「ポケモン」関連作品は1504タイトル ゲームやアニメ、マンガを網羅したデータベースの狙い

「メディア芸術祭データベース ベータ版」のトップページ(筆者撮影)

文化庁は、11月29日に「メディア芸術データベース ベータ版」を公開した。

本サイトは、今までに日本国内で発売・制作された歴代のマンガ、アニメ、ゲーム、メディアアートの4分野の作品データベースで、誰でも無料で利用することができる。

ゲーム分野の制作を担当した、立命館大学先端総合学術研究科の福田一史氏によると、「本サイトは、2015年に公開された『メディア芸術データベース 開発版』を基に、図書館情報学やメタデータの専門家が加わったうえで、データベースを通じたメディア芸術所蔵機関のコミュニティや、所蔵情報統合の強化を主たる目的として開発されました」とのこと。

また、本サイトの制作を手掛けた組織体制も福田氏に伺ったところ、事業ディレクションは大日本印刷が務め、有識者会議による方針の策定や承認のもと、メタデータタスクチームがデータモデルの開発とシステム開発の助言を受けたうえで、約1年8カ月の開発期間を経てベータ版の公開が実現したそうだ。

分野を横断した検索も可能。タイトル数の多いシリーズ作品の調査も容易に

試しに、ゲームのカテゴリーから「ポケットモンスター」と入力してみると、63件の情報がヒットした。1回の検索で、これまでに発売された「ポケモン」シリーズおよび関連ソフトは、全63タイトルであることが瞬時にわかるのでとても便利だ。(※ただし、データが反映されているのは2017年以前に発売されたものに限る)

アカデミーの場でゲームに関する調査・研究を行う研究者はもちろん、ゲーム関連メーカー従事者や一般のファンにも大いに役立つことだろう。特に、すでに販売を終了した古い作品については、メーカーの公式サイトにも情報が掲載されていないことが多く、Wikipediaや通販サイトなど、掲載内容の信ぴょう性に疑問があるサイトでしか情報が得られないものも少なからずあるので、本サイトの存在は実にありがたい。

画像
ゲームのページで「ポケットモンスター」と入力すると63件がヒットし、歴代のタイトルがズラリと表示される(筆者撮影)
ゲームのページで「ポケットモンスター」と入力すると63件がヒットし、歴代のタイトルがズラリと表示される(筆者撮影)
画像
「ポケットモンスター 赤」の項目をクリックしたところ。発売日やメディアなど、タイトルごとに詳細なデータが表示される(筆者撮影)
「ポケットモンスター 赤」の項目をクリックしたところ。発売日やメディアなど、タイトルごとに詳細なデータが表示される(筆者撮影)

さらに本サイトは、マンガ、アニメ、ゲーム、メディアアートの全4分野の関連作品を、まとめて検索できる特長も持っている。

以下の写真のように、すべての分野を検索できるトップページで、同じく「ポケットモンスター」と入力すると、実に1,504タイトルもの関連作品がヒットする。最初はゲームとして誕生したものが、その後どんなアニメやマンガ作品となって展開されたのか、コンテンツごとに歴史を追うことができるのも素晴らしい。逆に、アニメやマンガが原作で、その後ゲーム化された作品があるかどうかを調べることももちろん可能で、マンガは所蔵館の情報も載っている。

「『開発版』との違いとしては、まず異分野のデータを接続するための統合的なデータモデルを策定し、それを実装した点が主要な特徴です。本モデルでは、出版者や開発者などの個人や会社などの『責任主体』、通常版や特典版、リメイクなど版違いをつなぐ『作品』のように、メディア芸術の識別における重要な実体を『まとめ』として定義しました。

 今後、そのような各『まとめ』のデータを辞書のように活用できるようになるだろうと思います。また、インターネットそのものをデータベースとしても機能するようにしようという、Linked Data/セマンティックウェブ(※)のための機能が搭載されている点も重要な特徴です。これらにはAPI機能を使ってアクセスできます」(福田氏)

※筆者注:「Linked Data」とは、他のデータとリンクが可能な形で、ウェブ上に公開された機械可読型のデータを実現させる仕組みを指す。「セマンティックウェブ」は、メタデータを活用することで、ウェブ上の情報の意味をコンピューターが理解できるようにして、自動で情報処理ができるようにするための技術のこと。

トップページで「ポケットモンスター」を検索すると、全4分野合計で1,504タイトルがヒット(筆者撮影)
トップページで「ポケットモンスター」を検索すると、全4分野合計で1,504タイトルがヒット(筆者撮影)
各タイトルは、分野別に異なる文字色、およびアイコンで表示されるので区別も容易だ(筆者撮影)
各タイトルは、分野別に異なる文字色、およびアイコンで表示されるので区別も容易だ(筆者撮影)

みんなで意見を出し合い、より優れた「完成版」公開の実現を

筆者は以前から、日本におけるゲーム分野のデータベース化は、海外の教育・研究機関に比べて大幅に遅れているとゲーム関連の研究者から聞いており、長らくゲーム産業・文化を育んできた日本が、はたしてそれでいいのかと常々疑問に思っていた。だが、まだ「ベータ版」の段階とはいえ、その遅れを取り戻せるであろう「メディア芸術データベース」が公開されたことは本当に喜ばしい。

では、気になる「完成版」の公開はいつになるのだろうか? 福田氏によると、「はっきりしたことは決まっていませんが、2020年度中には当初想定された機能は実装できるように、今から準備を進めています」とのことだった。

さらに一般のユーザーに対して、本サイトをどのように利用してほしいのかも尋ねてみたところ、以下のようなコメントをいただいた。

「まずは、データを見て所蔵状況を調べたり、まとめ機能で関連するデータを追い掛けてみたり、間違いを探したり、こういう機能があればいいのにといった要求を考えたり、してみてもらえればと思います。関係者もTwitterはちょこちょこと見ていますので、気軽にご意見を書いてください。

 また、現在テスト公開ではありますがAPIの機能は重要です。この機能を使って、新しいアプリケーションの開発やデータサイエンス的な分析など、さまざまな使い道をぜひ『開発』してほしいと思っています。

 現状、日本における図書館や博物館など、公共施設でのゲームの所蔵と書誌データ作りは、欧米や東南アジアなど各国に比べて圧倒的に遅れています。これは、国内のゲーム研究や人材育成にとって致命的な社会基盤の欠如となるのではないかということが気がかりです。DB開発の活動を通じて基盤となる枠組みはできつつありますので、今後多くの関係者や研究者が参画・関与できるオープンな場作りを進めていきたいと思っていますので、ご助力ください」(福田氏)

また、文化庁参事官(芸術文化担当)付参事官補佐である伊野哲也氏にもお話を伺ったところ、同じく本サイトに関する意見を広く募集しているとのことだった。

「関係者の皆様による長年のご協力を得て、『メディア芸術データベース ベータ版』をリリースし、日本のメディア芸術の情報基盤の整備がいっそう進みましたことをたいへん嬉しく思っております。国内外の皆さまにとって、さらに魅力的なものとなるよう、皆様からのご意見、ご提言を賜りながら、メディア芸術データベースの充実を図っていきたいと考えております。ぜひご利用いただき、ご意見フォームから登録情報や本データベースへのご意見、ご提言をお寄せください」(伊野氏)

「メディア芸術データベース」は、特定の誰かの所有物ではない公共物、つまり「みんなのもの」だ。先人たちが作り上げた、数々の作品データが歴史の彼方に消えてしまわないよう、我々もデータベースの仕組みや存在意義を考えたうえで、「完成版」ではより正確かつ多くの情報が網羅され、なおかつ使いやすいUI環境などが実現できるようにしたいものだ。

・「メディア芸術データベース ベータ版」

https://mediaarts-db.bunka.go.jp/