イニエスタとポドルスキ。一大スペクタクルの秘密は、2人の絶妙な距離感

アンドレス・イニエスタ(写真は柏戦)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

誰もが待ち望んでいたであろう、アンドレス・イニエスタと、ルーカス・ポドルスキの共演。J1第21節ヴィッセル神戸対ジュビロ磐田は、想像以上のスペクタクルに満ちていた。

思わず、笑っちゃうほど巧い。前半15分にポドルスキがドリブルでカットインしてパスを入れると、斜めに走り込んだイニエスタが、回転トラップでDFをかわす。さらにGKも抜き去り、無人のゴールへ流し込んで先制。

プレーを見て、つい笑ってしまうのだ。そんな選手は世界に何人もいるわけではない。試合後のツイッター投稿を見ると、日本代表の香川真司や長友佑都でさえ、我々と同じような気持ちで舌鼓を打ったようだ。

この共演デビューで、神戸の吉田孝行監督が採用した[4-1-2-3]システムは、個の特徴がうまく噛み合っていた。大きな焦点は、ポドルスキのポジションだろう。司令塔のイニエスタは、バルセロナ時代と同じく左インサイドハーフに置くとして、元ドイツ代表のクラッキを、どう組み合わせるか。これまで神戸では真ん中でプレーすることが多かったポドルスキだが、この磐田戦、いくつかのチョイスから吉田監督が選んだのは、右ウイングだった。

2人のクラッキは、近すぎず、やや離れたポジションに。しかし、これが絶妙な距離感だった。右サイドに開いてボールを収めたポドルスキは、左足でカットインしつつ、中央へ飛び込む味方にパスを出す。さらに精度の高い左足を使い、ミドルパスやサイドチェンジで状況を大きく打開することにも長けた。

2人の関係を、イニエスタのアシスト、ポドルスキのゴールと、シンプルに想像した人は多かったかもしれない。だが、実際の共演で目立ったのは、逆の役回りだった。右サイドを起点としたポドルスキが守備をひきつけ、カットインと中長距離のパスで、逆サイド側のイニエスタにスペースを与える。結果としてイニエスタは、チャンスメークだけでなく、ゴール前に顔を出す回数が増えた。前半15分のイニエスタの先制ゴールも、この絶妙な相性が導き出している。

この関係を支えた要因として、神戸のビルドアップも重要だった。この試合のイニエスタは相手のライン間にポジションを取ることが多く、自陣に下がってDFをサポートする回数が少なかった。その分、フリーでボールを持った味方DFには、「自らドリブルで運んで来い」と手招き。

この要求に、神戸の選手たちが応えた。もちろん、まだミスは多く、前にプレーできる場面で不必要にバックパスを返すこともある。しかし、それでも相手のギャップへ果敢に縦パスを打ち込む意識は、明らかな変化が見られた。イニエスタが高い位置を取るためには、欠かせないピースだったと言える。

アシンメトリーなバランス

世界屈指のタレントをどう組み合わせるか。ポドルスキを右サイドに張らせるシステムは、面白い回答だった。

1トップのウェリントンにとっても、右サイドで時間を作ってくれるポドルスキとの相性は良かったはず。ウェリントンは攻守にハードワークし、裏へ抜けたり、ゴール前にパワフルに飛び込んだりと、動いて特徴を出すFW。真ん中にでんっと構えるポストプレーヤーではない。ポドルスキの右サイドのタメは、ウェリントンの負担を軽減し、自身の得意なプレーに集中させてくれる。

一方、反対側の左ウイングには、FC岐阜から獲得したスピード豊かなウインガー、古橋亨梧が入った。後半11分に2点目のゴールを挙げるなど、裏のスペースを攻め落とす持ち味を見せている。さらに後方からは、左サイドバックのティーラトンが果敢にオーバーラップするなど、左サイドは縦の仕掛けが目立った。

右で作って、左からスペースを突く。神戸のシステムは、左右のアシンメトリーなバランスで成り立ち、それが個人の特徴に合っていた。今後も楽しく観戦できそうだ。

もちろん、この試合を以って、新生神戸が盤石と考えるのは早計だろう。磐田に2-1で勝利したのは、GKキム・スンギュのビッグセーブに救われた面もある。

今後はビルドアップを壊される恐れもありそうだ。激しいハイプレッシャーを受け、ボール運びに変調をきたせば、イニエスタが下がらざるを得ず、高い位置でプレーできなくなる。センターバックと中盤は、この磐田戦のパフォーマンスを、どこまで伸ばすことができるか。

また、ポドルスキはあまり下がらないので、右サイドの守備はスペースが空きやすい。それをカバーするべく、右インサイドハーフの郷家友太は、両チーム通じて最高の10.507kmを走った。アンカーの藤田直之も10.397kmを走っている。

この2人は中盤の心臓だった。前述したビルドアップに加えて、広いスペースのカバー。磐田戦はゲームコントロールに成功したため、2人の負担も抑えられたが、対戦相手によっては、オーバーワークになる恐れはある。その場合は古橋を中盤に下がらせるなど、[4-4-2]に変形して守るか。いずれにせよ、郷家と藤田のポジションは、神戸のシステムが機能性を保つ上で、大きな鍵を握る。

正直、これほど早く、このパフォーマンスにたどり着くとは思わなかった。盤石ではないが、それ以上に、伸びも期待できる神戸のサッカー。もちろん、対戦相手も研究を進めてくるだろう。返す返す、今後も楽しく観戦できそうだ。