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欧州組も強行招集へ!? 韓国のリオ五輪OA枠は誰になりそうなのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
AFC U-23選手権では日本に敗れ、守備の脆さを指摘された韓国リオ五輪代表(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

リオデジャネイロ五輪まで100日を切った今、男子サッカーで話題になっているのは各国のオーバーエージ枠の活用だろう。オリンピック男子サッカーは予選ではU-23世代で争われたが、本大会では24歳以上のオーバーエ-ジ(OA)選手を3名まで登録することができる。日本はその人選がまだ固まっておらず、期待されている欧州組の招集は難しいと判断しているようだが、韓国はどうか。

4月26日にオリンピック100日前となる4月26日に記者会見を開いた韓国五輪代表のシン・テヨン監督は、「現時点では明かせないが、5〜6名はチェック済みだ」と明かしている状態だ。すでに1枠は決まっている。3月の時点で内定したのは、イングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーに所属するFWソン・フンミンだ。A代表でも主力のソン・フンミンは“韓国代表の若きエース”とされる逸材で、U-23韓国代表は“コルチャギ(谷間)世代”と言われているだけに、ある程度は予想できた抜擢でもあるが、その起用は1月のU-23アジア選手権の時点で決まっていたという。

(参考記事:OA枠にソン・フンミン!! 日本に衝撃敗戦した韓国リオ五輪代表の現在

気になる残り2枠は守備陣で固められそうだ。シン・テヨン監督も「守備のほうに念頭を置いて5〜6名をチェックしている」という。現在の韓国代表守備陣は、ホン・ジョンホ(アウクスブルク)、キム・ヨングォン(広州恒大)、キム・ギヒ(上海申花)、クァク・テヒ(アル・ヒラル)、キム・ジンス(ホッフェンハイム)、キム・チャンス(全北現代)、パク・チュホ(ドルトムント)、チャン・ヒョンス(広州富力)などが定番メンバーだが、彼らの大半が「5〜6名」の中に入っている可能性は高いだろう。

では、この6名の中で誰が有力なのか。以前なら「兵役の未修」がひとつの参考になった。というのも、成人男子に兵役義務がある韓国ではオリンピックでメダルを獲得すれば兵役免除になるため、兵役問題を抱えていたパク・チュヨンが選ばれたことでもわかる通り、兵役問題をクリアしていない選手がOA枠に選ばれることもあった。前出のソン・フンミンの抜擢理由に兵役問題もあるはずだが、この「兵役」で守備の人選を考えると、ちょっと複雑にもなる。

というのも、キム・ヨングォン、キム・ギヒは前回ロンドン五輪に出場し、キム・チャンスもオーバーエージとして銅メダルに貢献した。また、アジア大会での金メダルでも兵役免除となり、韓国は2014年仁川アジア大会で見事に金メダルを獲得しているが、そのときのキャプテンがチャン・ヒョンスであり、パク・チュホ、キム・ジンスも主力メンバーとして見事、金メダルという名の兵役免除を得ているのだ。さらに言えば、右膝を手術しているホン・ジョンホも兵役問題を解決しているという。つまり、兵役問題をニンジンにした動機付けを期待するのは難しいという声が一部で囁かれているのだ。

ただ、ホン・ジョンホは前回ロンドン五輪予選時まで守備の要だったが大会直前に右膝を傷めて涙を飲んでいるし、チャン・ヒョンスもケガで大会直前にロンドン五輪メンバーから外れている。パク・チュホとキム・ジンスは国際大会で泣かされてきた。兵役モチベーションに頼らずとも、オリンピックへの想いが強い選手は多いのだ。

もっとも、その想いが強くてもクラブの許可が下りるかどうか。中国でプレーするチャン・ヒョンスは別としても、ホン・ジョンホ、パク・チュホ、キム・ジンスは欧州組だ。日本は欧州組のOA枠招集を難しいと判断しているが、韓国は強行するのだろうか・・・・・・。

(参考記事:リオ五輪OA欧州組無理…拘束力なく霜田技術委員「限りなくゼロ」

ちなみに個人的には、元柏レイソルのハン・グギョンなどがオススメではないかと思ったりする。前回ロンドン五輪時は直前の練習試合で負傷しメンバーから外れたため、雪辱へのモチベーションも高く、兵役も未修。DFが本職ではないが、2014年ブラジル・ワールドカップを経験した今、ハードでタフなボランチとして定着した。現在はカタール・リーグのカタールSCに所属する。中東移籍以降、ちょっぴり存在感が薄くなった彼にとっては絶好の機会だと思うのだが・・・・・・。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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