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韓国プロバスケから「身長2m以上はダメ」の衝撃ルールが早くも廃止される理由

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ/bj-league)

導入時から韓国で波紋を呼んだKBL(韓国プロバスケットボールリーグ)の新ルールが、1シーズンで廃止されることになった。外国人選手の身長を200cm以下に制限するというものだ。

身長2m以上はダメ

KBLは今季から外国人選手の身長制限を厳格化。それまでの「外国人選手2人のうち1人は193cm以下」から、「1人は200cm以下、もう1人は186cm以下」に改定した。

このルール改定によって、昨季KBL得点王に輝いたデビット・サイモン(KBC人参公社)や、プレーオフでMVPに輝いたテリコ・ホワイト(ソウルSKナイツ)らが今季開幕を前に韓国を去っている。

それだけにこの新ルールには反対の声も多く、昨年10月の今季開幕後も賛否両論は絶えなかった。スポーツ紙『スポーツソウル』も、「韓国プロバスケ新ルールの功罪」と題した特集を組み、さまざまな問題点を指摘していた。

(参考記事:“身長2m以上はダメ”韓国プロバスケ新ルールの功罪「韓国ビッグマンの活躍も笑えない」

そんな新ルールが、2月11日に開かれたKBL臨時総会・理事会で廃止されることが決まった。来季からは身長制限が全面廃止されるという。

シーズン開幕からわずか4カ月での廃止決定には、韓国メディアも驚きを隠せない。「プロバスケ、選手の身長制限を電撃廃止」(『中央日報』)、「KBL、またしても変わった外国人制度“身長制限を廃止”」などと報じられている。

それにしても、なぜ突然、身長制限が廃止されることになったのか。

美女選手は話題になるが…

その背景にはKBLの苦しい状況とも関係している。韓国でバスケ人気が落ち込んでいるわけではない。最近も“世界で最も美しい女子バスケ選手”などが複数のメディアで取り上げられて話題になった。

(参考記事:世界で最も美しいイタリアのバスケットボール選手の美貌とは?

“コートの華”として会場を彩り盛り上げる各チームのチアリーダーも話題になる。

ソウルSKナイツのチアリーダーであるアン・ジヒョンなどは、K-POPガールズアイドルのソルヒョンに似ているということから人気がブレイク。「チアリーダーとしてデビューして1000日」になったということもニュースになる。

だが、肝心のKBLのほうは「リーグ存続の危機」とも言われてしまうほど人気獲得に苦戦している。

KBLの観客数は2014-2015シーズンから右肩下がり。2017-2018シーズンの観客動員数は計75万4981人(KBL発表)で、前年比9.3%も減少。1試合の平均観客数は2796人で、平均3000人未満は1997-1998シーズン以来の出来事だったのだ。

そんななかで韓国人選手の活躍度を高め、スピード感のある試合展開で観客を楽しませようとして設けられたのが身長制限の新ルールだったわけだが、それも効果はなかった。

むしろ観客数は落ち込んでおり、1月20日に行われたオールスター戦などは、観客数が歴代最低の5215人を記録していた。

しかも、同日には“冬の2大スポーツ”と並べられてきたプロバレーボールのオールスター戦が満員を記録していたのだから皮肉だろう。

ファンの多い美女バレー選手や人気女子アナウンサーのオ・ヒョジュが登場したこともその一因だろうが、この対照的な結果にKBLがショックを受けたことは想像に難くない。

(参考記事:“Vリーグ女神”に“美人姉妹”、日本との因縁も。韓国美女バレー選手ベスト6を一挙紹介【PHOTO】

そんな状況を受け、前出のようにバスケファンからも批判の声が続出。KBLが「ワイド・オープン」をスローガンに掲げ、ファンの意見に耳を傾けることを宣言しているなか、身長制限のルールも廃止することになったと報じられている。

いずれにしても、KBLで全面廃止されることになった身長制限。

来季からは身長制限がない代わりに、外国人選手の出場時間制限などが厳格化されるというが、KBLは人気を回復することができるだろうか。個人的には、頻繁なルール改定がむしろ混乱を生んでしまわないか心配でもあるが、はたして……。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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