本日(4/1)から新年度がスタートした。学校では、あと数日で新入生らを迎えるし、人事異動もあったから、どこも慌ただしくしていることだろう。

先日、知人から、気がかりなことを聞いた。新採(1年目)の先生が「教師を続けられるかどうかは、運次第」と言うのだ。

どういうことか。学校によって、教職員の関係がよくて、とても居心地のよい職場もあれば、互いにあまり関心がない職場で一人ひとりが孤立している(または数人としか連帯しない)職場もある。どちらかと言うと、ギスギスしている職場もある。保護者から厳しい意見やクレームが来たとき、サポートがしっかりしている学校もあれば、担任任せとなっている学校もある。

あるいは、校長がたいへん親切で、頼りになる人もいる一方で、一部だが、パワハラぎみな校長もいるし、新人や若手に「なんでこんなこともできないんだ」と詰め寄り、若手を潰してしまうような人もなかにはいる。

「学校ガチャ」とも言える状況なのかもしれない。

運次第のガチャのように、赴任先の学校によって、教師のストレスや負荷は大きく異なる。
運次第のガチャのように、赴任先の学校によって、教師のストレスや負荷は大きく異なる。写真:イメージマート

■若手を大事にすることの意味

もちろん、転職は自由だし、離職する人がいても、それは悪いことばかりではない。だが、望んで教師になりながらも、職場環境が悪いために辞めてしまうとすれば、それは本人にとっても、学校にとっても、いいこととは言えまい。

それに、周知のとおり、いま、日本中、あちこちの職種、職場で人手不足だが、学校も例外ではない。産休・育休や病休(病気休職)の人の代わりを務める先生、講師がなかなか見つからないという事態が、全国各地で起きている。若手等の離職は学校組織としても痛手であるし、残された人がカバーに走ってさらに忙しくなるから、悪循環に陥る。

年度はじめに、心機一転、頑張ろうとしている人も多いなか、ネガティブな話で冷や水を浴びせるような物言いはどうかという意見もあると思うが、大きく人が入れ替わる時期だからこそ、よくよく注意してほしいのだ。若手をつぶさない、若手を大事にしている職場だろうか、ということを。

それに、ふつうの企業や行政機関とちがって、学校では、数日前まで大学生だった1年目の先生が学級担任や行事の主担当、部活動主顧問などの重責を任され、児童生徒や保護者に対して一人前のように振る舞わなくてはならないときも多い。新人や若手が無理をしやすい、させやすい構造的な、制度上の問題もある。

もちろん、職場や仕事上のストレスや悩みがあるのは若手だけではない。教頭職は激務だし、学年主任や教務主任などを担う中堅・ベテランには、負担が重なりやすく、たいへんだ。

とはいえ、次の図表のとおり、ここ5年ほどで20代の教員(公立学校)の精神疾患による長期療養者は1.66倍、30代では1.43倍と急増している。若手の職員数が増えているという事情を割り引いても、高い増加率だ。

出所)文部科学省「令和2年度公立学校教職員の人事行政状況調査」をもとに作成
出所)文部科学省「令和2年度公立学校教職員の人事行政状況調査」をもとに作成

それに、新採や若手が気持ちよく働ける学校、働き続けやすい職場であるなら、それは中堅・ベテラン層にとってもいい職場である可能性が高い。これは、育児や介護を抱える人にとって働きやすい職場が、他の人にとっても良好な環境であることが多いことにも似ている。

■質問責任

では、新米教師や若手を大事にしていく学校になっていくには、どうしていけばよいだろうか。

特効薬やウルトラCのある世界ではなく、地味かもしれないことが大事だと思うが、ここでは、3点ほど、ささやかな提案をしたい。

第一に、「忙しくても、質問、相談は大歓迎」というメッセージを校長をはじめ、教職員同士で発信し続けることだ。

これも周知のとおり、多くの学校現場はとても忙しい。とりわけ、年度はじめの4月はさまざまな事務作業も重なりやすいし、授業準備もたいへんだから、1年の中で最も忙しい月かもしれない。バタバタしている人には、助けを求めにくいし、若手としては、ジャマしてはいけないなという配慮が働きやすい。

だが、それで新人や若手が一人で悩んでも、あまり事態は好転しないどころか、どんどん悪いほうに行くことも多い。ついにギブアップして報告し、事態が深刻になったときに管理職や学年主任が支援、介入しようとしても、糸がこじれてしまっているというケースも多い。

メンタルヘルスの文脈とは異なるが、IT企業のサイボウズは、「質問責任」という考え方を大事にしているそうだ。同社のブログにはこう書いてある。

「説明責任」は、これまでもよく言われるように、相手の納得感が得られるように「わかりやすく説明すること」です。「質問責任」は、思ったり、感じたりしたことがあれば「わからないままにせずに、質問すること」です。

「わかりやすいように説明するけれど、わからないことがあったら質問してね。それには、一生懸命こたえます」というのが、サイボウズ全社員の共通認識です。説明責任と質問責任を意識すると、自然と「双方のコミュニケーション」が生まれ、「理不尽だなぁ」「ちゃんと説明してほしい」といった、コミュニケーションギャップが起きにくくなります。

こうしたメッセージや組織文化は、学校にも参考になるのではないか。

もともと、子どもたちに教える仕事であるため、学校の先生たちは、人に教えるのが好きな人は多いし、質問されてもイヤな顔をする人はほとんどいない(わたしの経験上ではという話だが)。それに、すごく忙しくて集中したいときなどは、「ちょっとあとで聞くから」と言えばいいだけの話だ。

学校の組織の特性や文化として、問題があるとすれば、優先順位の置き方だ。生徒指導上の問題や児童生徒の情報は、教職員間で比較的よく相談、連絡、共有している。だが、自分たちのこと、教職員についてのケアの優先順位が低くなっている職場もある。そこは考えものだ。

■校内研修の活性化

第二に、相談しやすいフォーマルな場を意図的にもっとつくることだ。

具体的には、校内研修の頻度やメニューを見直すべき学校も少なくないと、わたしは考えている。もちろん、たくさんやればいいというものではないが、小学校、中学校、高校となるにしたがって、校内研修の回数は少なくなる傾向がある(ベネッセ教育総合研究所「第6回学習指導基本調査」に関連するデータがある)。しかも、教科ごとの壁が高くなり、教職員間のコミュニケーションが薄くなるケースもある。

また、校内研修をよくやっている小学校などでも、内容は教科指導に関するものが大半だ。そこはもう少し削って(もちろん授業研究を軽視するという意味ではないが)、代わりに新採や若手の悩みを聞きましょう会をやってもいいと思う。

ずっとコロナ禍で、飲みニケーションもなくなっている。しかも、働き方改革が叫ばれる中で、会議の研修のカットが進んでいる学校もある。非効率な会議等はカットしてほしいが、必要性の高い場づくりには時間を投資するべきだ。

■家と学校の往復だけでなく

第三に、新採、若手の先生へのメッセージとして、ぜひ職場外のつながり、コミュニティを大事にしてほしい。

というのも、たとえ困った先輩がいたり、支援がない、しんどい職場であったとしても、職場を離れた場所で、多少愚痴を言えたり、あるいは、つらい職場ばかりではないと気づけたりすると、公立学校の場合は異動も多いので、多少は気が楽になるかもしれない。

だが、これも感染症対策のため、初任者研修で集まれる機会がカットされている自治体もあり、同期で集まる場も少なくなっている。であるなら、教育委員会等に用意してもらうのを待つのではなく、なんらかのつながりの場(同期でなくても、大学等の仲間でもいいし、趣味の集まりなどでもいい、またはちょっと真面目な学習会などでもいい)に飛び込んで行くか、自分で主催してみる。

以上、3点ほど提案したが、いいなと思ったことがあれば、たいして予算がかかるものはないし、来週からでも試してみてほしい。

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