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『週刊朝日』最終号が何と4刷増刷!通常号の2倍以上の発行部数に

篠田博之月刊『創』編集長
『週刊朝日』最終号(同誌提供)

 101年の歴史に幕を閉じることになった『週刊朝日』については前に下記の記事で書いた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20230531-00351837

『週刊朝日』休刊! 編集長「溺れながら息継ぎをするのが精いっぱいだった」

 5月30日(火)に発売された『週刊朝日』6月9日号だが、予想通りというか、予想を超える反響と売れ行きを記録している。表紙を凝りに凝って、昭和のある日の同誌編集部を再現した写真を掲載。それも表1を折り込みにし、広げると表4まで続く写真になっているという表紙だった。日本最古の週刊誌の休刊とあって、新聞・テレビでも取り上げられたことで大きな売れ行きを示している。

発売当日、朝のNHKニュース報道で完売店続出

 まず発売当日、朝7時のNHK「おはよう日本」でニュースとして取り上げられると、大きな反響で、Amazonが数時間で完売、書店でも完売続出したという。

 そして12時頃に増刷が決定した。

 週刊誌は販売期間が短く、増刷をしていたらできた頃には次の号が発売されてしまうということでほとんど増刷はされない。比較的増刷を行ってきたのは『アンアン』だが、同誌はバックナンバーを店頭に置いている書店も多いし、大きな話題になった号は増刷したことによるプロモーション効果も期待できる。

 しかし、そうはいっても、今回の『週刊朝日』のように4刷もの増刷をかけたケースはこれまでなかったかもしれない。4刷に至る経緯を紹介しよう。

発売した週は受注電話が鳴りやまず

 5月30日に話を戻す。

『週刊朝日』 2刷決定。週内は書店、新聞販売店ルートともに受注電話が一日中鳴りやまず。

 5月31日 夕方3刷決定。

 休刊最終号だったため用紙の再確保が大きなハードルとなった。

■2刷 6/5(月)出来

■3刷 6/7(水)出来

 ⇒店着した重版分の売行きが良く、6/15放送のNHK「サラメシ」に備えるため、6月8日に4刷決定。15日放送の「サラメシ」はなかなか面白い番組だった。見逃し配信は下記だ。

https://www.nhk.jp/p/salameshi/ts/PVPP6PZNLG/plus/

「サラメシ」『週刊朝日』最後の校了

4刷合計で発行部数は通常号の2倍以上に

 そして6月16日(金)に4刷が出来あがり。累計発行部数は16万5000部。通常号が7万4000部というから2倍以上だ。次の号はもう出ないから、売れる限り増刷をかけ続けることも可能だ。ただ実際にはこのあたりで一段落ということだろうか。

 休刊が発表された1月以降、渡部薫編集長のもと、『週刊朝日』は自らの休刊を話題にし、メモリアル企画を進行、休刊を祭りにするという方針を掲げてきた。それが話題になって実売はかなり上がっていた。

「お祭り」の最後に大きな打ち上げ花火が

 そこへ最後に打ち上げたのが最終号の様々な企画。101年続いたことにちなんで10I人超の執筆者や関係者から寄せられたメッセージは、なかなか読ませた。同誌に関わった人たちの様々な捉え方が披露され、耳の痛いコメントも少なくなかった。

 例えば吉永小百合さんの「『200年を目指して』と言ったのに」はこうだ。

「昨年2月の『週刊朝日』創刊100周年記念号で、『200年を目指して、ぜひぜひ頑張って下さい』とエールを送ったんですよ。そう言ったのに、という思いでいっぱいです」「発言の場がなくなっていく寂しさを感じます。トップが悪いんじゃないですか。100年も続いた大事な雑誌をやめるなんて」。

 会社幹部にはかなり耳の痛い言葉だ。

 そういういろいろな思いがこめられた最終号。4刷の増刷というのは極めて異例で、お祭り路線の最後に、大きな花火が打ち上げられたという印象だ。

 紙の雑誌の厳しい時代を象徴するような『週刊朝日』の休刊。雑誌界全体にとって他人事とは思えない出来事だ。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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