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和歌山カレー事件・林眞須美死刑囚からの手紙

篠田博之月刊『創』編集長

2014年7月16日、和歌山カレー事件・林眞須美死刑囚からの手紙が届いた。といっても確定死刑囚は弁護士と家族以外、基本的に接見禁止だから、私のもとへは家族経由だ。林眞須美死刑囚の獄中手記などをまとめた『和歌山カレー事件 獄中からの手紙』(創出版刊・定価1000円+税)が15日に発売されたのだが、その本を手にした感想を書き送ってきたのだった。

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7月19日(土)14時からは「エルおおさか708号室」で毎年恒例の和歌山カレー事件を考える集会が開催される。事件が起きたのは1998年7月、今から16年前だ。眞須美さんの死刑は確定したが、この事件はいまだに真相が解明されていないばかりか、昨年来、ヒ素鑑定をめぐって大きな疑問が噴出した。弁護団は再審請求のなかでそうした数々の疑問を提示している。

今回の本はその7月19日の集会で私が「『創』編集長が語る和歌山カレー事件」という報告を行うのを機に出版したものだ。98年10月4日の逮捕の朝、警察が林家に踏み込む直前に、長女が母親に「ほんまはどっちなん?」と真相を尋ねるシーンなど、当事者の証言が収められている。この本は、眞須美さんの強い希望で真っ赤なカバーと表紙にした。「真紅」というのは、眞須美さんが死刑判決などに対して抗議の意志を示す色で、高裁・最高裁などの判決の日にも、彼女は真紅の衣服を身に着けた。

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きょう届いた眞須美さんの手紙の中で「パパ」とあるのは夫の健治さんでなく、実は彼女はこの春、支援の男性と養子縁組したのだ。確定死刑囚が外部と細い糸を確保するために養子縁組するのは、比較的よくあるケースだ。19日の集会では、この養子縁組した男性に眞須美さんの近況について話していただくし、弁護団報告はもちろん、支援する会代表の鈴木邦男さんら大勢の関係者が駆けつける。健治さんもぜひ参加してほしいと声をかけているが、この暑さで体調がすぐれないため当日どうなるかわからない。死刑について、カレー事件について関心のある人は、ぜひ19日の集会に参加してほしい。詳細は下記の「林眞須美さんを支援する会」のホームページをご覧いただきたい。

http://masumi-shien.com/

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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