阪を指揮していた頃に、3冠を成し遂げた人です。
長谷川監督は繋ぐサッカーをしますし、サイドを効果的に使って攻撃します。長谷川さんは現役時代、日本随一の右ウイングでしたね。自分自身がサイドを抉ってクロスを上げていたこともあって、マイナス・クロスボールの重要性を理解しています。僕は長谷川監督のサッカーが好きですよ。また、若い選手を育てるのも上手い印象があります。
井手口陽介をA代表にまで押し上げ、ディフェンスをしないと叩かれていた宇佐美貴史にフォアザチームを理解させ、今は久保建英を育成しながら使っています。
ですから長谷川さんは、きっと代表監督としてもいい仕事をするように思うんです。
Jリーグに、超スーパースターであるアンドレス・イニエスタとフェルナンド・トーレスが加入します。非常に喜ばしいことですし、僕も見に行きたい。でも、残念ながらJのレベルは、あまり高くありません。日本のサッカーは、もっともっと成長しないとW杯でベスト8に行けないんです。10年掛かるかもしれないけれど、やるしかありません。
何度も同じことを言いますが、意欲のある選手は、どんどん海外に出てほしい。例えば、浦和レッズにいた関根貴大はドイツの2部リーグでプレーしていますが、あまり試合に出ていないとしても…紅白戦にしか出ていなかったとしても、Jにいるよりも彼は伸びると思います。井手口もそうですよ。
何故なら、そこにはバトルがあるからです。
僕は今、FC FUTUREを指導しています。アルゼンチンサッカーと聞くと、マラドーナやメッシのイメージからか、華麗なテクニックを連想するでしょう。でも、基本的には肉弾戦のバトルです。ロシアW杯を最後に代表を引退した#14のボランチ、ハビエル・マスチュラーノはナイジェリア戦で流血しながら闘ったでしょう。あれがアルゼンチン人サッカー選手の魂です。
僕は、預かった選手たちに、そういうメンタルも含めてアルゼンチンスタイルのサッカーを伝えたいと考えています。
新たな監督の指導で、日本代表が飛躍することを祈っています。