「キンキーブーツ」3度目の上演発表の衝撃

《この度、ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」は2022年秋、3度目の上演をさせていただくことになりました。》

 突如発表された「キンキーブーツ3度目の上演」という話が、三浦春馬ファンたちに衝撃をもたらしている。もともと「キンキーブーツ」はブロードウェイのミュージカルで、それは映画化もされているが、過去2回、日本で上演された時には三浦春馬さんが主役として意欲的に取り組み、彼の代表作のひとつとなった。1周忌を過ぎてもなお喪失感から回復できずにいる多くのファンたちにとっては、「キンキーブーツ」のローラというのは、春馬さんを象徴するものだ。それがキャストを替えて来年、3度目の上演がなされるというのだ。

 春馬ファンたちの反応は真っ二つに分かれた。

 一方は、まだ春馬さんの死を受け入れることができずにいるのに、別のキャストによる「キンキーブーツ」上演によって大事な記憶を消し去ろうとするのか、という反発だ。もう一方は、春馬さん主演で観れないのは残念だが、春馬さんを偲ぶ意味でも新しい「キンキーブーツ」を観たいというものだ。

 ちなみに公式サイトで発表された企画の趣旨はこうだ。

《多くのご声援をいただいた2019年の再演の後、私たちは3度目の公演にむけて動き出しておりましたが、昨年私たちは大きな存在を失い、一時は公演を断念することも考えました。

しかしながら、これまで日本のキンキーブーツを牽引してくれた三浦春馬さんの思い出と、彼がこの作品に捧げてくれた愛情とともに、私たちは「日本にはキンキーブーツが必要だ」という強い想いのもと、2022年の再再演の歩みを止めないことを決意いたしました。》

 そしてその後にこう書かれている。

《ローラには、今回城田優さんがオーディションに参加してくださり、これまで共に歩んできたブロードウェイチームも城田さんのオーディションムービーを見て、彼のローラでいきましょうと、すぐに連絡をくれました。》

 春馬ファンたちはいまや「春友さん」という呼称で、SNSなどを通じて、様々な交流や活動を行っている。喪失感からの回復をめざすグリーフワークと呼ばれるそうした活動は、いまや大きな広がりを見せているが、その春友さんたちに、このニュースは大きな衝撃をもって受け止められたようだ。

春友さんたちのリアルデモも拡大

 もうひとつ、この1カ月ほど、春友さんたちの間で話題になったことと言えば、各地で繰り広げられたリアルデモだろう。もともと春馬さんの死をめぐっては、自殺との発表に納得せず、真相解明を訴える人、あるいは他殺説を唱える人もいる。6月のアミューズの株主総会でも、真相解明を求めて質問する株主がいて話題になった。

 そうした声はSNSでは流布されていたものの、一方で、確かな根拠もなくそうした声をあげる人に対する反発も春友さんたちの間にあって議論が続いてきた。

 この9月から、それまでSNS上でのことだった真相究明を求める声が、リアルデモという形になることで、事態は新たな段階に入ったと言えるかもしれない。

 SNSを通じて呼びかけられ、その抗議行動の動画がまたSNS上に流れたことで、この動きは東京だけでなく各地に広がっていった。もちろん参加している人が全員、他殺説の立場ということではない。ただ今回の動きが予想外に広がったのは、他殺説とは一線を画する人の間でも、春馬さんの死をそのまま受け入れることができず、もっと詳しい経緯や事情を知りたいという希望があるからだろう。

 このリアルデモはアミューズやTBS前でも行われ、SNS上ではそうした行動に対して、春馬さんはそんなことを望んでいないはずだ、静かに見守るべきだ、と批判する春友さんたちもいる。これもまた春友さんたちの間では波紋を広げつつあるようだ。

 ここに渋谷でのデモに参加した春友さんの報告を紹介しておこう。

《渋谷スクランブル交差点のデモに参加した。アルバイト先のファーストフードの店頭でチラシを配ることすら出来なかった私が、春馬さんの名誉を挽回するために無我夢中でビラを配った。

「真実を明らかに」

 春馬さんは撮影途中のドラマを投げ出すような無責任な人ではない。将来の展望だっていっぱいあった。

 最初は見学のつもりだった。しかし手作りのプラカード、ビラ、春馬さんの写真、垂れ幕、そしてデモを主導する人が拡声器を使って訴えている周りで道行く人にビラを配る春友さんたち。傍観しているわけにはいかなかった。

 新宿西口地下広場では、デモに参加する春友さんの数はさらに増え、お揃いのTシャツを着用してデモに臨んだ。「私もおかしいと思ってた」「頑張って」「応援してるよ」「署名が必要ならするよ」と声をかけられた春友さんもいた。

 あれから1年3カ月。悲しんでばかりではいられない。》

 果たしてこの動きが今後どうなるのか。また多くの春友さんがそれについてどう受け止めるのか。今後も注目していきたいと思う。月刊『創』(つくる)は毎号、多くの春友さんたちの投稿を掲載しているが、発売中の12月号に載せたものには、このリアルデモに言及したものもある。

 『創』に掲載している春友さんの投稿には、現役の僧侶や臨床心理士など様々な人の多様な意見が見られる。概ね50~70代の女性が多いのだが、最近は17歳の女子高生からも感想が届く。そうした投稿とともに、自分の撮った写真や春馬さんを描いたイラストなど様々な思いのこもった作品も届く。それらもできるだけ『創』に、色彩のきれいなものはカラーグラビアを使って紹介するようにしている。12月号にも幾つか掲載したが、そのうちの一部をここにも紹介しよう。

生きるって何なのだろう

●《『創』10月号のファティマさんの記事がコトのほか心に染みた。何故春馬さんのことにこれほど心をえぐられるのか。

 私は終戦記念日に生まれた。戦争がまだ近かった昭和の時分、その日は喜び騒ぐ日ではなかった。ニュースもそのことを真っ先に報道した。誕生日を喜べなかった。だから戦争は身近な存在だった。人の死も。

 幼稚園の頃、同じ苗字のクリクリ頭の男の子が遠足でプラネタリウムを見に行った次の日、登園しなかった。お風呂で亡くなったのだ。浴槽をかき混ぜていなかったので上は熱く下は冷たかったからだった。その後長い間、母はお風呂をよく混ぜろと口をすっぱくして言った。

 小学校3年生の時に仲良くなった女の子。もの静かで、何故か気があった。家では禁止されていた漫画もいっぱい持っていて、よく遊びに行って読ませてもらった。その子も遠足の次の日お休みした。その次も。

 喘息の持病があったので、又調子が悪いのかと思っていたら、夕方母から亡くなったと聞かされ、急いでお通夜に駆けつけた。

 小さな体がお布団の中に横たわっていた。白い布で顔は覆われていた。その姿を和室の隅で正座して眺めていた。

 何も感じられなかった。一体どれ位いたのかも覚えていない。

 翌年、私は引っ越ししてしまい彼女の家族がどうなってしまったのか不明である。が、しかしあれから何十年経っても忘れたことはない。私一人だけ、歳をとってしまった。置いてきぼり。

 そして去年の夏、夢と希望に満ち溢れていると思っていた大好きな人がいなくなってしまった。この1年、記憶が所々無い。心はずっと傷んだままである。毎日のように涙が出てどうしようもない。

 生きるって何なんだろうか。生きる意味がわからなくなった。

 愛する人がいない世界でどうやって生きていくのか。》(Akiko 54歳)

ロス在住の春友さんが10月末の「死者の日」に春馬さんの思い出を飾った(Akikoさん提供)
ロス在住の春友さんが10月末の「死者の日」に春馬さんの思い出を飾った(Akikoさん提供)

 このアメリカ在住の女性は投稿と一緒に写真も送ってきたので、それも紹介し、写真の説明も寄せていただいた。

《この度私の作った祭壇を紹介していただけることになり、簡単に説明をしておきたい。

 ここ、ロスアンジェルスはその名の通り元々メキシコ領であった。そのため、あちらの文化が色濃く根付いている。死者の日とは日本のお盆と同じ意味合いを持つ。亡くなった人の魂が10月31日の真夜中に天国の門が開き帰って来る。祭壇を準備し、旅の喉の渇きを癒す水、好きな食べ物、ろうそく、この時期に咲くマリゴールドの花、紙で切り抜いた旗、そして写真を飾る。砂糖でつくられたガイコツも。

 懐が深いと思うのは祭壇は自分の家族の為だけではないこと。映画リメンバーミーを観た方には馴染み深いはず。この文化が日本でも根付いたらどんなに良いだろうか。》

私の心の中でずっと…ずっと…

●《私が三浦春馬さんを知ったのは、「ラストシンデレラ」「僕のいた時間」のドラマを毎週楽しみに観た時で、なんて演技の上手な俳優さんなんでしょうと感動したのを覚えています。

 子育てに追われた30代、毎日が必死でその後の三浦春馬さんのご活躍に触れずに時が経ってしまいました。

 昨年7月18日のあの日、娘からの知らせにより、心に衝撃が走りました。突然、三浦春馬さんの「ラストシンデレラ」「僕のいた時間」のドラマの映像が頭に浮かび、私はとてもとても三浦春馬さんが好きだったことを思い出しました。私は三浦春馬さんが大好きだった! 子育てに追われていた自分が情けなく、春馬さんのご活躍をずっと応援し続けられなかった後悔と悔しさがどんどん増していきました。

 あの日から、毎日毎日春馬さんのご活躍をネットで調べ、ドラマや映画を見返して、春友さん方が投稿されている情報を観ては、春馬さんに何も出来なくて、ごめんなさいという気持ちが溢れてきました。

 春友さん方のアクティブな活動を拝見する度に、もともと友達を作るのが苦手な私にとって、自分からアクションを起こせないのが情けなく、自分自身が嫌になりました。この心の内を誰にも言えず、とても悲しいのに、心の中に閉じ込め、思い切って泣きたいのに、どうすることもできない自分が1年以上続いています。

 私は、長年乳幼児教育に携わっていまして、受け持った子供たちを平等に愛することを誓って、約25年一本の道を貫いております。心の中は、ボロボロですが、子供たちを前にすれば笑顔の毎日、一生懸命、誠実に子供たちと関わっていますし、家族のためにも一生懸命尽くしています。現実と心の中のギャップが、本当は辛くて辛くて悲しくて悲しくて……。

 ある日、数少ない友人rikosaramamaさんに、ふと三浦春馬さんが亡くなったことに、とても悲しくて…と勇気を出して伝えました。話をしてみますと、「同じ気持ちだよ。わかるその気持ち。未だに春馬くんの映像が観られないのよ」と、身近な友人も春馬さんに対する気持ちを抱え、日々を懸命に生きていることに救われました。その友人が、ある日渡したいものがあるというので袋の中をみてみますと…笑顔溢れる、私に語りかけてくれる春馬さんの絵が!!  絵を観た瞬間に今まで我慢していた涙が溢れてきました。

 春馬さんに対する想いと、そして友人の心のこもった春馬さんの絵に、心が救われました。私の家族も春馬さんに見入って感動してくれました。

 春馬さんの絵は、玄関に飾り、毎日毎日、春馬くん行ってきます! 春馬くんただいま! と言い、私の苦しい心から抜けだせるよう、声をかけ続けています。

 私は、春馬さんのような誠実で一生懸命で、仕事に対する熱い想いを決して忘れることなく、未来の子供たちに対しても同じように関わり、人生を全うしたいと思いました。》(愛知県  美蓮 48歳)

春馬さんを描いたペン画(rikosaramamaさん提供)
春馬さんを描いたペン画(rikosaramamaさん提供)

 この美蓮さんの投稿がきっかけになって、友人の女性が描いた春馬さんの鉛筆画など2枚を『創』12月号のカラーグラビアに掲載させていただくことになった。そのうちの1枚を本人の了解を得て、ここにも紹介したい。

YouTube配信「ほっこりカフェ」の取り組み

 『創』でも何度か紹介してきたミュージシャン堀内圭三さんがYouTubeで日曜と火曜夜9時過ぎから配信している「ほっこりカフェ」は、春友さんたちの交流の場として盛り上がっている。この11月には東京でオフ会も開かれる予定だし、12月にはその名もずばり「ほっこりカフェ」というCDが発売される予定だ。堀内さんが作詞作曲した、春馬さんの誕生日を歌った「4月5日」などが収録されているという。

「ほっこりカフェ」ライブ配信写真(堀内さん提供)
「ほっこりカフェ」ライブ配信写真(堀内さん提供)

 CDの中のライブ配信している写真には、『死を超えて生きる人』(創出版刊)を立てていただいているという。

 『創』が徳島在住の春友さんと一緒に企画した「藍染めプロジェクト」は好評のうちに終了したが、その最後の1組の藍染めを11月9日の配信で紹介していただいた。春友さんの心配りで、藍染めはパッケージ自体が素晴らしい出来なのでそれを開封するところから動画で春友さんたちに見せていただこうという取り組みだ。夏に実施した「藍染めプロジェクト」はたくさんの方に応募いただいたが、数に限りがあるため抽選漏れの方も多かったので、その方たちに動画で見てもらおうという思いもあった。

 「ほっこりカフェ」の動画は配信後にもYouTubeで見られるから11月9日配信の動画にアクセスして観ていただきたい。藍染めをやってくれた徳島の春友さんも視聴し、チャットで他の春友さんと交流するというなかなか感動的な内容で、藍染めを開封した時の堀内さんのリアクションや感想も感動的だった。

https://www.youtube.com/watch?v=6N-EwGNayOA

「三浦春馬応援プロジェクト」のモザイクアート

 そのほか『創』12月号には「三浦春馬応援プロジェクト」のすごい映像なども紹介させていただいている。ローラの画像に見える無数の点が拡大されると何とその一つ一つが春友さんたちが持ち寄ったキャンドルの写真で構成されているというすごい動画。つまり春友さんの持ち寄ったキャンドルの写真を集合させてローラの像に仕上げているというすごワザで、モザイクアートというのだそうだ。

 百聞は一見にしかずなので、下記から「三浦春馬応援プロジェクト」のホームページに実際にアクセスしてご覧いただきたい。

https://www.haruma-cheering.net/

 今後も『創』誌面でも、またこのヤフーニュースでも、春友さんたちの取り組みを紹介していこう。春友さんたちのグリーフワークはSNSを通じて大きな活動となって広がっている。これは今までになかったような社会的な動きになっており、なぜこれがこんなに大きな広がりとなったかも含めて考えていきたいと思う。

 『創』は毎月、20日頃が締切で、それまでに届いた投稿は翌月7日発売の号に掲載可能なので、今後もぜひ投稿を寄せてほしい。

mail@tsukuru.co.jp

『創』12月号の内容については下記をご覧いただきたい。

http://www.tsukuru.co.jp/