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大河ドラマにラブコメまで?どんな日本のテレビ番組が韓国で人気なのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ドラマ『グッド・ドクター』も放映(素材提供=チャンネルW)

日本のドラマやバラエティ番組などを専門的に扱う韓国のケーブルテレビ局“チャンネルW”。2014年に社名を現在の“チャンネルW”に変更して以降、実にさまざまな日本のテレビ番組を取り扱ってきた。

放映される番組の選定方法やその審査基準、さらには字幕入れなどの制作過程については前回のインタビューで紹介したが、同局がこれまで放映してきた中でどんな作品が人気があったのだろうか。韓国視聴者たちの反応や好みの傾向を知るためにも、興味があった。

――これまで数多くの作品を放映されてきたと思うのですが、韓国ではどのようなジャンルが好まれていますか。

「ラブコメディが強いです。日本で大ヒットした『逃げるは恥だが役に立つ』は、韓国でも大好評でした。その次に『ドクターX』や『コード・ブルー』といった医療ドラマそして『孤独のグルメ』『深夜食堂』のようなグルメドラマが定番の人気です。また、『忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣~』のような時代劇や、大河ドラマも人気ですよ」

(参考記事:韓国のテレビ関係者に聞いた、韓国で人気の「日本ドラマBEST 5」は?)

――時代劇が人気なのはちょっと意外ですね。チェ理事が思う日本コンテンツの魅力はなんでしょうか。

「個人的な話になりますが、私が初めて触れた日本のコンテンツは1997年に大学映画祭で観た、岩井俊二監督の映画『ラブレター』でした。今思えば、完全な著作権法侵害でしたが(笑)。とにかく、映画のセンチメンタルな雰囲気に魅了されつつも、韓国と日本の似たようで違う文化が伺えて新鮮でした。

――最近は日本ドラマが韓国でリメイクされることも多くなりました。そうした流れについてはどんな感想をお持ちですか?

(参考記事:【2019年版】韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。えっ、あのドラマまで!?)

「韓国では昔、テレビ局のプロデューサーになったらとりあえず日本に行かされせたと先輩に聞いたことがあります。日本のテレビ番組からインスピレーションを感じたり、ヒントを得ようという動きですね。昔ほどではないてすが、今もそういった試みは続ていると思います」

――ただ、日韓のコンテンツ交流が進む中で、どうしても論争が起きてしまうのが“パクリ疑惑”です。昨年も『逃げるが恥だが役に立つ』の似ているとして『この人生は初めてなので』が論争を呼びました。

「確かに。ただ、バラエティ番組の場合、実際に今も両国には似たような番組が少なからず存在していて、例えば『一食ください(原題)』(JTBC)と、チャンネルWでも放送中の『家、ついて行ってもイイですか』(テレビ東京)は芸能人が素人の家を訪問するという大まかなコンセプトが同じです。

ただ、『一食ください』はユーモア重視で軽い展開が多い一方、『家、ついて行ってもイイですか』は深い会話を通じて人間性や感動を引き出すところが印象的でした。

このように、日本のコンテンツを通じて韓国と似て異なる意外な部分を発見できるのが、魅力のひとつだと思っております。『孤独のグルメ』の韓国出張編などは、そういった両国の良さが表現されたのではないかと思います

(参考記事:異様に盛り上がった『孤独のグルメ』韓国ロケ。秘蔵写真で振り返るエピソード)

――その魅力を韓国の方々に伝える役割をチャンネルWが担っていると思いますが、チャンネルWが目指しているものは何ですか?

「実は、韓国で日本のドラマを放映するチャンネルは2つあります。我々『チャンネルW』と、『チャンネルJ』です。

正直に言えば、チャンネルJのほうが先に開局したため知名度の面では上ですが、Jは韓国の放送通信委員会に登録されているジャンルが“ドラマ”で、韓国と日本のコンテンツを混用して編成しているんでね。

一方の我々Wは韓国で唯一“日本文化”で登録されているうえに、『今日の日本』など自主制作番組を通じて日本文化やイベントの情報も提供するなど、韓国で日本関連コンテンツをもっとも多くサービスしていると自負しています。

韓国で“日本文化”といえば、少数のオタクが享受するマイナー文化というイメージがいまだに残っているのですが、今はより多くの大衆に日本のコンテンツを見ていただくことが大事です。

そこで、インターネット上の違法ファイルを探さなくても、チャンネルWを通じて日本の番組を見られる環境がやっと整ったところなんです。

実際に、“チャンネルを回すうちに偶然日本のドラマを見たけど面白かった”という感想も寄せられているんですよ。今後も、より多くの韓国視聴者たちが日本のコンテンツや文化に触れられるよう、サポート役として頑張りたいと思っております」

――少しセンシティブな話になりますが、歴史・政治的な問題と切り離せないのが韓国と日本だと思います。その点において、何か思うところはありますか。

チャンネルWのキム・ヒョンジュン理事(著者撮影)
チャンネルWのキム・ヒョンジュン理事(著者撮影)

「それこそ、歴史や政治的問題によって遠く離れた両国の距離を、文化を通じて縮めようという理念のもとに設立されたのが、我々チャンネルWです。日本文化を韓国に伝える窓口として、初めは受け入れやすいドラマやバラエティ番組を、いずれ韓国に進出した日本企業や日本の文化を紹介するための活動を紹介し、好感を持ってもらえる環境作りに尽力しています。

どの国も自国に有利な方向に世論を形成する傾向があると思いますが、チャンネルWではニュートラルな立場に立って事実のみを伝え、視聴者側に解釈をお任せしています。今すぐにとは思いませんが、徐々にお互いの溝が埋められると信じています」

――最後に、チャンネルWのビジョンを教えてください。

「今後は、より大きな規模の日韓共同企画番組を制作したいと強く思っていますので、日本のテレビ関係者の皆さん、ご連絡お待ちしております(笑)。

また、最近は1つの作品に対して原作はもちろん実写ドラマや映画化のようにマルチな展開が行われますが、それらもすべて楽しんでもらえるよう、まずは出版社との業務提携も始めました。韓国における日本コンテンツの中心部であり、韓国最大の日本コンテンツ専門チャンネルとして、ずっとご愛顧いただければ幸いです」

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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