難民であったり家族が日本にいたり等、母国に帰れない事情がある外国人達を、長期拘束(収容)している法務省出入国在留管理庁(入管庁)。その収容施設で深刻な人権侵害が繰り返されていることは、国内外のメディアで数え切れないくらい何度も報じられてきたが、入管庁には全く自浄能力がないようだ。今年4月に東京入国管理局(東京入管)の収容施設で起きた入管職員らによる組織的な女性収容者達への虐待・セクハラ事件について、有志の国会議員達がヒアリングを重ねているものの、入管庁側は事実関係の調査と説明を拒み続けている。

◯「三密」に怯える女性達を力づくで「制圧」

 「なんで、女の場所、男入ってくる?」「体、痛い」「私、ブラジャーとパンツだけ。入管の職員、ビデオやってる(撮ってる)」「入管、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ…」――片言の日本語で女性が訴え、すすり泣く。先月27日、参議院議員会館で行われた「難民問題に関する議員懇談会」による法務省・入管庁ヒアリングで公開された電話録音だ。

 事件が起きたのは、今年4月25日の夕方だった。「三密」状態にあった東京入管の収容施設で、新型コロナ感染を恐れた女性収容者達は、一定の条件のもとで帰宅が許可される「仮放免」についての説明を求めていた。女性達は騒いだり暴れたりすることなく、「私達を解放して下さい」等、メッセージを書いた紙を持って立っていただけだったが、共用スペースから雑居房へと戻る時間となり、そのアナウンス後に入管側は、男性職員を含む警備官を大勢投入。力づくで女性達を雑居房に押し込んだり、「懲罰房」と呼ばれる隔離部屋に閉じ込めたりと、「制圧」を行ったのだという。

◯膝で床に押さえつけ、「遺体袋でしか外に出られない」と暴言

被収容者の家族の証言 国会議員によるヒアリングにて 撮影/モザイク処理は筆者
被収容者の家族の証言 国会議員によるヒアリングにて 撮影/モザイク処理は筆者

 

 問題は、女性達に対し、一人あたり数人がかりで床に押しつけたり、殴打したとの証言もあることだ。当時、収容されていた女性やその配偶者である男性が議員らに伝えたところによると、盾を持った50人くらいの警備官(うち男性は20人ほど)がなだれ込んできたため、当初、20人ほどいた女性達の大半は雑居房に帰室。なおも残っていた5、6人の女性達を、警備官達が抱え上げて床に落としたり、床に倒した女性達を膝で押さえつけたり、首を掴んで壁に押し付けたりしたのだという。女性達の中には、首や背中、足などにアザが出来たり、殴られたりした人もいたのだという。さらに、入管職員達は女性達に「仮放免を待っているなら、許可を与える気はない。それが罰だ」「ここから出る方法は2つしかない。コロナに感染するか、(死んで)遺体袋に入るかだ」という暴言を吐いたとのことだ。

被収容者の家族の証言 国会議員によるヒアリングにて 撮影/モザイク処理は筆者
被収容者の家族の証言 国会議員によるヒアリングにて 撮影/モザイク処理は筆者

◯下着姿を撮影、女性部屋に男性職員が乱入

 また、既に雑居房に帰室させられたコンゴ難民の女性Aさんが着替えているところを入管職員がビデオで撮影した上、雑居房に入って来たため、Aさんが抗議すると、入管職員らは彼女を下着姿のまま雑居房から無理やり連れ出し、懲罰房に5日間も閉じ込めた上、後日、入管職員が「あんたの裸、セクシーだね。皆でビデオで見たよ」とAさんに伝えたのだという。Aさんの精神的ショックは大きく、不眠症を患うようになったとのことだ(電話録音やAさんの弁護士による)。

 これらの証言に対し、入管庁の岡本章警備課長は国会議員によるヒアリングで「法務省法令である被収容者処遇規則第17条の2、第18条に基づく職務執行」であるとして、あくまで適切な対応であったとの主張を繰り返している。その一方で、詳しい状況については「保安上の理由」「被収容者のプライバシー」として説明を拒否する場面が目立った。

東京入管の窓から顔をのぞかせる女性被収容者達 筆者撮影
東京入管の窓から顔をのぞかせる女性被収容者達 筆者撮影

 また、Aさんの事案については、岡本警備課長は「入管職員に対しお湯の入った容器を持って威嚇したために、(懲罰房に)隔離した」と主張。しかし、石川大我参院議員事務所がAさん本人に確認したところによると「着替えていたところ、男性職員が雑居房に入ってきたので『それ以上近づくなら、このお湯を自分でかぶる』と叫んだ」とのことで、入管庁とAさんの主張は大きく食い違っている。

◯自浄能力の欠如、森法務大臣の責任重大

 国会議員達によるヒアリングは、今年4月の虐待・セクハラ事件から既に3回行われているが、議員達が強く求め続けている、当事者の女性達への直接の聴き取りを入管庁は行っていない。あくまで東京入管の職員側の言い分、当日撮影されたビデオ映像のみで、本件を「適切な対応だった」と判断しているのだ。だが、議員達が指摘したように、東京入管の職員達が自身に都合の悪いことを自ら語る可能性は低く、暴行やセクハラを受けたという女性達に入管庁が直接聴き取りしなくては、調査として著しく公平性に欠ける。また、「暴行はカメラに映らないところで行われていた」との証言もあり、入管職員が撮ったビデオだけで本件の全容が把握できるわけでもない。これらの不誠実な対応は、岡本警備課長だけの問題ではなく、法務省・入管庁としての自浄能力の欠如そのものである。

難民に関する議員懇談会による法務省ヒアリング 筆者撮影
難民に関する議員懇談会による法務省ヒアリング 筆者撮影

 入管の収容施設での女性へのセクハラについては、昨年11月8日衆院法務委員会での質疑でも、懲罰房で女性の着替えやトイレを監視カメラで撮影していたことが発覚、森まさこ法務大臣も女性被収容者の処遇を改善すると答弁した(関連記事)。だが、収容施設内での人権状況は改善されるどころか、むしろ悪化しているとも言える。度重なる虐待や自浄能力の欠如―森法務大臣、佐々木聖子入管庁長官の責任は極めて重大だ。入管庁による収容そのものの見直しも問われているのだろう。

(了)

*トップ画像は衆院インターネット中継より筆者がスクリーンショットを撮ったもの。