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アルゼンチン人コーチが語る「レアルのストライカーは代表入りできない?」

林壮一ノンフィクションライター
UEFAチャンピオンズリーグ、セミファイナル第2戦でヘディングを決めるベンゼマ(写真:ロイター/アフロ)
撮影:著者
撮影:著者

 アルゼンチン出身。兄は1979年ワールドユース東京大会でマラドーナと共に世界一となったピチ・エスクデロ。息子は現京都サンガの背番号10、エスクデロ競飛王。

 自身はアルゼンチン、スペインでプロとしてキャリアを積み、アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表に選出された。引退後は、柏レイソル青梅、レッズ・ユース、埼玉栄高校、エルサルバドルのプロチームでの指導者を経て、現在は、埼玉県に発足したクラブチーム、「FC Future」で指揮を執るセルヒオ・エスクデロ。彼に、レアルの#9、カリム・ベンゼマについて訊ねた。

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 ベンゼマはUEFAチャンピオンズリーグの準決勝第1戦で、後半21分からの交代出場でしたね。第2戦では先発で出て、2得点しました。6日に行われたバルサとのクラシコでも、クリスティアーノ・ロナウドの得点をアシストしています。彼は、ストライカーとしての経験と実績があります。セミファイナルでの2得点というのは素晴らしいですよ。ストライカーとして、かなり優秀です。

 ロナウドがクラシコでケガをしましたし、ベンゼマはチャンピオンズリーグのファイナルに間違いなく先発で起用されるでしょう。今、調子も良さそうです。

 2009年からレアル・マドリードに在籍し、世界一厳しいとされるファンの前でプレーしている選手です。昨年、契約を4年延長したんですよね。レアルに2021年まで欲しいと思わせたセンターフォワードなんですから、実力は折り紙付きです。アルゼンチン代表の#9、ゴンサロ・イグアインもレアルにいましたが、7シーズンでした。ベンゼマはトータルで12年もあの白いユニフォームを着るようになるんです。

 レアルは、いくら得点しても、ちょっとしたトラップミス一つが命取りになるようなチームです。ベンゼマはクラブとして世界一にもなったし、リーガも2回勝ったし、現在はチャンピオンズリーグも3連覇がかかっています。

 それでも…ベンゼマはフランス代表に選ばれない状況ですね。恐喝事件や少女買春の影響だという声があるのは事実です。2016年に、当時、フランスの首相だったマニュエル・ヴァルスが「起訴されたベンゼマが代表でプレーするのは良くない」とフランスサッカー協会に圧力をかけました。でも、その後、恐喝事件は警察の不正捜査だったことが報じられましたし、未成年者買春も無罪になったじゃないですか。ベンゼマには不運が重なった感があります。彼がアルジェリア移民だからだとか、リヨン郊外のグロンのゲットー出身だから…という見方をする人もいるようです。

 でも、僕はベンゼマが代表に入れない理由は他にあると思っています。ベンゼマが代表Aキャップ81で27得点していても、フランスは世代交代が進んでおり、若くていい選手が沢山います。それだけ、ポジション争いが厳しいんですね。FWには27歳のグリンスマンや19歳のエムバぺがいます。もし、グリンスマンがいなければ、ベンゼマが代表に入っていてもおかしくありません。ただ、今は「グリンスマンの時代」なんですよ。言ってしまえば、ベンゼマはフランス代表でのポジションをグリンスマンに奪われたんです。

 とはいえ、ベンゼマも30歳。まだまだレアルで活躍できますよ。チャンピオンズリーグのファイナル、楽しみですね!

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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