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保育士の配置基準についての基本情報

柴田悠京都大学大学院人間・環境学研究科 教授
van Huizen and Plantenga(2018)をもとに筆者作成。

2024年4月1日から、4~5歳児向けの保育士配置改善のための加算が始まる。経過措置を設けながらの配置基準改正も、2024年度中に行われる予定だ4~5歳児の配置基準は1948年の基準制定から75年間変わっていなかったため、今回の基準改正は画期的といえる。

(なお0歳児の基準は1998年制定、1~2歳児の基準は1967年制定、3歳児の基準は1969年制定で、3歳児については2015年から配置改善のための公定価格加算が行われている。←参考記事

現在の日本では、「保育士1人が受け持つことができる最大子ども数」についての国が定める基準(配置基準)は、

  • 0歳児:保育士1人につき最大3人
  • 1~2歳児:保育士1人につき最大6人(2025年度以降の早期に「5人」へ改善予定)
  • 3歳児:保育士1人につき最大20人(2015年度から「15人」への改善のための公定価格加算を開始。2024年度から経過措置を設けながら配置基準も改正予定)
  • 4~5歳児:保育士1人につき最大30人(2024年度から「25人」への改善のための公定価格加算を開始し、経過措置を設けながら配置基準も改正予定)

となっている(下図)。

そして、この基準を上回る、より手厚い配置をしようとしても、その上回る分の補助金は国からもらえないため、この基準を上回る配置は困難な状況にある。

内閣官房「こども未来戦略方針の具体化に向けた検討について」(2023年)より引用。
内閣官房「こども未来戦略方針の具体化に向けた検討について」(2023年)より引用。

他方で、先進諸国(OECD19か国)の「3~5歳児の保育・幼児教育の職員配置基準」の平均値は、「職員1人につき最大18人」だ(OECD, 2011, Starting Strong III: A Quality Toolbox for Early Childhood Education and Care, pp.45-47)。

さらに、欧米諸国での2005~2017年の30件の研究結果をメタ分析した研究(van Huizen and Plantenga 2018)によれば、3~5歳児の発達が通園によってポジティブに促進されるために必要な職員児童配置は、おおむね「職員1人につき最大15人以下」だ(下図:Huizen, Thomas van and Janneke Plantenga, 2018, “Do children benefit from universal early childhood education and care? A meta-analysis of evidence from natural experiments,” Economics of Education Review 66: 206-222)。

van Huizen and Plantenga(2018)をもとに筆者作成。
van Huizen and Plantenga(2018)をもとに筆者作成。

したがって、日本での3~5歳の保育士配置基準は、今後も改善の努力を重ね、「保育士1人につき最大15人程度」にまで改善していく必要があるのではないかと思われる。

そして、そのための前提としては、基準改正によって保育士がますます不足していくので、潜在保育士(有資格者の約6割で約100万人)が保育職に就きやすい環境を整えていくために(下記上2図)、保育士の処遇の改善(下記中図下図)を今後もさらに進めていく必要があるだろう。

厚生労働省『令和4年版厚生労働白書』(2022年)図表1-2-64・図表1-2-65より引用。
厚生労働省『令和4年版厚生労働白書』(2022年)図表1-2-64・図表1-2-65より引用。

厚生労働省『令和4年版厚生労働白書』(2022年)図表1-2-66より引用。
厚生労働省『令和4年版厚生労働白書』(2022年)図表1-2-66より引用。

こども家庭庁「令和6年度こども家庭庁予算案のポイント」(2023年)より引用。
こども家庭庁「令和6年度こども家庭庁予算案のポイント」(2023年)より引用。
























京都大学大学院人間・環境学研究科 教授

1978年、東京都生まれ。京都大学総合人間学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。専門は社会学、幸福研究、社会保障論、社会変動論。同志社大学准教授、立命館大学准教授、京都大学准教授を経て、2023年度より現職。著書に『子育て支援と経済成長』(朝日新書、2017年)、『子育て支援が日本を救う――政策効果の統計分析』(勁草書房、2016年、社会政策学会学会賞受賞)、分担執筆書に『Labor Markets, Gender and Social Stratification in East Asia』(Brill、2015年)など。

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