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オウム麻原元教祖四女が告白した自殺未遂事件

篠田博之月刊『創』編集長

平田信被告の裁判が始まり、再びオウム事件が注目を浴びている。月刊『創』3月号(2月7日発売)にはオウム麻原元教祖の四女が登場。昨年末に線路に飛び込み、6分間も電車を止めたという自殺未遂事件を告白している。彼女に会ったのは約4年ぶりだが、その間、何度も自殺未遂事件を起こしていたことも今回知った。

松本家の家族とは、これまで何度も会って話を聞いているが、家族関係はなかなか複雑だ。現在、教団アレフに隠然たる影響力を持っているのは三女だが、四女はこの三女と対立。家族がいまだに教団と関わっていることに反発して家を出、その後は独り暮らしをしている。

今回の告白は「『松本智津夫の娘』という呪縛」と題するものだが、自殺未遂も含めて、まさに彼女の生き方は、その呪縛との葛藤だ。例えば、家族を離れて自活しようとしているのに、「松本智津夫の娘」であることがわかっては仕事先をクビになるということの繰り返し。なかにはクビにするにあたって、そういう理由でクビにしたことを内緒にしてほしいと口止め料をくれた職場もあったという。

彼女自身は松本家に反発し、むしろその家族の一員であることに責任を感じているのだが、世間はそんな彼女をも「松本智津夫の娘」としてしか見ない。そのことが彼女を精神的に追いつめ、自分はもう死ぬしかないと思い込ませているらしい。

私は三女とも、彼女が13歳の時から何度も会って話を聞いているのだが、彼女とてある意味では「松本智津夫の娘」という呪縛に囚われているとも言える。二女も三女も、一時期、精神的に不安定になったと自ら語っていた。

オウム事件は、裁判としては概ね片付き、幹部らには死刑判決が確定しているのだが、その事件が日本社会に残した傷跡は、まだ大きく口をあけたままだ。

事件から20年たって、ある意味では風化しつつあるとも言われるオウム事件だが、その風化のいびつなありようについては、『創』3月号では、森達也さんも言及している。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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