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幸せに生きる「4つのポイント」と「2つの注意点」

柴田悠京都大学大学院人間・環境学研究科 教授
(写真:アフロ)

幸せに生きるにはどうしたらいいのでしょうか。

関西福祉科学大学の島井哲志教授の著書『科学的に幸福度を高める50の習慣』では、従来の膨大な実証研究から明らかになった様々な「幸福感を高める方法」が、豊富な文献リストと共に紹介されています。

それらの方法を私なりにまとめると、「身体」「自然」「他者」「自己」が主なポイントです。

ポイント①:「身体」

第1は「身体」。

具体的には、「味わって食べる」「質の良い睡眠をとる」「楽しむために体を動かす」ことで、幸福感が高まる傾向があります。

とりわけ、「味わって食べる」ことは今日からでも実践できるでしょう。

ある調査によれば、味わって食べる習慣は、学歴や所得とは有意な関連がないけれども、幸福感とは有意な正の相関がありました。

つまり、学歴や所得に関わらず、この習慣が顕著な人は幸福感が高いのです。

なお、この習慣の程度は、「多くの料理の味をはっきりと簡単に想像することができる」「友人から食通だと言われる」などに当てはまる程度で測定されました。

幸いなことに、この習慣の程度と肥満度は相関しませんでした。

むしろ、この習慣が顕著な人は少食を好む傾向が強かったのです。

ポイント②:「自然」

第2は「自然」。

「自然と触れ合う」ことで、幸福感が高まる傾向があります。

ある調査によれば、自然の豊かな公園で20分以上過ごすと、活動量とは無関係に、幸福感が高まりました。

また別の実験によれば、自然公園で20分以上歩く場合に、より長時間歩くこと、自然との繋がりを感じる感性が強いこと、公園が混雑していないこと、公園の動物多様性が高いことが、幸福感をより高めました。

自然との繋がりや自然の多様性を感じながら、自然豊かな場所で20分以上、できるだけ長く過ごすことがおすすめです。

ポイント③:「他者」

第3は「他者」。

「経験を他者と味わう」「おしゃべりなど能動的な活動をする」「外向的に行動する」「感謝の気持ちを表現する」「親切にした回数を数える」ことで、幸福感が高まる傾向があります。

とりわけ、「経験を他者と味わう」は実践しやすいでしょう。

ある調査によれば、経験を他者と味わう傾向が強い人は、たとえポジティブな出来事が少なくても、ポジティブな出来事が多い人と同程度の高い幸福感を感じていました。

しかも、「ポジティブな出来事が多いが(それを他者と)味わわない人」よりも幸福感が高かったのです。

他方で、経験を他者と味わわない人は、ポジティブな出来事の頻度によって幸福感が影響を受け、一喜一憂してしまっていました。

なお、経験を他者と味わう傾向は、「他の人に『気持ちいいね』と話しかける」「経験を共有できる人々を探す」などに当てはまる程度で測定されました。

経験を一緒に味わってくれる人は、あなたを幸せにしてくれているのです。

ポイント④:「自己」

第4は「自己」。

「自分の意思で小さな目標をもって熱心に行動する」「自分の強みを活かす」「所有よりも経験にお金を使う」「楽しい記憶を思い出す」ことで、幸福感が高まる傾向があります。

注意点:「他者の幸福を視野に入れよ」「長期的視点を持て」

以上4点がポイントですが、幸福感を安定させるには、「他者の幸福を視野に入れること」(視野の社会的広がり)と、「長期的視点を持つこと」(視野の時間的広がり)も重要です。

それらが欠けると、視野が狭くなって一喜一憂し、ストレスや失望感、抑うつや孤独感が高まってしまう傾向があるからです。

京都大学大学院人間・環境学研究科 教授

1978年、東京都生まれ。京都大学総合人間学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。専門は社会学、幸福研究、社会保障論、社会変動論。同志社大学准教授、立命館大学准教授、京都大学准教授を経て、2023年度より現職。著書に『子育て支援と経済成長』(朝日新書、2017年)、『子育て支援が日本を救う――政策効果の統計分析』(勁草書房、2016年、社会政策学会学会賞受賞)、分担執筆書に『Labor Markets, Gender and Social Stratification in East Asia』(Brill、2015年)など。

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