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メッシ代表引退の余韻

林壮一ノンフィクションライター
PK戦で敗退したアルゼンチン代表の主将(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

「メッシは神様みたいに言われていたけれど、やっぱりマラドーナは超えられなかったね」(アルゼンチンのスポーツライター)

ブラジルW杯後、アルゼンチンでは「メッシは体内に流れる血をすべてマラドーナのものに変えなければダメだ!」なる論調が沸き起こった。そして、現在の評価も、冒頭の一言に集約される。

とはいえ、バティストータが持っていたアルゼンチン代表最多得点記録を更新したのも事実だ。

「80点までいけそう。でも、メッシはバティなんか意識してないんじゃないかな」。

元アルゼンチンユース代表のセルヒオ・エスクデロはコパアメリカの期間中、そう語っていた。

「ただ、キャプテンマークはしていても、マラドーナみたいなリーダーにはなれないんだね。人前であんまり話せない。リーダーシップを取れないキャラだから」

やはり、アルゼンチンの真のリーダーは背番号14番であった。

「マスチェラーノはチームメイトに怒るけど、グラウンドの中でスライディングして、周囲に戦う気持ちを伝えるでしょ。言葉じゃなくて”このくらいやれよ!”って。プレーで気持ちを見せるから。サッカーは闘魂が周囲に伝染するものだから。『俺はバルサでこれだけ稼いでるんだから、もっとやるよ!』って刺激を与えるし、あの姿には頭が下がりますね。

皆、あぁいう選手になりたい! って憧れる。DF、ボランチの人はマスチェラーノがアイドルだね。アルゼンチンのプライド、男らしさ、絶対に逃げないで戦う姿勢ね。メッシはそういうタイプじゃない。ただ、ボールを持ってるときに3~4人抜いてシュート決めたりするでしょう。マスチェラーノ、それは、やりたくても出来ない。HEROで戦士。命掛ける戦いをするのがマスチェラーノ。今までのアルゼンチン代表だと、パサレラ、ルジェリ、ずっとスペインでやってたアザラーとかね。相手のFWが怖がっていたんだよ」。

人々の心にいつまでも記憶されるのは、記録ではなく、背番号14の闘魂ではないだろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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