小栗旬と石原さとみ主演ドラマが韓国でリメイク放映。その企画意図にあるものとは?

ドラマ『リッチマン』(韓国ケーブルテレビ局Dramax公式サイトより)

昨日5月9日、韓国では『リッチマン』という新作テレビドラマがスタートしている。主演を務めるのは、K-POP人気グループEXOのメンバーであるスホ(演技活動は本名のキム・ジュンミョンとして行っている)と、若手女優ハ・ヨンス。

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スホは日本でもその名が知られているが、ハ・ヨンスについて少し触れると、彼女はかつて日本のヴィッグ会社のモデルも務めたことがある経歴の持ち主だ。もともとフィッティングモデル出身だが、今では若手女優として人気急上昇中にある。

そんなふたりが共演することもさることながら、このドラマの注目ポイントはもともとは日本ドラマのリメイクだということだろう。

実はこのドラマ、2012年にフジテレビ系で放送された月9ドラマ『リッチマン、プアウーマン』のリメイクなのである。

主人公が財閥2世ではないことが「斬新」

日本では小栗旬が主演を、石原さとみがヒロインを務め、連続ドラマ終了後も根強い人気を誇って続編の性格を担ったスペシャルドラマも放送されたが、『リッチマン、プアウーマン』は韓国の日本ドラマ・ファンたちの間でも有名だった。

日本ドラマ・ファンたちが集まるネットコミュニティでは「おすすめ日本ドラマ一覧」などにかならずそのタイトル名が挙がるほどで、スピーディーな展開や登場人物の関係性などが韓国ドラマとよく似ていながらも、主人公が“財閥2、3世”ではなく、“自力で成功した敏腕起業家”という設定が韓国人の目からすると「斬新に映った」(韓国の日本ドラマ・ファン)という。

韓国では最近も“水かけ姫”など財閥ジュニアの問題が噴出しているが、小栗旬演じたNEXT INNOVATION代表の日向徹は、韓国人の目には新鮮に映ったのかもしれない。

日本ドラマが韓国でリメイクされたケースは多いが…

ただ、だからこそ韓国の日本ドラマ・ファンたちは『リッチマン』のリメイク発表直後から、ちょっぴり複雑な感情を拭えなかったはずだ。リメイクは嬉しいが、期待外れに終わってしまうことへの不安があったのだろう。

実際、韓国ではこれまでも多くの日本のドラマや映画がリメイクされてきたが、数字面(テレビなら視聴率、映画なら観客動員数)では不振に終わった作品は多い。

例えば“ジウ姫”ことチェ・ジウが主演を務めた『家政婦のミタ』や、『のだめカンタービレ』、『深夜食堂』などのリメイク作は、原作の高い人気を背負ったものの、視聴率が振るわず残念な結果に終わってしまっている。

(参考記事:韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。最近はあのドラマまで!?)

そういう苦い経験があるからこそ、韓国の日本ドラマ・ファンたちは日本ドラマのリメイクを無条件で歓迎できない部分も少なからずあるのだ。

むしろ日本ドラマと似ているようなキャラクター設定や物語をなぞった韓国ドラマが出てくると、猛烈な拒絶反応を示すこともある。

昨年秋にケーブルテレビ局tvNで放映されたドラマ『この人生は初めてなので』が良い例だろう。ストーリーや登場人物のキャラ設定が、どこか『逃げるが恥だが役に立つ』に似ていたことから、何かと論争が絶えなった。

(参考記事:大ヒットドラマ『逃げ恥』のパクリ疑惑が持ち上がった韓国の人気ドラマとは?)

ローカライズ(現地化)が成功要因

ただ、最近は日本のドラマや映画のリメイク作品が、一定の成果を残しつつもある。今年だけでも映画では『ゴールデンスランバー』や『いま、会いにゆきます』、『リトル・フォレスト』、ドラマでは『Mother』などが韓国でリメイクされているが、それなりに評価は高い。

特に『いま、会いにゆきます』と『リトル・フォレスト』は、リメイクするにあたって手を加えたローカライズ(現地化)の度合いや作品の完成度、俳優陣の演技などが好評を博し、オリジナル版が韓国で再上映されているほどである。

特筆すべきは、こうした成功例を刺激と参考にしながら『リッチマン』もさまざまな工夫を凝らしたという点だ。

先日の制作発表会でミン・ドゥシク監督は、「基本設定はオリジナルを踏襲しているが、オリジナル版には主要登場人物3人の三角関係に関する描き方がやや足りなかった。もちろん、オリジナル版の設定は尊重するが、描き切れていない部分も多かったので、韓国リメイク版ではその部分を補強した」と、韓国に合わせた“現地化”の味付けを加えたことを明かしている。

オリジナルの世界観を維持しつつ、韓国に合ったテイストを補強してローカライズ(現地化)させる。これが韓国におけるリメイク成功の法則になりつつあるのかもしれない。

坂口健太郎主演『シグナル』は韓ドラのリメイク

と同時に、視聴者たちに媚を売るような露骨なローカライズに走るのではなく、オリジナルの良さや世界観を壊さぬような意識も高まっているようだ。

ミン・ドゥシク監督も、「登場人物の性格の組み合わせはオリジナルのままにしようと努力した」と本家本元へのリスペクトを口にしているし、主演を務めるスホも、「オリジナル版をたくさん見た」と語っている。そのうえで「スティーブ・ジョブズの天才的で神経質な姿を分析し、自分が演じるキャラクターに反映させている」らしい。

「実は石原さとみの大ファン」と告白したヒロイン役のハ・ヨンスに至っては、「石原さんが演じるオリジナル版のキャラクターとどう差別化していくか、たくさん悩んで監督と相談を重ねています」と語っていたほどである。

オリジナル版へのリスペクトと、そのオリジナル版とは異なる新しい可能性を模索していくこと。そんな作り手たちの気概を感じさせる言葉でもある。

現在、日本では韓国でヒットしたドラマ『シグナル』のリメイク版が坂口健太郎主演で放映されているが、日韓でリメイク作の成功事例が増えつつある今、『リッチマン』もその一つとして語られる作品になるだろうか。

(参考記事:坂口健太郎主演の『シグナル』に『グッド・ドクター』。世界で韓国ドラマのリメイクが続く理由)

今後のストーリー展開や視聴者の反応にも注目しながら、日韓リメイク交流の今後に期待したい。