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食を変えて地球を救おうーなぜアマゾンが破壊されるのか 日本のメディアが報じない本当の理由

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
アマゾン・熱帯雨林 森林火災で大規模焼失(写真:ロイター/アフロ)

 今年の夏、世界に衝撃を与えた、南米アマゾン熱帯林の大規模火災。地球最大の熱帯雨林の危機は、今年8月にフランスで行われたG7サミットでも最重要課題とされたものの、日本では報道の扱いは小さく、また表面的なものばかりであった。そこで筆者は、現地NGOでの活動歴があり南米の環境問題に詳しいエコロジストの印鑰智哉さんを講師に、勉強会を開催した。アマゾン破壊の歴史的経緯や昨今のブラジルの政治的な問題と今回の大規模火災の関係、日本の政財界の関わりなど、日本の報道ではほとんど語られることのない、極めて濃厚な内容であった。印鑰さんとのトークセッションを数回に分けて配信する。

前回↓

https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20191029-00148696/

☆今回配信の記事の主な内容

・鉱滓ダムの決壊で甚大な被害

・700億匹の家畜が大量の穀物と水を消費

・農業を変えて地球を救おう

・アマゾン先住民の奇跡の土

・先住民族達の世界への多大な貢献

・温暖化と生物多様性の危機はセット

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前回からの続き

○鉱滓ダムの決壊で甚大な被害

 

印鑰:

 今、アマゾンでは、森林火災以外の環境破壊を含めて大問題が起きています。例えば2015年、マリアナ鉱滓(こうさい)ダムが決壊しました。このマリアナ鉱滓ダムとは何かというと、鉱山開発をすると鉱山の鉱石以外は必要がないから、どこかに掘ったものを捨てなきゃいけないんですよね。その捨てるものをためておくのが鉱滓ダムといえると思うんですね。つまり地面の中の重金属がいっぱいためられたダムがあるんですけれども、それが決壊しました。これは何かといいますと、これは鉱山のずっとはるかかなたにあるんですね。そこから決壊した有害物質が川を流れて、このように海まで流されてしまったんですね。この2015年、マリアナ鉱滓ダムというのがブラジル始まって以来の環境破壊の事件だと。我々にとって福島第一原発事故みたいなことが起こってしまった。何人死んだかというと、2桁しか死んでいないんですけれども、死ぬ人は少なかったんですけれども、もう先祖代々、ここで漁業をやっていた人が、もうそれができなくなってしまう。つまり生きていけなくなる。そういう人が何百万と出ていると思います。そういった意味で、巨大な問題を起こしたんですけれども。

 それを起こした企業というのは、ヴァーレという半官半民の企業です。そして、この企業は今年1月にブルマジーニョという鉱滓ダム決壊事故を起こして、ここでは228人かな、ぐらいが死んでいます。そして、もちろん環境破壊もすごく起こしているんですけれども。そして、今月1日にもまたこういう鉱滓ダムが決壊すると。こういうことで、有害物質がどんどんアマゾンの中に出ていってしまっている。この2つはミナスジェライス州というセラード地域のものなので、アマゾンではないですけれども、こういう環境破壊が起きている。原油油田がまた事故を起こしたという情報があります。

 このヴァーレという企業は、実は日本ととても深いんですね。日本のお金がたくさん入っています。中でも三井物産はこういうページをつくって、大いに自慢しています。僕はびっくりなんですけれども、こう書いてあります。「ヴァーレ社と三井物産は特に深い関係にあります」。「だったら、責任を取れよ」と言いたいんですけれども、皆さん、東電が福島原発事故で責任を取っていないのと同じように、残念ながら、ヴァーレという会社も被害者に補償をほとんどしていないんですね。このことに対して、三井物産は僕は責任があると思うんです。普通だったら、これは追求されるから、こういうページはなくすんじゃないか、と思ったんですけど、今だに堂々と掲げられています。残念ながら、私たちの関心というのは、僕の力もちょっと及んでいないというところでもあると思うんですけれども。

○700億匹の家畜が大量の穀物と水を消費

 こんなことで、今、今後のアマゾンがどうなるのか。とても悲しいんですけれども、このままではいつ森林が消えるか。もう終わりだろう。将来はない。Lucio Flavio Pinto という人がいるんですけれども、この人はアマゾンに生まれた世界的に著名なジャーナリストです。この人がもうアマゾンには未来はないと。つまりアマゾンの森林はなくなるのがいつか。それが問題であって、なくなることを避けることはもうできないだろう。しかし、アマゾンの森林がなくなったら、これは人類が生き残れるかなんていう問題に僕はなるんじゃないかと思います。

 これに対して、じゃあ、私たちは何をすべきか、ちょっと考えたいんですけれども。一つは、言うまでもなく食を変える。例えば人間が食べているものというのは、必要な水とか食べ物というのは、70億の人口が世界にいますけれども、これが90億になっても、全然、大したことはないんですよね。100億になっても大したことはない。なぜなら、一番問題なのは、この地球には700億の家畜がいるんですね。この家畜のたった2%、つまり14億ぐらいですかね。この牛が飲む水の量が人間よりも、はるかに多いんですね。食料も同様です。家畜に餌を食べさせるために、今の農業、アメリカ大陸の畑はどれぐらい使われているか。例えばブラジルはどれだけの畑を、こういったものをつくるために使っているか。全畑の50%です。家畜の餌をつくるために50%、つまり畑の半分が、人のものをつくっていないんですね。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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