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前代未聞、自作ゲームがゲーセンで遊べるかも 画期的なゲームコンテストの仕組みとは

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
「第1回クリエイターズアーケードコンテスト」表彰式の会場(※筆者撮影。以下同)

ゲームセンター経営の大手であるGENDA GiGO Entertainment(※以下、GiGO)は、新作アーケードゲームを公募するイベント「第1回クリエイターズアーケードコンテスト『あなたの作品がゲームセンターのゲームになる!!』」の最優秀賞の表彰式を、5月13日に東京・汐留の同社オフィスで開催した。

本イベントはGiGOと、しくみデザインが開発したスマホやタブレットで誰でも無料で使えるゲーム開発アプリ「Springin’(スプリンギン)」とのコラボにより実現したもの。応募は年齢などの制約はなく誰でも参加可能で、最優秀賞に選ばれたタイトルはアーケードゲームとして、つまり商用化されてGiGO直営のゲームセンターで遊べるようになるという前代未聞の企画だ。

最優秀賞の各タイトルは、GiGOが開発した専用の筐体(きょうたい)「クリエイターズアーケード」に収録される。料金は1プレイ100円で3分間遊び放題となり、途中で遊ぶゲームの種類を自由に変えることもできる。

「クリエイターズアーケード」の筐体。コンパネ(入力デバイス)はレバー1本とボタン3個で、ゲーム選択画面に戻るためのホームボタンも1個付いている
「クリエイターズアーケード」の筐体。コンパネ(入力デバイス)はレバー1本とボタン3個で、ゲーム選択画面に戻るためのホームボタンも1個付いている

今回の受賞作品は全4タイトル。GiGOのスタッフによると、いずれも5月17日から、つまり本日から以下の7店舗で順次稼働開始となり、誰でも遊ぶことができる。

(受賞作品が遊べる店舗)

  • GiGO スマーク伊勢崎 
  • GiGO 有明ガーデン
  • GiGO 南町田グランベリーパーク キッズディスカバリー
  • GiGO サントムーンオアシス
  • GiGO プラムツリー赤池 
  • GiGO LECT広島
  • GiGO 福岡天神

以下、およそ460点の応募の中から選ばれた、最優秀賞の4タイトルと開発者の皆さんを紹介する。

最優秀賞タイトル・受賞者紹介

・「ウチュージンたたき」:エルガーさん

懐かしのエレメカゲーム「もぐら退治」の要領で、ハンマーを操作してウチュージンの頭を叩いて遊ぶゲーム。左側がエルガーさん
懐かしのエレメカゲーム「もぐら退治」の要領で、ハンマーを操作してウチュージンの頭を叩いて遊ぶゲーム。左側がエルガーさん

・「ジャンケン☆バトルシップ」:enneさん

ジャンケンとシューティングの要素を融合したゲーム。左から2番目がenneさん
ジャンケンとシューティングの要素を融合したゲーム。左から2番目がenneさん

・「かくれんぼスイーツ」きざみ葱さん

パドルを操作してボールを打ち、ブロックを壊して隠されたお菓子を探し出すアクションゲーム
パドルを操作してボールを打ち、ブロックを壊して隠されたお菓子を探し出すアクションゲーム

・「天までとどけ アステチックうさぎは★がほしいの! GiGO Ver.」:ファミっこさん

主人公のウサギを操作して、どこまで高い所に登れるかを競うジャンプアクションゲーム(※諸事情のためファミっこさんは不参加)
主人公のウサギを操作して、どこまで高い所に登れるかを競うジャンプアクションゲーム(※諸事情のためファミっこさんは不参加)

教育ビジネスなど他分野への進出も視野に

「クリエイターズアーケード」の筐体は、キッズ向けのメダルゲームと同様に、小さな子供でも遊びやすいようコンパクトサイズに設計されているのが特徴だ。本イベントの審査基準のひとつが「ゲームセンターで小学生が遊びたくなる」だったことからも、最初から子供をターゲットにして筐体が開発されたことがわかる。

今回の受賞者のうち、仕事でプログラミングの経験があるのはenneさんだけで、ほかの3人は本業を別に持っている。アマチュアが作ったゲームがゲームセンターで稼働するという、既存のインディーゲームのコンテストとはまた違った形で、新たな夢の舞台を作り出したように思う。

また表彰式に参加した3人は、いずれも小学生以下の子供、つまり最高のテストプレイヤーが自宅にいたことも、受賞の大きな要因になったようだ。表彰式が終了後、親についてきた子供たちが自身も開発を手伝ったゲーム、あるいは別の受賞作品を嬉々として遊んでいる姿は実に微笑ましかった。

「クリエイターズアーケード」の筐体は、小さな子供でも踏み台を使わずに遊べる
「クリエイターズアーケード」の筐体は、小さな子供でも踏み台を使わずに遊べる

GiGO、しくみデザイン両社のスタッフによると、現時点では「クリエイターズアーケード」の筐体はネットワークに対応していないが、将来的には「Springin’」で作ったゲームのデータを筐体に転送して、誰でもゲームセンターで遊べるシステムの実装も検討したいとのこと。

現時点では7店舗でしか遊ぶことができないが、今後はGiGO以外の店舗も含めて「クリエイターズアーケード」の設置台数を増やす予定があるとのこと。筐体の普及が進めば、自分たちでアーケードゲームを作って遊ぶという、今までにない新しい遊びが定着するかもしれない。

また「クリエイターズアーケード」は、学校や町のプログラミング教室など教育方面のほか、地方の公共施設にも設置して、例えばご当地名物が登場するゲームを用意して町興しに利用するなど、ゲーム以外のビジネスも視野に入れているという。

まだ第1回が終了したばかりだが、本イベントは早くも第2回の開催が決定している(※実施時期は未定)。「クリエイターズアーケード」の今後の動向には大いに注目したい。

なお、今回の最優秀賞を受賞した各タイトルのプレイ動画は下記リンク先、またはYouTubeの「Springin'」公式チャンネルより見ることができる。

(参考リンク)

・「第1回クリエイターズアーケードコンテスト『あなたの作品がゲームセンターのゲームになる!!』」(※「Springin’」公式サイト)

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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