なぜアマゾンが破壊されるのかー日本のメディアが報じない本当の理由

燃え続けるアマゾン熱帯雨林(写真:ロイター/アフロ)

 今年の夏、世界に衝撃を与えた、南米アマゾン熱帯林の大規模火災。地球最大の熱帯雨林の危機は、今年8月にフランスで行われたG7サミットでも最重要課題とされたものの、日本では報道の扱いは小さく、また表面的なものばかりであった。そこで筆者は、現地NGOでの活動歴があり南米の環境問題に詳しいエコロジストの印鑰智哉さんを講師に、勉強会を開催した。アマゾン破壊の歴史的経緯や昨今のブラジルの政治的な問題と今回の大規模火災の関係、日本の政財界の関わりなど、日本の報道ではほとんど語られることのない、極めて濃厚な内容であった。印鑰さんとのトークセッションを数回に分けて配信する。

☆今回配信の記事の主な内容

・アマゾン森林火災をまともに伝えない日本のメディア

・アマゾン破壊の歴史的経緯

・アマゾン破壊と日本の「開発援助」

・水源地セラードの開発と日本

・大豆畑が自然破壊、日本の商社も関与

・新たなセラード開発の危機

・ボルソナーロ政権がアマゾン破壊、日本の対応は?

○アマゾン森林火災をまともに伝えない日本のメディア

印鑰:今回のアマゾンは何が起きているかということなんですけれども、ご覧のように大規模火災が発生しているわけです。これがもう実際にブラジルの国立宇宙研究所の衛星写真、そこから確認されていて、確実にこれはもう「こんなのうそだ」とか日本ではそういう情報が流れましたけれども、うそではないという状態で、非常に多くの森林が既に破壊されてしまっているという現実があります。

 まず、アマゾンはどこにあるのか、ちょっと基本的なことを確認したいと思うんですけれども、アマゾンというのは9カ国にまたがっているんですね。一番大きいのはブラジルなんですけれども、ブラジルの北半分がアマゾンです。ブラジルというと全部、アマゾンと勘違いされる人がいますけれども、アマゾンは北半分になっています。

 特に普通、南半球ですと夏と冬の関係が逆転しますよね。だから、日本が夏のときは向こうは冬のはずなんですけれども、アマゾンは実は違うんですね。アマゾンは7月、8月が乾期なんです。乾期になると雲がなくなりますよね。雲がなくなると暑くなるので、7月、8月がアマゾンの夏になります。そのときは非常に乾燥しますので、暑くなりますし、火災も起こりやすいということになります。

 そして、この間、ずっといろんな情報が流されました。特にSNSなんかでもよく出てきましたけれども「アマゾンの森林火災というのは大して増えていないよ。あんまり変わっていないんだということ」が言われています。そして、これは結構、いつもだったら、まともな報道をする側の海外の通信社などの報道でも、このアマゾン森林火災の原因というのは「地元の農家の野焼きが原因」であると。つまり、地域の農業の問題だみたいなことが、そういう報道がされてしまったこともあります。そして、例えば「報道ステーション」は、びっくりしたんですけれども、アマゾンの森林火災の背景にあるのは中国の動きなんだ。何か中国のほうに責任転嫁するようなこと。確かにこれは中国も関係しているんです。だけれども、日本がどのように関わっているのかを問わずして、中国の問題にしちゃうというのは報道機関として僕はかなり違和感を感じました。

 じゃあ、実際にこのアマゾン森林火災はいつもと変わらないのか、ちょっと見ていただきたいと思います。このグラフを見ていただくと、確かに去年に比べて倍近く増えている。しかし、あんまり変わらないんじゃないのというふうにも見えるかもしれません。これは森林火災の発生数だけ、件数で見ると大して大きな差が見えないんですけれども、ここは森林破壊の面積で見なければ、もうこれは駄目だと思うんですね。

アマゾンで失われた木々 引用先:MONGABAY
アマゾンで失われた木々 引用先:MONGABAY

https://rainforests.mongabay.com/amazon/amazon_destruction.html

 実際にこのグラフを見ていただきますと、これはまだ去年と今年のデータは入っていません。2016年、2017年と急激に上がっていますよね。2016年はどういう年かといいますと、ブラジルの進歩的な政権、大統領だったジルマ・ルセフという人が弾劾で追い出された年なんですね。このあたりから、もう大規模地主、アグリビジネスといったりしますけれども、そういった人たちがアマゾン破壊を急速に強めたというのがこの段階です。

 2016年、2017年では相当増えていまして、まだここでは2018年、2019年のデータがないんですが、こちらのデータを見ていただくと分かるんですけれども、これは2015年、2016年、2017年と比べて大幅に2019年が増えているということがこれで見て取れると思います。ですから、今年のアマゾン森林破壊が大きく進んでしまっている可能性が非常に高いと言わざるを得ないと思います。

○アマゾン破壊の歴史的経緯

 そして、このアマゾン破壊の構造は、非常にアマゾンだけに注目してしまうと見えなくなってしまうんですね。といいますのは、これは幾つもの層があるんです。16世紀頃、この段階のブラジルというのは海岸線にしか存在しなかった国なんですね。そして、内陸は先住民族の地域だった。こういう状態が実はずっと続いたんですね。もちろん徐々に白人が内陸に入っていきますけれども、この中にはこの海岸線上に畑がいっぱいつくられていったと。そして、ここにはアフリカから奴隷貿易で黒人奴隷がたくさん連れてこられて、そこには大規模な農場がつくられました。サトウキビとか、コーヒーとか。コーヒーは後のほうですけれども、そういった大規模農場がつくられていくというのがブラジルの歴史です。

 しかし、その農場は内陸にはなかなか入っていけなかったんです。なぜかといいますと、ブラジルの生態系というのはこんな形になっているんですね。マタ・アトランチカ、アトランチカ森林といわれるは、比較的、農耕に適している、そういう地域です。ここをまず農業開発が進んでいくんですね。それに対して、アマゾン熱帯雨林ですね。そして、セラードというサバンナ地帯がある。実はこの関係がとても大事なんですね。と言いますのは、なぜ、なかなかこの海岸線から出ていくことができなかったのかといいますと、セラードというのは簡単には開発できない。開発を拒むような非常に厳しい、そういう地域だったんです。このセラードという地域は、厳しい乾燥の時期が続きます。雨は一定あるんですけれども、極めて乾燥が厳しいために、なかなか農耕が難しい、そういう地域でした。しかも高原地帯でしたので、なかなか入っていけなかった。

 しかし、ブラジルという国はまずどういう国として発生したかというと、先ほど言いましたように、この海岸線を通じて奴隷労働に基づく奴隷制社会を築きました。この奴隷制は1888年、ほんのちょっと前まで奴隷制廃止前にいた人が生きていた、そういう時代だったんですね。そして、その奴隷制に基づいて、大規模な土地所有に基づく国がつくられました。つまりほんのわずかな地主が数十万ヘクタールを持っている。もう王様みたいな人がいっぱいいる。そういう国といってもいいと思います。

 しかし、奴隷制度が1888年に廃止されて、その後の労働力としてはイタリア人移民とか、日系人移民とかがどんどん入ってきます。そして、そういった人々が自分たちの権利をだんだん主張していくわけですよね。民主化を求める力というのがどんどん強くなります。それに対してブラジルの権力者たちはどう対応したかといいますと、自分たちが持っている土地は手放したくないんですよね。どうしたかというと、こういうスローガンをつくり出したんです。「土地なき人を人なき土地へ」。つまり土地を持っていない貧しい人たちはこの人なき土地へ入っていけばいい。こういう政策だったんですね。つまりセラードやアマゾン、こういう地域にどんどん入っていきなさい。これがブラジルの権力者たちの発想になったわけです。

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