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Jリーグの不思議。『0-0おじさん』の謎を解け!

清水英斗サッカーライター
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「オイ! 0-0おじさん出たぞ」

「まじ? どのカード? あっ、チャンスだ!!」

その正体は謎にして神出鬼没。2023年のJリーグは、『0-0おじさん』の出現に一喜一憂したシーズンと言ってもいい。(個人的には!)

何の話をしているのか、見当もつかない読者のために説明しておこう。

スポーツの1試合ごとの予想を楽しめるスポーツくじWINNER(ウィナー)。カタールW杯で存在を知り、親しんだ人も多いかもしれないが、昨年の9月からJリーグでもスタートしており、2023年は初めてシーズンを通し、JリーグをWINNERで楽しめる年になった。

筆者も参加している『WINNER徹底予想チャンネル』では、今年1年WINNERの予想をお送りしてきたが、毎節予想をすると、様々な法則が見えてくる。

たとえば今季J1の18クラブで唯一、ホームの全試合で必ず得点を決めたチームがあった。それはどのチームか、わかるだろうか?

……

優勝した神戸?

得点力抜群の横浜FM? 川崎? ……全部ノーだ!

答えはFC東京である。ホーム17試合のすべてで得点した唯一のチームが、FC東京だった。リーグ戦の総得点は42で真ん中辺り。順位も11位であることを踏まえれば、ホームで全試合得点は意外にも感じられるだろう。

ただし、FC東京の場合はホームで得点だけでなく、失点も多かった。アウェーではロースコアに留まることが多く、無得点試合が約半分もあるのに、なぜかホームでは人が変わったかのように、打ち合いを演じる。ホームでは特別なゴール給があったのかと、勘繰りたくなるほどだ。

この傾向を読み取れば、スコア予想は方針が立つ。基本的にサッカーはロースコアが多く、FC東京も得点数が多いチームではないので、ハイスコアを当てれば高いオッズが期待できる。今季のFC東京、ホーム戦は狙い目だった。

こうしたホームとアウェーの変化に留まらず、戦術の相性やコンディションなど、勝敗やスコアに影響を与える要素は多岐にわたるが、もう一つ面白かったのは天気。

たとえば、札幌はドーム型のホームスタジアムを備えているため、雨天の試合経験が少ない。アウェーで雨の試合になると、明らかに勝率が下がる傾向があった。逆に雨を得意とするのは川崎だ。これは福岡戦後の長谷部茂利監督のコメントにもあるが、雨でピッチが濡れているとパススピードが上がるため、技術に自信のある川崎などのチームは、パフォーマンスが上昇すると推測される。(もっとも今季の川崎は全体的に低調だったので、雨の日も敗戦があったが)

前年順位、最近の調子、出場停止や負傷など、当たり前の情報だけで予想すると、高いオッズは得られない。上記のような隠し要素をいかに発見するか。それが個人的にはWINNER予想の楽しさだった。

さて。ここからが本題、『0-0おじさん』の謎である。

そんなこんなで予想を楽しみつつ、毎節オッズを見ていると、シーズン半ばくらいから、不思議な現象が目に付き始めた。試合の2日前、J1の各試合をチェックすると、時折0-0のオッズが「1.0倍」と表示された試合が見られたのである。

………………1.0倍?!

思わず二度見した。スコアレスドローが、当たっても元金しか戻らないレベルの大本命?? W杯2次予選の日本対ミャンマーでは、日本代表のその他ホーム勝利(4点差以上の勝利)が1.0倍になったが、それは頷ける。しかし、各チームが勝ったり負けたり、スコアも予想困難なJリーグで、一時的とはいえスコアレスドローが1.0倍の大本命まで行くのは明らかに異常! 一体何が起きたのか。

一例が、第32節の鳥栖対横浜FCだった。試合の2日前にチェックしたとき、確かに0-0のオッズは1.0倍になっていた。その後、試合直前には2.9倍まで上がったが、それでも大本命には違いない。

単純な試合予想としてスコアレスドローが人気を集めたのだとすれば、その場合は1-0や0-1など、周辺のスコアも低オッズになるはず。しかし、その傾向はない。

0-0だけが突出し、突出しすぎて1.0倍である。J1のWINNER売り上げは各試合が200~300万円ほど。これはもう、誰か特定の人間、すなわち『0-0おじさん』が突然ポーンと、100万円単位で0-0に突っ込んだとしか考えられない。

誰が? なぜ? そんなことを?

謎は深まるばかりだが、不思議はもう一つ。今年『0-0おじさん』が出現したのは、横浜FCや横浜FM、横浜のクラブが顕著だった。この事実は何を示すのか。

徹底予想チャンネルでも話題になった『0-0おじさんの謎』。その中では、いくつか仮説が出た。

仮説その1:熱狂的サポーターの勇み足

スポーツベッティングにも言えるが、基本的にWINNERの購入層はサポーターが主だ。Jリーグもサポーターが多い浦和の試合は売り上げが多く、オッズも浦和が本命になりやすい。横浜の試合に出現する0-0おじさんも、もしかしたら横浜関連のサポーターではないか?!

しかし、この仮説は一蹴された。サポーターは自分のチームの勝利を買うものであって、0-0に100万単位で突っ込むのはサポーターの動きではない。

仮説その2:サッカーアンチの嘲笑

スコアレスドローを予想し、0-0を購入した場合は「入るなー、入るなー」と願いながら観戦することになる。普通のファンの動きではない。筆者のような予想家でないとすれば、サッカーアンチの仕業?

しかし、これも一蹴された。WINNERの売り上げの一部はJクラブやサッカー界に還元される。サッカーアンチがそんなお金の使い方をするのは本末転倒であまりに間抜けだ。

では、一体なぜ?

仮説その3:△■×◯▽●×◇

……ここでは書けない。

仮説その4:大富豪の遊び

これは徹底予想チャンネルMC、井上マーさんによる仮説。横浜に暮らす大富豪たちが一夜、ジャンケンで負けた側が罰ゲームで0-0に突っ込むぞ! と天空で遊ばされておられるのだと。だとすれば、0-0をこんなに買った理由は説明がつく。

他にケースが想像できないので、今のところ、これが最有力な仮説である。『0-0おじさんの謎』、解明は2024年へ持ち越しだ。

正体もさることながら、私たちにとってはチャンス!でもある。0-0おじさんの大口買いが入れば当然、他のオッズが上昇するからだ。

もちろん、0-0おじさんがそのまま0-0で当ててしまうケースもある。ただし、前述の鳥栖対横浜FCに関しては、0-0が非常に薄かった。何となく得点力が乏しい印象がある両チームかもしれないが、データで見ると毎試合、得点と失点が生まれる傾向がある。爆発力はないため、1-1のようなスコアが多いが、0-0で終わるのは稀な両チームだ。少なくとも、0-0で2.9倍はかなり不利なオッズ。

そこを狙って、0-0以外を買う。実際、結果は1-3で横浜FCが勝利したが、オッズは0-0おじさんの押し上げが効き、20.7倍と高配当だった。

筆者自身は買い目を外したが、チャンスだったのは間違いない。来年も0-0おじさんが現れるとしたら、今度こそ踏み台にして、高配当をゲットしてやろう……と今から目論んでいる。

スポーツの結果を予想するという、海外では当たり前の文化。WINNERをやり始めて自分自身、Jリーグの楽しみ方は豊かになった。実に楽しい、2023年シーズンだった。0-0おじさん、来年もよろしく!

サッカーライター

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。新著『サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点』『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』。既刊は「サッカーDF&GK練習メニュー100」「居酒屋サッカー論」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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