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【コラム】「サヨク」はウクライナから逃げるな!

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
ロシア軍による住民虐殺が行われたウクライナの都市ブチャにて筆者撮影

 ここ最近、似たような話を続けて聞いた。日本の反戦・平和運動関係者(の一部?)の間で、ウクライナはタブーになりつつあるそうだ。要は「ウクライナの話題になると、意見の違いで仲間割れしてしまう」からだとのこと。確かに、いわゆる左派・リベラルの中には、ロシアによるウクライナ侵攻に強く反対し、デモを行ったりしている人々がいる一方で、あえて名指しはしないが、露骨にプーチン支持みたいな言動をしている日本の平和業界(?)の大物みたいな人も何人かいるし(呆)、「ロシアの侵攻は許されないが…」と断りつつ、ひたすら米国やウクライナの批判をし続ける人々はさらに多いという人々もかなりいることは事実。ただ、結論から言えば、改憲の危機を憂う護憲派の市民こそ、ウクライナ侵攻に強く反対し、平和への道を模索すべきではないかと。

〇ウクライナ叩きに夢中の「左派・リベラル」の問題点

 いわゆる、左派・リベラルの中で、ウクライナに対して批判的(その時点で平和主義者として終わっている気もするが…)な人々の主張を分析しつつ、その問題点を指摘すると、

・ウクライナ 情勢にかこつけて、改憲派が勢いづいていることへの危機感

→改憲派を批判すればいいことで、プーチン政権のプロパガンダに染まってまでウクライナの批判をするのは愚の骨頂。

・NATO(北大西洋条約機構)を拡大させ、ロシアに脅威を感じさせた米国が悪い。

→プーチン政権のロシアが周囲の国々を怯えさせるような行為を繰り返してきたことが、NATOの拡大につながった面も。ロシア内でもそうした指摘はある。

となる。そもそも、NATOの拡大が ウクライナ侵攻の最大の理由かどうかはアヤシイところがある。拙著でも書いたように、現地の人々の民意を無視して、ウクライナをロシアの一部とみなし、「欧米がウクライナを奪おうとしている」と逆ギレしている、プーチンのウクライナに対する歪んだ感情と支配欲が、侵攻の最大の理由ではないかと。少なくともウクライナの人々はそう考えている。これまでウクライナに全く興味が無かった癖に、急にウクライナのことを語りだした日本の左派・リベラル(の一部)の「知識人」よりは、筆者としてもウクライナの人々の率直な感想の方が参考に値する気がする。

 では、なぜNATOのことを声高にプーチン大統領は言及するのか。これも拙著で書いたのだが、実際にNATOの拡大には頭に来ているところもあるのだろうけども、いわゆるハイブリッド戦争の一環でという面もあるかと。つまり、ロシアへの同情を集めるため。実際、日本だけでなく、欧米でも特にリベラル・左派で「ロシア側の主張にも耳を傾けるべきところがある」「欧米はウクライナ支援をするのではなく、ロシアと交渉すべき」との意見が結構ある。ただ、そうした主張こそ、プーチンを最も喜ばせるもので、欧米や日本の世論を分断させようとするプーチンの狙いは、限定的ではあれ成功していると言えるのかもしれない。つまり、日本だけでなく、欧米でも左派・リベラル(の一部)は、反米を拗らせて、思考的・思想的なバグを生じてさせているというわけだ。

 こうした分断が起きる最大の原因は、ベトナム戦争やイラク戦争、イスラエル支援など米国がこれまで無茶苦茶やってきたからなのだろうが、これも拙著でも書いた通り、米国の戦争が許せないからと、ロシアの戦争を正当化するのはおかしい訳で。イラク戦争も、ウクライナ侵攻も、どちらも国連憲章違反の違法な戦争だ。加えて、日本の反戦・平和運動(の全てではないけど)の抱える内向性という問題がある。こちらの記事でも書いたが、極論すれば、彼らにとってウクライナはどうでも良く 日本国憲法、とりわけ9条 が大事なのだろう。

〇屁理屈はいらない、必要なのは真の平和主義

 ただ、読めばわかる通り、日本国憲法前文は日本だけ平和ならそれでいいという内向性とは真逆のものだ。「われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」とあるように、日本が世界の平和のために非軍事で、できることをしていくことは大切なのではないか。例えば、日本の人々が思っている以上に、世界では「ヒロシマ、ナガサキ」はパワーワード。被爆国としての日本のイメージはとても強い。だからこそ、日本の平和主義者達が本当にやるべきことは、「NATOが~」と屁理屈をこねることではなく、プーチンにウクライナで核兵器を使わせないよう、被爆国・日本としてのポテンシャルを最大限に活用することなのだ。それができる素地はあるのに、(一部を除き)日本の政治家も、市民もあまりに他人事だ。

岸田首相も地元が広島であるわけだし、 旧統一教会問題等で支持率が大暴落中なのだから、ここは、キーウに飛んでゼレンスキー大統領と肩を組んで「ウクライナ に対して 核兵器は絶対に使わせない!」と世界各国のメディアの前で大演説ぶればいいのではないかと。起死回生にね。キシだけに。ヘタレの岸田首相が行かないなら、野党でもいいわけで、こういう時こそ、山本太郎さん あたりやってくれないかな、と思ったりしないでもない。とにかく、核兵器を使いづらい状況をつくっていくことは大事。それが出来れば、日本の国際的な評価も爆上がりし、そのこと自体が日本の安全保障にもつながる。何故、圧倒的な軍事力の差がありながら、ウクライナは善戦しているのか。そのひとつに、ゼレンスキー大統領の口の上手さがある。欧米各国のトップらを感動させ、支援を引き出している。そういうソフトパワーの使い方は日本も見習った方がいいかと。「敵基地攻撃能力の保有」とか言って、トマホークミサイルなんぞを米国から買うくらいなら、そのお金で、各国のリーダー達を味方につけられるような、超一流のスピーチライターを雇った方がいいかと。そういうソフトパワーこそ、日本の外交には決定的に欠けている。

〇キープレーヤーは元首相のあの人?

 もう一つ重要な点は、「欧米」以外のキープレーヤーに着目することだ。筆者は中国やインドへの働きかけが重要だと思う。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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