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日本より厳しい?韓国メディアのイ・ボミ米国メジャー挑戦報道

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ANAインスピレーションに出場したイ・ボミ(写真提供=SPORTS KOREA)

今季アメリカツアーのメジャー初戦となった『ANAインスピレーション』。一時は首位タイに立つも終盤に失速した日本の宮里藍は18位に終わり、昨季日本ツアー賞金女王のイ・ボミは10位に終わった。日本では「有言実行トップ10!イボマーの応援感謝」(『日刊スポーツ)と、その健闘を称える記事が多かったが、「“ボミちゃん”イ・ボミ、後半の集中力低下で・・・」(『聯合ニュース』)、「まずまずだったイ・ボミ、14番ホールのダブルボギーが残念」(『News1』)など、本国・韓国ではちょっと異なっていた。『eスター』などは、「比較的善戦はしたが、結果的に得るものはなかったことになる」と報じている。

(参考記事:「得るものはなかった」とも…。イ・ボミのメジャー挑戦を韓国メディアはどう報じたか

明らかに異なる温度差に日本のファンたちは当惑してしまうかもしれないが、イ・ボミが決して韓国で蔑ろにされているわけではない。「イ・ボミ、逆転ドラマを描くか」(『江原日報』)、「“デイリーベスト”イ・ボミ、ANA優勝圏に跳躍」(『江原道民日報』)など、イ・ボミの故郷の地方紙などは彼女のメジャー挑戦に期待も膨らませた。

ただ、韓国にはパク・インビ、キム・セヨン、キム・ヒョージュなど、イ・ボミ以外にも注目する選手が多いということだ。優勝したリディア・コーも今はニュージーランド国籍とはいえ元々韓国出身でもあるためよく記事になるし、「韓国版トーニャ・ハーディング事件」とまで騒がれたジャン・ハナも話題に事欠くことはない。

(参考記事:米国で快進撃を続けるジャン・ハナに降りかかった疑惑と誤解

そんな中で最も韓国メディアから取り上げられたのは、大会を2位で終えたチョン・インジだった。大会後に発表された世界ランキングでもそれまでの9位から8位にランクアップし、韓国勢としては4番手になったことで、「チョン・インジ、コリアン・トップ4に合流、五輪女子ゴルフ競争さらに熱く」(『スポーツ韓国』)と、さまざまなメディアで取り上げられている。

ちなみに昨季、日米韓のメジャー大会を制して一躍スターダムに躍り出た彼女は数学の天才で、小学生時代に韓国教育庁が運営する英才教育院の選抜試験も3次試験(最終は4次)まで通過した逸材だった。チョン・インジ本人によると、当時のIQは137だったという。「ゴルフは変数ではなく常数と戦うスポーツ」と、語る言葉もどこか数学的。もしかするとすでにその頭の中でリオデジャネイロ五輪出場までのスコアメイク=道のりを逆算しているかもしれない。

(参考記事:「「変数ではなく常数と闘う」チョン・インジの原点と勝負強いメンタルの秘訣

いずれにしても、メジャー初制覇とリオデジャネイロ五輪出場という“二匹のウサギ”を追いかけるイ・ボミの“ドリーム・チャレンジ”のファーストラウンドは終了した。前出した『eスター』などは「JLPGAツアーにおいても賞金ランキングで4位に後退し、今季の賞金王争いの展望も暗い」と彼女の挑戦にかなりネガティブだが、そんな指摘を気にせずに思う存分に挑戦を続けてほしい。

日本の賞金女王がアメリカでプレーする選手たちと競り勝って、オリンピックの舞台に立つ。それはそれで、痛快ではないか。

(参考記事:イ・ボミのオリンピック出場がこんなにも難しいワケ

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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