学校に必要なのは、働き方改革「以前」の問題に向き合うこと、勤務時間管理から

(ペイレスイメージズ/アフロ)

死と隣り合わせの職場

学校(小中高)の長時間労働の問題は極めて深刻だ。

過労死ラインを超える人の割合は、自宅作業も含めてざっと推計すると、小学校教諭の57.8%、中学校教諭の74.1%前後にも上る(※1、仮に自宅残業を含まないで計算しても中学校教員の約6割が該当)。こんな業界はほかにはなく、学校は「ブラック」だと言われても、否定できない。

(※1)詳しくは次の記事も参照いただきたい。

妹尾昌俊・教育界でも「働き方改革」が問われた2017年―なぜ、日本の先生は忙しいのか?

昨日のニュースでも、愛知県立岡崎商業高校の教諭(当時42歳)の過労死が名古屋高裁で認められた、との報道があった(中日新聞2018年1月26日)。

この先生は、2009年10月午後11時45分頃、コンピューター実習室で仰向けに倒れていたところを巡回中の警備員に発見された。救急搬送されたのだが、数日後にくも膜下出血で亡くなった。全国大会で3年連続団体優勝していた情報処理部の顧問を務めており、休日も8:30~16:00頃まで勤務することもあったという。校務分掌(校内の事務などの役割分担)では、教員や生徒用のパソコンの修理を行うなど、様々な作業を行っていた。学習指導では、情報処理試験対策等も担っていた。

この例は特異なことではない。とても悲しいことだが、小学校でも、中学校でも、高校でも、先生が過労死する例はあとを絶たない(※2)。多くの事案で共通するのは、児童生徒のために一生懸命だった先生が倒れている、という事実だ。

ところで、学校教育でもっとも大切にしたいこと、子どもたちに伝えたいことは、なんだろう?

それは、命の大切さではないだろうか?

しかし、いまの学校現場は「死と隣り合わせ」なのだ。

(※2)教師の過労死の事案の一部や学校の多忙の背景は、拙著『「先生が忙しすぎる」をあきらめない―半径3mからの本気の学校改善』に整理している。

過労死する先生が出ても、時間管理すらなおざり

しかし、これも残念なことだが、学校における長時間労働是正の動きはまだまだである。人(教職員数)が少ない、予算が少ないということも大きく影響しているが、今日は、基本中のキの勤務時間管理について解説する。

次のグラフをご覧いただきたい。

グラフ:小中学校における退勤管理の方法

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国の調査によると、教員の退勤時刻の管理について「タイムカードなどで退勤の時刻を記録している」と回答した学校は小学校で 10.3%、中学校で 13.3%しかない。約6割の多数派は、報告や管理職による点呼、目視等である。点呼、目視などと言っても、校長が早く帰った日や出張のときはどうしているのだろうか?この6割の学校の多くは、おそらく、退勤管理はかなりテキトー、なおざりであると見ておいたほうがよい。

なお、「校務支援システムなどICTを活用して退勤の時刻を記録している」と回答した学校は小学校で 16.6%、中学校で 13.3%。このなかにも自己申告で時間入力することに頼っていたり、エクセルファイルに各自が記入したりするもの(エクセルだって一応ICT)なども含まれているだろうから、ICカードやPCのログなど、客観的なデータを参照しているわけではない学校もかなり含まれていると推察する。

この実態について、中教審(中央教育審議会)の働き方改革を審議する会議の1回目でも話題となった。文科省の担当者はこう述べた。

タイムカード等を導入しているところはまだまだ少ないわけでございますが,この10年で,2割強のところがタイムカードや校務支援システムなどで管理をするようになりつつあります。

(※趣旨を変えずに語尾等は編集した)

出典:学校における働き方改革特別部会(第1回)議事録

文科省の方は、10年前と比べて前進していると比較的ポジティブにおっしゃったのだが、トヨタ自動車出身の相原委員は、こう切り返した。

出退勤の確認を目視でしているとありましたが,これは民間の職場から考えた場合,普通の状況ではないという理解から共通にした方が良いと思います。

出典:前掲と同じ

学校の出退勤管理の常識は、世間の「非常識」

相原さんの発言は、目視に頼っているなんてところは民間ではほとんどない、学校の常識は世間の常識ではない、という問題提起だ。

実際にデータで確認してみよう。都内の事業所の実態調査が公表されていた。先の学校向け調査と同じ2016年秋の状況である。都内の事業所ということで、全国を代表するわけではないが、参考にはなるだろう。

グラフ:小学校の退勤管理の状況と、都内の事業所における労働時間管理の方法

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こうして比較するとよくわかるのだが、都内の事業所(おそらく多くが企業)では、タイムカード、ICカード等の客観的な記録を活用しているのが約6割である。上司の確認というところは1割である。ちょうど、小中学校の状況と対照的(正反対)である。

こういう状況を見ると、教育委員会や学校の長時間労働への向き合いは、まだまだお寒い状況である、と言わざるを得ない。調査のあった2016年以降、特にこの2017年度には報道も増えたし、中教審や文科省の検討も増えたので、もう少し状況はよくなっているところもあるとは思う。しかし、わたしは全国各地で教職員研修等でまわっているが、勤務時間の管理については、タイムカードやICカードの予算すらない、とれない、あるいは教員の理解がまだまだ得られないといった理由で、まだ進んでいない地域も多いと聞いている。

学校における長時間労働はぜひとも改善したい。過労死になる先生は、もうひとりも起きてほしくない。先に紹介した岡崎の先生の遺族のお父様は80歳を超えても、息子さんが過労死と公式に認められるよう裁判でたたかっておられ、「息子で最後に」とおっしゃっている(中日新聞2018年1月26日)。

しかし、今の学校の状況は、働き方改革「以前」の状態である

「教職員の数をもっと増やしてください」、とわたしも常々強く思っている。しかし、それだけを言っても、財務省や自治体の財務課としては、また、おそらく世間の目からしても、「出退勤管理もちゃんとできていない、マネジメント不在な現場に、人を増やしても大丈夫なの?本当に多忙化解消につながるの?」と言われてしまうであろう。

もちろん、勤務時間の管理ができたからと言って、それでただちに長時間労働の改善になるわけではない。だって、仕事は減らさないで、記録だけしてもダメでしょう?

しかし、勤務時間の把握、実態把握というのは、今の実情を見つめなおし、働き方を考え、行動するためのスタートラインである。まずは、教育委員会や学校(私立の場合は学校法人等)のみなさんには、このスタートラインに立ってほしいと思うのだ。

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