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13歳で渡米、世界最高峰を極めた石川直!人気ステージ『ブラスト!』『SHOCK』に立ち続けられるワケ

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
日米の人気ステージで活躍中のドラマー・石川直さん(撮影:すべて島田薫)

 13歳で渡米してマーチングの技術を磨き、世界最高峰と言われる世界大会で優勝を重ねた石川直(なおき)さん。『blastブラスト!』(金管楽器・打楽器・ダンサーから構成されたアメリカ発のパフォーマンスショー)の高倍率オーディションに合格。また、スカウトされて参加した『Endless SHOCK』(堂本光一主演ミュージカル)では新しい風を吹かせました。アメリカと日本それぞれで、人気ステージに長期にわたり出演を続ける石川さんの魅力とは?

―なぜこの世界に入られたのですか。

 渡米して、打楽器を始めたのがきっかけです。僕が13歳の時、父の仕事の都合でシカゴに引っ越したんです。現地の学校に行った方がいいだろうという判断で、5人きょうだい全員がそうしました。ちなみに僕は2番目で、上に姉、下は三つ子(弟2人と妹)です。

 あちらの学校は9月開始で、中学が2年間、高校が4年間あります。僕は中学1年生の終わりまで日本にいたので、アメリカでは中2からでしたが、夏休みもあったので2週間くらい通ったら、いきなり現地の高校に入ることになりました。中1の英語しか習っていないので最初は全く言葉が分からず、喋らないでもなんとかなる音楽・美術・体育などの授業を重点的に取っていました。やっているうちに英語も慣れてくるだろうという考えで(笑)。その音楽の授業で、マーチングバンドと吹奏楽に出合いました。

―それまで音楽の経験は。

 小学校の時に児童館のリコーダークラブで少しと、姉が習っていたピアノを真似して始めたけど、長続きしませんでした。遊んでばかりのいたずらっ子でしたから(笑)。

 高校に入って、先輩たちがやっているドラムラインを見て「あれがやりたい!」と思いました。2年目から何とか打楽器セクションに入れてもらい、マーチングバンドではドラムライン、吹奏楽では打楽器セクション、オーケストラやジャズバンドも始めました。

スネアドラムを演奏する石川直さん
スネアドラムを演奏する石川直さん

―いろいろな楽器がある中、打楽器に惹かれたのは。

 特にマーチングバンドのスネアドラム(写真参照)が面白そうだったので、それをやりたい一心で打楽器セクションに入ったんです。

 魅力は、技と統一美です。大・中・小太鼓がある中で、(小太鼓の)スネアドラムは花形と言われ中心的な存在です。皆でラインダンスみたいに揃って同じリズムを叩く“リズムの面白さ”と、統一美“視覚的なカッコよさ”ですね。マーチングバンドにおいて、ドラムラインはテンポの中心であり、皆がそれに合わせて動く。心臓部みたいなものなので、その存在感もカッコイイと思いました。とにかくドラムラインを見て、それにハマってしまった感じです。

―学校での活動から仕事につながったのは?

 きっかけはマーチング界の最高峰、「DCI(ドラム・コー・インターナショナル)」という世界大会で、マーチングをやっている若者たちにとっては、野球でいうメジャーリーグみたいなものです。プロフェッショナルではなく年齢制限もありますが、僕の目標は大きなチームに入って大会に出場して優勝することでした。

―実際優勝するわけですよね。

 グループ・個人共に優勝することができて、いろいろな所から声がかかるようになりました。ある時、ゲスト出演した大会で僕を知った『ブラスト!』発足時の打楽器のディレクターから、「今こういうもの(『ブラスト!』)を作っているのですが、オーディションを受けてみませんか」と名刺を渡されたんです。僕は、他のマーチングやツアーに出て休学したこともあり、当時は大学があと半期で卒業という時期でしたので「今は学校に集中したい」と伝えたら、「大学卒業後にもし興味があったら連絡を」と言われました。

 卒業直前に、帰国かアメリカに残るかの選択で、自分が培ってきたマーチングのパフォーマンスが今後どう生かせるのか考えていた時に、ちょうど『ブラスト!』第二期募集が始まったんです。タイミングとしてはピッタリでした。

―『ブラスト!』のオーディションはどんな人が受けたのですか。

 九割五分がアメリカの方だったと思います。アメリカ各地、カリフォルニア・ニューヨーク・テキサス、そしてカナダからもいたようで、聞くところによると応募者は数千人規模だったそうです。

―合格者は何人だったのでしょう。

 60~70人でしたね。日本人というか東洋人は僕1人だけでした。当時は日本人がマーチングの世界大会に出場することも少なかったですし、マーチングをやりながらアメリカで生活をしていた人がほとんどいなかったので。僕はアメリカの高校・大学に行っていた分、環境に馴染みがありました。

―何が大変でしたか。

 狭い部屋に二段ベッドが何十個も入れられた集団生活で、リハーサルは1日13時間を毎日、ほぼ休みなく2ヶ月間続けるという、一番ハードな時期だったと思います。

 でも、『ブラスト!』を観てくださった方々からお声がけをいただき、どんどん幅が広がっていきました。『SHOCK』もその1つでした。2004~2005年、『SHOCK』が『Endless SHOCK』に切り替わる頃で、面白いパフォーマーを探していた時期だったみたいです。

―『SHOCK』シリーズご出演は堂本光一さんの次、2番目に長いとお聞きしました。

 「ふぉ~ゆ~」の松崎祐介さんも同じくらいで、正確に回数は数えてないですけど千数百回は出演していると思います。

―『ブラスト!』と『SHOCK』の違いは?

 どちらも刺激的で、普段経験できないことができる場所です。カンパニーの雰囲気は、『ブラスト!』はアメリカ文化なので、年齢や立場はあまり関係なくフランクにコミュニケーションを取るので、皆友達という感じです。20代前半の子が、(40代の)僕に“タメ語”で喋ってきますし、僕も同じようなスタンスで喋るので、気遣いがないコミュニケーションの取りやすさがあります。連日泊まり込みのリハーサルで寝食を共にして過ごすので、新しいメンバーたちとも絆が生まれていきます。

 『SHOCK』は、芸能の流れをよく知る人から新人までいますけど、“先輩を敬う”という部分はしっかりしています。そこは光一さんがきちんとコミュニケーションを取っていますし、先輩に対してどう振る舞うのかというルールを分かっている人たちが中心になって動いているので、新人、アンサンブル、ダンサー、アクションチームなど皆礼儀正しいです。

―『ブラスト!』や『SHOCK』に必要なトレーニングは。

 基本的には、体全体の基礎筋力を上げて心肺機能を高めること。足腰はある程度強くないとダメですが、筋肉をつけすぎると動きが鈍くなったりもするので、セクションごとに必要な筋肉をつけます。打楽器は、腕を振り回したり走り回ったり飛んだりするので体幹が必要なのと、足腰はもちろん、上半身にも筋力がないとケガにつながります。

 『SHOCK』は3時間のパフォーマンスをトップクオリティーで60回連続上演するとか、『ブラスト!』の場合は移動で体が休まらない状況が2ヶ月続いたりとかするので、とにかくやり切る体力を最初に作っておくことが大事です。本番が始まると本格的なトレーニングはできないので、どれだけ準備ができるかが重要です。

―『SHOCK』はミュージカルとあって歌・踊り・芝居がありますが、『ブラスト!』の楽しみ方は?

 『ブラスト!』は音楽ですけど、音楽の予備知識は一切持たずに来てもらって大丈夫です。例えば、サーカスを観に行くのにサーカスを勉強してから行かないし、お祭りに行くのにお祭りの勉強をしてから行かないですよね?

 同じように、『ブラスト!』もお祭りです。楽器を使ったマーチング、吹奏楽の要素をふんだんに取り入れた音楽と視覚的効果を使った舞台なので、音楽のサーカスみたいなものです。音楽を知らなくてもどなたでも楽しめる。アメリカでも、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、子どもたち…、三代にわたってファミリーで楽しめると言われています。

―石川さんが楽しさを感じる瞬間は?

 皆の気持ちや音がピッタリ揃って、仲間の言いたいこと、考えていることが手に取るように分かる、一つになる瞬間があるんです。ものすごいエネルギーを生み出し、完全に没入状態に入ります。その時は、間違いなくお客さんもその楽しさを感じてくれているだろうし、共有ができていると感じます。

【編集後記】

何度もその演奏を聴いている身からすると、圧倒的な技術力に加え、人の心に訴えかける力をお持ちで、心が揺さぶられます。今回初めてお話を伺って、「頭のいい、勘のいい方」という印象を受けました。若い時からアメリカで育ち長く海外生活をしていても、とても日本的な方です。一つのことを極めて、関わった人たちからは半永久的に求められている。すべてにおいて信用があり、応えるべく努力をされているのだと思います。ドラムに比べて声を聴く機会は少ないですが、低音ボイスが素敵でした。

■石川直(いしかわ・なおき)

1975年6月9日生まれ、東京都出身。13歳でアメリカ・シカゴに渡り、15歳よりパーカッションを始める。マーチングスネアドラムソロ世界大会、5回出場中3回優勝、2回準優勝(日本人初・最多)。ドラム・コー・インターナショナル(DCI)で、ワールドチャンピオン2度獲得、ハイパーカッション賞2度獲得。2000年、『blast ブラスト!』に初の日本人として入団。その後、アメリカ・日本での公演に出演を続ける。2005~2024年、堂本光一主演舞台『Endless SHOCK』出演。キャスト・ドラム指導・ショーの一部の構成・演出にも関わる。

『Endless SHOCK』は4/11¬~5/31、東京・帝国劇場にて上演。『blastブラスト!』は7/30~8/12、東京・東急シアターオーブにて上演、ほか全国ツアー(全21会場48公演)を開催予定。https://blast-tour.jp/

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

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