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イ・ボミ棄権でも韓国が「羨ましい」とした日本女子オープンのすごいところ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
前回王者として出場したチョン・インジは最終的には4位タイに終わった。(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

史上初めてアマチュアによるメジャー制覇となった『日本女子オープン』。高校3年生・畑岡奈紗が成し遂げた快挙は、お隣・韓国でも報じられている。

韓国ではプロツアーで優勝したアマチュアのことを「プロを食らうアマ」と称し、これまでも多くのスーパー女子高生が誕生してきたが、アマチュアのメジャー制覇は2004年のパク・フィヨンなど数多くないだけに、畑岡の快挙には感嘆を隠せないのだろう。

ちなみにKLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)ツアーでは週末、韓国女子ゴルフ界の英雄パク・セリの名を冠した『OK貯蓄銀行パク・セリ インビテーション』が行われ、キム・ミンソンが制している。

キム・ミンソンは“韓国美女子ゴルファー神セブン”には選ばれていないものの、身長176センチの長身で、ドライバーの平均飛距離は270ヤードに及ぶことから“飛ばし屋美女”と呼ばれている。

今年はKLPGA広報モデルにも選ばれている。韓国では女子プロゴルファーとして生き残るためには、実力だけではなく容姿やルックスの良さも求められるが、その条件を揃えたニューフェイスと言えるだろう。

そんなキム・ミンソンの優勝報道にも負けない記事量で『日本女子オープン』が韓国でも報じられているのは、韓国人選手の活躍が期待されていたからにほかならない。

特に昨年度チャンピオンとして『日本女子オープン』のフゥアウェイに立ったチョン・インジついては来日から予選ラウンド、最終日のスコアまで詳しく紹介された。『世界日報』などは、「チョン・インジ、日本オープンのタイトル防衛に失敗」と無念さをあらわにしたほどだ。

また、昨季日本女子ツアー賞金女王のイ・ボミが初日を終えてまさかの棄権。8週連続の試合出場の疲労が原因であることはわかりつつ、大会前からチョン・インジとの競演に注目が集まっていただけに出鼻を挫かれた格好でもあった。

もっとも、日本女子オープンの凄さに改めて敬意を払うメディアは多い。「日本女子オープンから学ぶべきゴルフの三つの教訓」という記事を掲載した『ヘラルド経済』も、次のように評していた。

「日本のナショナルタイトルでありメジャー大会である日本女子オープンには、我々韓国が学ぶべき三つの教訓がある。ひとつは伝統に対する尊重、二つ目は大会の歴史を記録する姿勢、最後はアマチュアやジュニアゴルファーをプロゴルフに融合させる心だ」

同メディアが取り上げているのは、日本女子オープンが歴代チャンピオンを招いた“チャンピオンズ・ディナー”を開催していること。韓国からもチョン・インジと李知姫が参加したことを紹介しながら、「伝統と重視しチャンピオンを優待する風格がある」と絶賛した。

また、韓国では選手たちのSNSなどが活発だが、大会特設サイトを展開しているところは皆無なこともあって、日本女子オープンが大会特設サイトを独自に運営していることも高く評価している。

何よりも「学ぶべきだ」としているのは、今回の日本女子オープン出場者120名中、アマチュアが全体の25%になる31名もいたこと。

その中には10代の選手も多く、「プロだけではなく若い有望株やアマチュアたちも参加できる機会を与えることが、ナショナルタイトルを担う未来の世代たちを考慮した配慮だろう」と評価した。

そうしたうえで、「歴史を尊重し、未来を見つめる“深謀遠慮”の精神がゴルフ大会に染み込んでいて誠に羨ましい」と結論づけていた。

いずれにしても今回の日本女子オープンは、チョン・インジらの出場で韓国でも注目が高かった。そんな注目が集まる中で、畑岡奈紗というスーパーアマの快挙も目の当たりしただに、韓国ゴルフ界に与えた影響は間違いなくあったことだろう。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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